46 / 106
4章 魔術大国に行ってみる件
俺の刀が斬れすぎる件について
しおりを挟む晴れ渡る空にカラッとした空気。絶好のピクニック日和である。そんな日に俺たちはダンジョンに潜りに来ている。
「やっぱ地道にダンジョンとかでレベルを上げるのが早道なんだなー」
「草刈りより優先すべきと、常々言ってるような気がしますけれど」
アーアーキコエナイー。
「今回のダンジョンは、魔術を使う魔物が多いんだっけか?」
「物理攻撃が効かない者も居るそうでしてよ」
……物理攻撃無効? 何それ、初耳なんですけど?
「いわゆるゴーストタイプという種別ですわね。彼らには魔力を介した攻撃しか効きませんの」
「あのー、おれ、ゴッテゴテの物理攻撃手段しか持ち合わせちゃいないんだが……?」
漫画とかでよくある武器に魔力を纏わせるとか器用な真似なんてできねーぞ?
……やっぱ予定変更してピクニックでもしないか、シータさんよ。こんな天気のいい日地下に潜るとか健康に悪いと思うんだ。と、提案したら即座に却下された。
「魔力を介せば攻撃は通るのだから、私がリュージのカタナに術を掛ければ問題ありませんでしょう?」
「ああ、いつもコボルトさん達に掛けてる攻撃強化のバフか」
「まあ、もしかすると必要無いかもしれませんが……」
「?」
そりゃどういう意味だ……?
*
魔術師の幽霊が呪文を唱え終わるより前に、サッと走り寄って刀を横に一振り。それだけで幽霊は上下に分かれて消えていった。ついでに返す刀で、隣にいた別の幽霊を下から上へと薙ぎ払う。そしたらソイツも二つに分かれて消えていった。
「サクサクジェノサイドォォ!!」
――俺、絶好調!
何でか知らないが、魔断ち君ってば斬れ味が良すぎる。シータがバフ掛けてないのに幽霊普通に斬れてるし。……もしかして完成してから草刈りしかしてなかったから、血に飢えてらっしゃる?
それにしてもやばい。良くある例えに『バターのようにさっくり斬れる』というのがあるが、まさにそれを体感している。手応えを全く感じないのに斬れてるという不思議体験。初ダンジョン体験時の早乙女達もこんな気分だったのだろうか?
なお、何時もの罪悪感はこれっぽっちも襲ってこない。まー、いま斬ってる奴らもう既に死んでるからね。むしろ、成仏せいやー! という気分である。
「ま、まさに獅子奮迅の活躍ですわね……」
今までとの落差に、シータさんが少し引いてらっしゃる。なんでや! 大器晩成型な俺の才能がちょーっと開花しただけやん!
「このダンジョン。こないだの中級より俺と相性良いかもしれない」
「お陰で私達の出番がありませんが」
「そこはまぁ、今回は俺に譲って貰うって事で……」
次にいつ今回みたいな機会がくるかわからんからな。稼げるときに稼がせて貰うッ!
*
「――で、正直なところどう思うよ? 魔断ち君の斬れ味について」
明らかに斬れすぎじゃね? そりゃー、湯田が「そこらの魔剣よりも斬れる」と太鼓判押してたが、いくらなんでも自画自賛が過ぎると思ってたんだわ。
「気付いてないようですから申し上げますけど、そのカタナ……おそらく魔剣や聖剣の類いですわよ。後世に伝われば『伝説の』と名が付くレベルの」
…………why?
…………友人に作ってもらったおニューの刀が魔剣・聖剣の類いだった件。え、こんなお手軽にそんな『伝説の剣』的なのが出来たらマズくね?
「そう言われましても……そのカタナの刃からは、強いプレッシャーみたいなものを感じますし……」
鞘に収まってた時は感じなかったらしい。それじゃまるで刀に意志があるみたいなんだが……いや、持ち主を蝕む系じゃないっぽいし問題ねーな。さっきヒャッハーしてたのは俺自身の意思だし。
「けどシータにプレッシャーかけるとは許せん。仲間にプレッシャーかける武器が何処にある」
コツンと魔断ち君にげんこつ食らわす。俺に好意を抱いてくれてる娘に威嚇とかすんなよな!
「あら?」
「どした?」
「いえ、そのカタナからのプレッシャーが消えた、と申しますか……」
ついでにコボルト君ちゃんさん達もウンウンうなづいてる。彼らも威嚇されてたんだな。
……つーか、まじで意志があるんすか相棒よ。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
婚約破棄された悪役令嬢は最強の冒険者を目指す
平山和人
ファンタジー
伯爵家の令嬢クロエは卒業パーティーの席で婚約者から婚約破棄を言い渡されるが、あっさり受け入れる。
クロエは転生者であり、断罪ルートを迎える運命にあった。それを回避すべく婚約破棄されるように仕向けたのであった。
家を追い出されたクロエは長年の夢であった冒険者になるために冒険者の街アーガスを目指す。
冒険者として活動していく中、クロエは様々なイケメンから愛されるのであった。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる