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2章 冒険者ギルドに入ってみる件

おつかい卒業します?

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「なーんか違うんだよなぁ……」
「どうしましたの? 藪から棒に」
「日々の草刈りでナイフを扱えるようになったのは良いんだが、なんかしっくり来ないんだ」

 おかげで『草刈りのリュージ』なんて呼ばれるようになってしまったんだが、ナイフじゃなんか足りない気がする。主に長さ。

「でも貴方、それより重いものは持てないのではなくて?」
「クックック、甘いなシータ! 俺がいつまでも非力なままだと思うなよ!!」

 ――そう。日々の筋トレのお陰で俺の『ちから』は平均値を超えたのだ! やっと草刈り以外の仕事もこなせるようになったんだ! 森羅万象さんのお陰で買い物も適正価格でゲットできるし、万能感がハンパ無い。

「あまり浮かれていると足元掬われますわよ」
「俺に抜かりはない!」
「具体的には?」
「特に何かしら用意してるわけじゃあないが、たぶん大丈夫だ!」
「その根拠のない自信は何処からくるのやら……」

 こいつダメだと頭を振るシータ。失敬な、今日の俺は絶好調だぞ!

「今日は随分と元気が良いねぇ、リュー坊」

 ギルドの中だから、おばちゃんにも聞かれていた。今までのやり取り全部。恥ずい。

「ナイフがしっくり来ないのは、もしかすると武器が合ってないのかもしれないさね」

 ほうほう。つまり俺に合っている武器は他にある、と?

「ただまあ、今すぐ武器を探すのも大変だ。それに旅人にとってナイフが相棒の様なものであるのも事実さ」

 アウトドアだと色々使えて便利だもんな、ナイフ。ナイフ捌きは上手くなった自信はあるが、実践となるとまだ不安があるな……。

「そういう訳で――もうそろそろ解禁しようかね、街の外のクエストを」

 まじで!? お使いクエスト卒業?





「――と、思っていた時期が俺にもありました……」
「難易度が上がるとはいえ、採取もお使いには違いありませんものね……」

 今回のターゲットはヒュプヌーン草。遅効性の睡眠薬になるそうで、睡眠障害の人に人気があるのだとか。ポーションの材料とかじゃないのが意外といえば意外だ。 肝心のヒュプヌーン草の見た目だが、日本人にはお馴染みのタンポポである。葉っぱの部分を粉にして飲むらしい。ギルドにあった薬草図鑑にそう書いてあった。

「日当たりの良いとこに生えてそうなモンだが……」

 街はずれの森に分け入り早数十分。おばちゃんお勧めのヒュプヌーン草スポットはまだ見つからない。 ただ、ナイフは大活躍である。人があまり通らないのか草がぼうぼうに生えているので刈りながら進んでいる。まさか俺の草刈りスキルがこんな所で役に立つとは!!

「……まさか。おばさまの目的ってこれだったんじゃあ?」

 シータよ、何か言ったか?

「いいえ、何でもありませんわ。……………いくら何でも考えすぎよね」

 うむ? 後半が小声過ぎて聞こえなかったんだが。まあいいか。それにしてもこれだけスッキリと刈れると爽快だなぁ!!

 とかやってるうちに……おや、絶好の日当たりスポット発見! 草の丈も低くなってるようだし、あそこじゃないか? 目的地が定まったお陰か俺の草を刈るスピードが上がる。絶好調だぜ、俺ぇぇ!!

「ちょ、リュージ!?」
「オススメスポットゲットだぁぁ!!」

 シータがなんか焦ってるようだが、今の俺を止める事は誰にもできん!





「――と、思っていた時期が俺にもありました」

 日当たり良好なスポットには先客が居られました。呆気なく止まった俺。これは止まらざるを得ない。

「だから止めましたのに!」

 シータが小声で叫ぶという器用な真似をしている。
 ちなみに先客は王道RPGではおなじみのオークさんであります。豚ヅラの緑でハゲてる上半身裸のやつ。ゲームによってはエゲツないヤツだがこの世界では果たしてどうなのか……?

 なし崩し的に初戦闘始まっちゃうのか、これ?


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