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3章 武器が欲しいので頑張る件
閑話・上級鍛治師さんの場合
しおりを挟む「じゃ、みんなサンキューな!」
「お代は出世払いで!」そう言って神山が帰って行き、その姿が見えなくなった所で俺は息を吐いた。
「あいつ、自覚あんのかねぇ……」
「流っち、どゆこと?」
湯田が頭にはてなマークをつけて聞いてくる。
実はあの刀だが、本来中級素材では作れない程のスペックを秘めている。しかも銘の力だけではない。作った俺だからわかるんだが……。
「まじで? なんかそういうスキルとか材料でも使ってたっけ?」
「いや? 正真正銘、中級素材しか使ってねーんだよなぁ、コレが」
特にそれらしいスキルも使ってない。っつーか、そんなの持ってたら常に使うわっつー感じなんだが。あ、でもあの国の奴らのためには使いたくねーな。
「いつもとの違いは、あいつが見てたことくらいだ」
しかもあの刀、神山が名前つけた途端に上級から最上級になりやがったのだ。まるであいつのために作られたかのようにピッタリと。いや、実際みんなはあいつのために刀を作ったんだが……そういうのを超えた何かが、って俺は何を言ってんだ。訳が分からなくなってきた。
「示し合わせたような……つったら、あの宝玉もそうだよな。あれ多分あのダンジョンで最上級の報酬だぜ?」
「ガチャ運いいよなー、神山っち」
「私たちが最初に潜った時は、普通の素材だったのにね」
湯田と佐伯が羨ましそうに神山の去った方角を見て肩をすくめた。
「そもそも装備品――それもアクセサリー系が出る確率、あいつ知ってんのかね?」
聞けば初めて潜ったダンジョン報酬も装備品だったとか。シータちゃんが使ってたやつな。二人とも気付いてないようだったが、アレも結構なレア物だ。普通はまず素材くらいしか出ないのがダンジョン報酬である。それでも高値で売れる良品なんだから、装備なんて出ようものなら一夜で成り上がりも夢じゃない。その中でも出にくいアクセサリーなら尚更。あぶく銭ってやつだな。……ん、違ったか?
「まあ、神山くんなら不思議と嫉妬する気になれないんだよねー」
「実際、専用装備っぽかったし? 無駄にするよりは神山っちの役に立つと良いなって感じ」
佐伯と湯田ってなんかマイナスイオン出してないか? 二人の話を聞いていると、その人の良さにほっこりしてくる。
「ホント人が良いよなー俺ら。この世界の人間だったら、今ごろ血みどろの争奪戦になってる所だ」
「流っち、怖っ!?」
「血みどろって……」
「実際あるらしいぞ。攻略報酬欲しさに仲間割れの挙句にグロ展開ってのが」
異世界怖い。と身震いをはじめた二人に「グロ展開は冗談だ」と告げる。実際どうなのかは知らない。ただまあ仲間割れは本当にあるとは聞いている。正直、俺たちが作り上げる装備品でも同じ事が起こり得るんだが、それは言わぬが花ってヤツだろう。この二人には、少しでも長い期間マイナスイオンを出しておいて貰いたい。
「そういえば、神山くん。出世払いって言ってたけど、本当にお金払う気なのかな?」
別にいらないのにねー。という佐伯には同感だ。あんだけ喜んでもらえれば職人冥利につきるってもんだしなぁ。変なところで義理堅いんだよな、あいつ。曰く「ダチだからってなぁなぁにしちゃいけない事が世の中には有るんだ!」という事らしいが。
「――ま、気長に待つとするさ」
「みんなが揃った時にパーティーでもして、パパーっと使っちゃうのもアリだよなー」
「いいねー、それ!」
自分たちの稼いだ金で何をしようが文句は言わせないとばかりに、湯田と佐伯が盛り上がる。盛り上がるのはいいが、他の奴らにもちゃんと相談してからにしろよー、お前ら。
ともかくまあ、あいつが元気そうで何よりだった。ここに来れなかった奴らにいい土産話が出来た。特にシータちゃんの事とかな!
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