ボッチにラブコメは荷が重い

かる

文字の大きさ
上 下
1 / 1

ボッチは強制入部をさせられる

しおりを挟む
俺、香取かとりりょうのクラス担任・市原いちはら優香ゆかは左手に持った紙を右手の甲でパンパンと叩きながらため息を吐く。

「これ……なんですか?」
「見ての通り今日の総合学習の課題です。」

―――
『今日の総合学習を振り返って』
                              香取 稜
恋愛とは何であろうか?
難しくは考えなくていい、別にこの問題が産業の発展や環境汚染問題に結びつくわけではない。パッと思いついたことでいい。
普段の日常生活から男女間の親しい様子がある、これが発展することによって恋愛というものになるとする。では、片思いの場合はどうなのであろうか。それを恋愛とカウントしない場合、筆者もそのうちの一人であるが人間において恋愛を経験しなかった者は多いのかもしれない。故に男女間の価値観の違いは仕方ないのである。
―――

何が駄目であったのだろうか?他人に質問を投げかけるところから始めるレポートは説得力が増すって本に書いてあったんだけどな……。
あまりに高尚すぎて先生には理解が出来なかったのだろうか?
嘘です、そんなわけがないですよね、ハイ。

「却下。」
「ああああああぁぁぁぁぁ!」

何をしだすのかと思えば優香先生は俺の書いたレポートをシュレッダーにかけたのである。
俺が一生懸命に描いた汗と涙の結晶があああぁぁぁぁ………。
別に汗も涙も入っていない、何なら虚偽きょぎ欺瞞ぎまんの結晶である。

「私の本日の課題は『男女間での価値観の違いをなくす方法』です。誰もあなたの彼女いない歴=年齢のレポートを提出しろとは言っていません。」
「べ、べ、別に俺がそうとは限らないじゃないですか!この筆者の場合はそうかもしれませんけど俺の場合は違うかもしれませんよぉ?」

急いで訂正しようとするも無駄である。それこそ、筆者が俺でないならば問題であり、代筆を任せたことになるのでさらに重い反省文を書かされることになるだろう。
先生は生暖かい視線で急いで否定する俺を見守る。

「別にいいんですよ?教師は生徒の悩みを聞くのが職です。恋愛の相談でも何でも私に相談してください?」

やめろ先生、その言葉は俺に効く。

「大体、あなた友達いないじゃないですか。」

な、何イイイィィィ!?
あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は先生ヤツの前で友達いる前提で話を進めてたと思ったらいつの間にかいないことにされていた!
全く持って心外である、実際いたことはない。

「でもですね、先生だっていい年して彼氏の一人もいない」
パァン!
「え?」

大きな破裂音の様なものと共に顔の横を何かが通り過ぎるのが分かった。
先生が構えていたのはエアガンであった。それもオートマチックのデザートイーグルである。

「なんか言いました?」
「いいえ、何も。」

目が怖すぎる。
この場合は何も言わなかったことにするので見逃してもらおう。俺はプリントを受取り先生に一言謝ったのち職員室から出ようとした。

「待ちなさい。」

何だろうか、先ほどの失言、死を持って償ってもらおう!なんて言われたらどうしようか。

「あなたの腐った性根を叩き直すいい機会です。ちょっと待っててください、アポ取ります。」
「アポ?アポクリン汗腺の事ですか?別に先生のワキガ事情など微塵も興味がないですけd痛ぇ!」

話してる最中になんでエアガンで急所狙うの?しかも上唇と鼻の間という滅茶苦茶マイナーな急所、こんなの人体図鑑でしか載ってねえよ。

「あなたのデリカシーの無さは何処から?」
「す”み”ま”せ”ん”……。」

質問の仕方がベンザブロックのCMかよ。あなたの風邪は何処から?
僕は鼻から真っ赤な鼻水が出そうです。

「よし、アポ取れました。今から駅近くの喫茶店に行きますよ。」
「え、ちょっ、行くってまだ言ってないんですけど!」

なんて腕の力だ、この先生に振り回され続けたら俺の傷はどんどん増える一方だ。
絶対に家帰ったら小説投稿サイトに『転生したらゴリラだった件』ってタイトルで先生の話書いてやる。





この学校は比較的駅に近いが学校に行くまでの道のりに坂があり、さらに急勾配な丘の上にあるので登校は大変だ。その分、帰りは3分ほどで着く。毎朝、生徒たちはこの坂を上るために自転車ではなく徒歩を選ぶ人も多い。

「着きました。」
「ぜぇ………ぜぇ………着きましたって………下り坂で全力疾走とかアキレス腱切れますよ……!」

なんでこの人は物理の教師なんだろうか、体育教師のほうが似合うだろう。
学校を出て1分、ただひたすらに下り坂を全力疾走する先生。俺は腕を握られているため逃げることもできず、ただ先生に遅れないよう走り続けた。

「っていうか……教師が職務放棄で喫茶店まで来てよかったんですか?」
「何を言っているんですか?これは立派な生徒指導です。マスター、コーヒーを2杯。」

生徒指導に喫茶店のコーヒーは必要なのか。
先生は顔には見せないが、態度をウキウキとさせながら奥の方へどんどん進んでいき、一つの席の前で止まった。
1秒にも満たない間だっただろう、しかし時計の刻む音すら正確に聞こえてきそうなほど、俺にとってはかなりの時間に感じられた。その異様さの原因は目の前にいた一人の少女であった。
俺は芸術というものに感銘を受けたことはない。しかし、カップをソーサーに置きながら一息つく様子はまるで芸術作品のようであり、この時初めて芸術とは何かを理解できた、そう思わせるほどであった。
――――見惚れる、とはまさにこのことを言うのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...