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2章 冒険者ギルドに入ってみる件

イメチェン会議

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 ソロンさんにヒュプヌーン草の採取のコツ――先達の知恵すげぇ――を教わりながら収穫。一緒に街まで帰ることになった。帰り道は俺が切り拓いて来たのがあるので迷う心配はない。

「あんまり乱獲すると良くねえから、この辺にしとくべ」
「なんだかんだ言って、ソロンさんに会えて助かったよ。イロイロ教えて貰えてるしな」

 地味にヒュプヌーン草以外のアドバイスもいただき、初心者の俺らにはありがたい事この上ない。

「オイラも人里まで案内してもらえるだから、ウィンウィンってやつだぁよ」
「それはともかく、ソロンさんはマジでイメチェンすべき!」
「まーだ引っ張るだかぁ?」
「このままですと、野生のオークとして討伐されるのもそう遠くはないかと……」
「……わかっただあよ。街に着いたら取り掛かってみるだべ」

 とか言いつつ「やっぱ面倒いからやーめた」ってなりそうなんだよな、この人の場合。お節介ではあるが、最後まで見届けるべきか? この人は失うには惜しすぎる人材だと思うんだよ。教え方上手いし。正直、旅人やめて教師になったほうが良い気がする。そしたら魔物に間違われて退治されちまう危険もグッと減るしな。……こっそりギルドのおばちゃんに推薦でもしとくか。





「――おかえり。初の採取依頼の結果はどうだい?」

 いつものように食器を拭きながら聞いてくるおばちゃん。

「おう、おばちゃん。大漁だったぞ!」
「バッチリでしたわ」

 そういってヒュプヌーン草が入った袋をカウンターに乗せた。熟練の旅人ソロンさんのお墨付きの一品たち。これなら文句のつけようも無いだろ! ……いや、おばちゃんにイチャモンつけられた事とかねーけどさ。

「ほうほう、初めてにしてはなかなかだねえ。後ろの御仁のお陰かい?」

 さすがおばちゃん。ソロンさんを見ても動じねえ。まだイメチェンしてねーのに!

「どうもぉ。ソロンと申しますだあ」
「こりゃまたご丁寧にどうも。それにしても随分と個性的な格好だねえ……」
「よく言われますだぁよ」

 あ、おばちゃん動じてはないけど顔が引きつってやがる。そしてソロンさん、その返事はねぇだろ。額面通りの意味じゃないぞ、絶対ぇ。

「じゃあ、オイラはこの辺で……」
「おう、ソロンさんありがとなー――なんてなる訳ねーだろ!! イメチェンするまでは離れねーぞ!」
「うぇぇぇぇ!?」
「このまま単独行動されると、間違いなく街がパニックになりますわ!」
「そこまで言うだか!?」

 シータと二人がかりでソロンさんを確保! 逃がさねぇよ?

「二人とも心強いったらないね」

 もうこれは使命みたいなもんだ。やってやんよ!





「――とはいえ、どういう方向性が良いと思うよ?」

 お誕生日席にソロンさんを迎え、シータとの作戦会議が始まった。

「カツラと服は必須ですわ。特に上着!」

 だよなー。つかなんで上半身裸なんだよソロンさん。最大のオークポイントである。あとこの世界でも、街中を上半身裸で練り歩くのは十分に犯罪の域だ。

「俺的にはオーバーオールに麦わら帽子で呑気さをアピールするのが良いと思う」

 農家のおっちゃん的な。きっと野生のオークにそんな呑気な奴はいないはずだ。無害アピールにもなる。上着着なくても辛うじて裸じゃない。

「……いいですわね。野生のオークなら絶対にしなさそうな格好なのがポイント高ですわ」

 シータさんも乗り気である。この路線で確定か……?

「あのー、オイラの意見は……?」
「「却下で」」

 おずおずと切り出すソロンさんに二人揃ってノーを突きつける。あんたに任せたら野生のオーク新バージョンにしかならんだろ! それじゃあ意味が無ぇんだよ!!

「しかし! リュージの案も捨てがたいですが、ここは他の可能性も模索すべきかと!」


 そうしてこの日。俺とシータは割と遅くまでソロンさん改造会議を続けたのだった。



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