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3.リーゼVSそれぞれ

手を繋ぎたい

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 馬車に揺られている間、エドヴィン王子は一世一代の選択を迫られていた。
 自分の膝に視線を向けるふりをして、眺めていたのは目の前に座る愛しいリーゼ。
 ちらりと顔を上げると、リーゼの深海色の目と合ってしまい、エドヴィン王子は顔を逸らしてしまう。
 ちなみに、今のリーゼは普段とは違うメガネを装着済み。
 メガネなしシチュエーションが続くと、エドヴィン王子がマジで使い物にならないと判断したニーナによって、そこそこ見えない、でもちゃんとメガネ姿のリーゼとしては存在できる代わりのメガネを、リーゼはつけさせられた。
 とはいえ、リーゼの視界が完全にクリアになったら完全に水の泡。
 そこそこ見えない度数で調整をしていたので、とりもあえず事なきを現時点では得ている。
 それこそ1m以内に近づかないと、エドヴィン王子の顔とは認識できない状態になっている。
 そしてメガネリーゼ再び、おかげもあり、エドヴィン王子はロボットから人間へと進化はできたものの、それでもヘタレは健在。

 手を伸ばせば触れられる距離でもあるというのに……。

 触りたい。ほんの少しでもいいから。

 エドヴィン王子は、湧き上がる触れたい欲と必死で格闘していたのだ。
 
「り、リーゼ嬢……」

 エドヴィン王子は、息を飲んでから恐る恐る話しかけた。

「何でしょう」

 すぐ近くで、リーゼの声がすることに、エドヴィン王子の胸はときめいた。
 あと一言だ。
 手を、握りたいと、そう言えと本能がエドヴィン王子に指令を出す。

「て……てて」
「て?」
「その………………て、てを…………」
「て、ですか?」
「そう、て………………を………………」

 繋ぎたい。
 たったそれだけ言えばいいのにも関わらず。
 エドヴィン王子の口が選んだ次の言葉は

「手を…………洗わなきゃ……お店着いたら」

 だった。
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