上 下
5 / 9
第1章

ハイレベル・ダンジョン

しおりを挟む
コツコツ‥


洞窟のなかに2人の足音がこだます。2人はたいまつの明りで照らされながら、
無言で洞窟の奥深くに進んでいく。ときどき洞窟の上の方から水のしずくが
滴る音を聞きながらセイヤと一緒に洞窟系のダンジョン、
クリス・ハイレベルダンジョンの中を早足で歩いていく。なぜ今こんな
ところにいるのかというと‥もちろん、Lvが一気に30倍アップしたからである。



 1時間前‥

「これから‥どこ行く?」

セイヤが聞いてくる。

「セイヤの残りのHPはどのくらいか?俺は7割ほど残っているけど」



「6割は残っている」



「じゃあ、いまからいっそのことミドルダンジョンじゃなくて‥ハイダンジョン行くか?」
ハイレベルダンジョン‥いままでそんなダンジョンがあることは知っていたが、
詳しくは聞いたことはない。



「ちょっと調べてみる‥」



セイヤはウィンドウを開くと<検索>のアイコンをクリックする。そして
どこかのオフィスの事務員のような慣れた手つきで素早く
“クリス・ハイレベル・ダンジョン”と打つと検索ボタンを押す。
あたりは暗いので明るく光るセイヤのウィンドウが良く見える。



「え~と‥推奨攻撃Lv23以上らしい。あと‥洞窟のダンジョンで、
 ラスボス≪ケバケーブ≫とかいう奴を倒すと<洞窟の街>への
 道が開けるらしい。詳しいことは書いてない」


「‥このまま行こうぜ!」


「‥もちろん!」

断る理由はなかった。むしろ、Lv30にもなってなぜ行かないのか不思議なくらいだ。
推奨レベルよりも7も高いなら、ハイレベルというよりもローレベルダンジョンだ。



「地図によると、ここから北にさらに3kmのところに洞窟の入口があるって」



早足で歩くこと1時間、モンスターを見つけてはモグから得た大量の「石」
を筋力Lv30でぶつけてはアイテムを拾い‥を数10回繰り返して
洞窟の入口にたどり着いた。入口の右に小さな看板がある。

「迷子に注意」



「そんだけ広いってことか‥まあ、そんなに気にすることもないだろう」

洞窟の中を歩くこと30分。まだモンスターはなにも出現していない。
ということは、恐らく後から結構な強さのモンスターが出現するのかも知れない。
いや、ただレベルが高いプレイヤーにはモンスターは出現しないような
設定になっていることもあり得るが、さすがにそれはないだろう。
たまたまセイヤのストレージの中に<完成間近の粗末なたいまつ>が
5本ほどあったのでそれ持って進んでいく。粗末なたいまつと言っても、
1本につき30分はもつ。だから6時間は洞窟に潜っていられることになる。



「あ、あれドアか?」

確かに前方に濃い紫の重そうなドアがある。そしてその左右には煌々と輝く
たいまつが壁にかけてある。奥にはいきなりラスボスが出てきそうな
雰囲気。まあ、いきなりラスボスというのも悪くない。



「どうする?開けちゃう?」

セイヤが興奮を隠しきれずに言う。


「いや、ここは一回回復ポーションで回復する方がいいと思う。
 確かストレージに予備が10個くらいあったような‥」
ストレージを開き、「回復」のアイコンをタップすると、1番上の方に
<2級回復ポーション>が2つ。‥こんなの入れた覚えがないのだが
多分1時間前の戦闘?でゲットしたものだろう。



「はい」



「ああ、ありがとう。ってこれ‥」



「ああ、2級のやつ。普通に買うと10000ドルはするけど多分さっきの
 湖のところでゲットしたんだと思う」



「ふっ」



「そんなに嬉しいか?」



「いや、それを分けてくれる優しさに感動したよ。いつもなら
 自分だけ回復するくせに。まあ、今回は感謝してありがたく
 もらっておくよ」


「なっ!」


「“なっ”て‥事実だろ?」


「ンにゃろ~~~」


口げんかすること10分経過。


「さっさと‥入ろうぜ!」


「ああ」

目の前には改めてみると紫がかった石に、竜が火を吹いているところが
細かいところまで彫られている重苦しいドア。そのちょうど中心部分を
セイヤと一緒に押していく。1秒ほど2人で全力で押すと、



バコ!



ちょうど手をあてていた部分が円になって奥に押し込まれる。
普通にドアだと思って押したのだが、どうやら普通のドアではなさそうだ。

ゴゴゴゴ‥

ドアが上下に半分に割れ、ゆっくりと開いていく。
ドアが全部開き終わる。中を見たいのだが、薄暗くて詳しくは確認できない。
しかし部屋のあちらこちらにはきらきらと薄く輝く紫水晶やアクアマリン
があり、この部屋を豪華にしている。

「えらい‥この部屋凄いな‥」

セイヤが奇妙そうに言う。


「ああ。俺もいままでこんなのがあることは知らなかった。
 多分ネットにも載ってなかったかも」



「そ‥それは凄いな!俺たちが一番先に来たってことか?」



「恐らく。この世界は広すぎてまだ探検されてないところがまだ半分は
 あるっていう噂もあるし」



「て言うか‥なんでこんな豪華な飾り付けなのか?」


「知らん。まあ、一つ言うとしたら‥宝石の中にいるに値するモンスターが

 いるってことかな?」


多分俺の推測はあっているだろう。いや、ただここが洞窟だから、という
理由だけなのかもしれないが。

・・・・今なんか前方10m先ぐらいで赤い点が点滅した気がするのだが。

 しかも2つ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

ドグラマ ―超科学犯罪組織 ヤゴスの三怪人―

小松菜
ファンタジー
*プロローグ追加しました。 狼型改造人間 唯桜。 水牛型改造人間 牛嶋。 蛇型改造人間 美紅。 『悪の秘密組織 ヤゴス』の三大幹部が荒廃した未来で甦った。その目的とは? 悪党が跳梁跋扈する荒廃した未来のデストピア日本で、三大怪人大暴れ。 モンスターとも闘いは繰り広げられる。 勝つのはどっちだ! 長くなって来たので続編へと移っております。形としての一応の完結です。 一回辺りの量は千文字強程度と大変読みやすくなっております。

処理中です...