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6章 隣国と和平会談する件
舐めたらヤバイ禁断症状
しおりを挟む「――え、中庭草刈り駄目絶対?」
腕でバッテンを作り深くうなずく魔王城専属庭師のロッテンさん。
「何でも均一に、かつ綺麗に刈り取れば良いというものでは無いのです」
今の中庭は既に庭師が手を入れている――つまり完成された庭なのだという。俺が手を入れてしまうと均衡が崩れるから「駄目、絶対!」なんだそうな。
「でも! 俺も草刈りしたいんだ!!」
ダメと言われたら余計したくなるのが人ってものだろう? 最近、やってないからホントにツライんだよ! この城に来る前からの日課だったんだ。固いこと言わずにさぁ……。
「駄目なものは駄目なのです!」
「じゃあ、せめて他の場所! 他の場所を!!」
むぅと考え込むロッテンさん。
「しかし城の中は基本的に我ら専属庭師の手が入っていますからなぁ……」
それはつまり、俺、草刈り、できない?
「…………そうなりますな。邪神様には申し訳ないですが」
………………。
…………。
……ぷつっ。
「ふっざけんなぁぁぁぁぁ! 良いじゃん草刈りぐらい! 俺、魔国で一番偉いんじゃねぇの!?」
権力振りかざすのは柄じゃ無いが、「草刈りしたい」なんて些細な願いだろう!?
だが、俺の心からの叫びにもロッテンさんは屈しなかった。
「に、庭に関する権限は庭師が最高位でございます!」
クッ、強情な!
「こうなったら森羅さん出してやるんだからな! あたり一体焼け野原にしてや――」
「おやめなさいな」
パシンとシータさんに頭を叩かれて正気に戻った。
「シータ? 会議してたはずでは?」
「一つ用事を思い出したので、退席して来たのですわ」
あと、貴方の暴走を止めるようにと皆から頼まれまして。とか言い出すシータさん。暴走? はて、ナンノコトヤラ。
「今、まさに暴走しかけていたではありませんか。小さな方の森羅ちゃんならまだしも、大きな方を出されると本当に首都が焼け野原になってしまいますわ」
焼け野原になってしまったら草刈り用地も全滅しますけど宜しいの? と言われて、初めて気づいた。そうだよ、草全部燃えるから刈れないじゃん!
「すまんかった。俺が考え無しでした……」
「というわけで、ロッテンさん……でしたかしら。リュージに何とか草刈りできる場所を紹介していただけませんか?」
「――は、はいっ! シータ様の頼みであれば!!」
えー、俺の頼みは聞けないのにシータの頼みには応じるって、どゆことなん?
「いや、そのー、邪神様は中庭に固執されていたもので……ついこちらも意固地になってしまい」
そりゃー最初は中庭に固執してたが、最後は譲歩したじゃん。それに――
「別に城外でも良かった件。むしろ城外なら庭師の権限とか関係ないじゃん!」
「それも考えなくはなかったのですが、邪神様は多大なる人気を誇る時のお方。城外へ出れば騒ぎになるかと思い……」
庭師としてのプライドもあったようだが、俺のことを思っての反対だったようです。ロッテンさん良い人やー。でも最初にそう言って欲しかったぞ。城下の人にはプロポーズ大作戦の時に顔が割れちまったからなぁ。確かに、普通に城から出たら騒ぎになってしまう。
「必ず邪神様の満足できる場所をご用意いたしますので、今しばらくお待ちを!」
そんなこんなで何とか城外の草刈り用地を準備してもらう事で落ち着いた俺だったのだが――結局、ダンジョン攻略には行けなかった。シータ曰く、なんでも俺にしかできない用件があるらしい。
そうして連れてこられたのは……。
「……なんかあからさまに手入れが適当な区画に連れて来られた訳だが、あれか? 草刈りの依頼?」
適当というか、荒れる一歩手前みたいな感じで実に刈りがいがある場所だ。こんな絶妙なポイントがあるのならもっと早く教えて欲しかった! 場内に草刈りスポットが無いなんて嘘じゃん。
――だが。
「違いますわ」
シータに速攻で否定された。先導してくれてる魔族の兵士さんも若干呆れ顔をしていた。
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