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3章 武器が欲しいので頑張る件

刀たかすぎ

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 ――というわけで草刈りの片手間に何日か探してみたところ、見事見つかりました刀職人!

 だがしかし。

「金貨十枚ぃぃ!?」

 通常の武器の相場は銀貨十枚からである。ピンキリなので性能を求めると天井知らずになってしまうが、五十枚も積めばそこそこ良い装備と言えるだろう。
 なのに刀のオーダーメイド金貨十枚。これ、一般人一人が八年くらい暮らせる額である。半端すぎる? そこは突っ込むな。俺も半端だなーと思ったから。

「と言われてもなぁ。この辺にゃカタナ打てる奴は俺しかおらんよ」
「……おっちゃん、俺の足元みてねぇ?」
「まさか! お得意さんになるかもしれないヤツにふっかける商人がいると思うか?」

 この世界、武器の手入れとかは基本的に武器屋に預けてしてもらうのだ。特殊武器である刀の手入れは刀職人しかできないので、おっちゃんから見ると俺は末永くお付き合いできるオイシイお客である。

「デスヨネー」

 そんなおっちゃんでも高値をふっかけざるを得ないのは、刀の材料に貴重な金属が必要だからだ。ただ、それがなくても刀の相場は金貨一枚は行くとのこと。高級品か!! 技術持ってる職人が少なくて高騰しやすいんだと。サムライのメッカであるヒノモトに行けばもっと安く手に入るそうだが、めちゃくちゃ遠い。

「ダンジョンで時々手に入るらしいから、持ってきたらまけてやっても良いぞー?」

 武器屋のおっちゃんのそんな声を背に俺は涙をのんでその場を立ち去るしか無かった。





「ダンジョン攻略したいと思う」

 そう言うとシータが「あら?」という顔になった。

「やっとマトモに冒険者する気になりましたの?」
「初心者依頼だって立派な仕事だい!」
「草刈りが冒険者の正当な仕事とは到底思えませんが」

 美味しいんだから仕方ないじゃ無い! 下手したらそこらの冒険者より稼いでるぞ。難点は街の人から『庭師さん』と呼ばれるようになった事だが。

「ともかく! ダンジョンのドロップに俺は賭ける!」
「この辺りのマスターがカタナを扱っているという確証はありませんわよ?」

 それでも? という彼女の問いに俺はうなずく。最悪、材料の金属が手に入れば御の字だ。

「俺は、借金してでも、刀が使いたい!」

 いやまぁ、この世界で借金て割と多いんだけどな? ツケ払いとか、出世払いとか。それでも金貨十枚はキツイ。何年払いだよってレベルだからなー。最低八年かねー……いや、そんなにこの世界に長居するつもりは無いな。

「やっぱ借金はナシで」
「……意見はちゃんと統一してくださいな」
「材料の金属狙いでダンジョンに行きたいです」
「素直でよろしい。ですが、目的の金属がドロップするダンジョンはご存知なんですの?」

 ………………あ。
 俺の表情で全てを察したシータ。大きなため息をついた。

「こんな事もあろうと調べておいて良かったですわ」

 そうして彼女が語ってくれたところ、この街の周囲には大小様々な十数個の契約ダンジョンがあり、他にも自然発生するダンジョンがあるとの事。その中でも金属や武器のドロップするダンジョンがいくつか。

 契約ダンジョンってのはアレだ。シータみたいにダンマスが国と取引して倒されないようにしているダンジョン。ダンマスは命の心配をせずに済み、代わりに国はダンジョンからの資源を得るって訳だな。 ただ契約ダンジョンだからって、挑んだ冒険者が安全というわけではない。出る時はキッチリ犠牲者とかも出る。冒険者の安全を確約しているわけではないのだ。だから自分のレベルにあったダンジョンに挑まないといけない。

「俺たちの場合は、挑むのは初級かねぇ」
「自然発生型に挑んで一攫千金という手もありますわよ?」
「ダンジョンに慣れてるならそれでも良いんだろうが……今の俺たちじゃあ普通に死亡フラグじゃねーか」
「良い線いくと思いましたのに」
「安全マージン大事!!」

 人生はゲームじゃねーんだよ! 勘だけで生きて行けるほどファンタジー世界甘くねーぞ! って、俺がファンタジー世界の人間に説教してるのっておかしくね?


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