20 / 106
2章 冒険者ギルドに入ってみる件
衣装ちぇーんじ!
しおりを挟む朝イチ。
俺たちは服屋に来ていた。俺の学ランにしても、シータのドレスにしても悪目立ちするからなぁ。早く変えるに越したことはない。だが――
「新しく仕立てるなら銀貨一枚からになるよ」
「……むう、意外と高いですわね」
昨日の報酬が最低限必要なのか……。服って実はお高い買い物なんだな。昨日は晩飯外で済ませちまったから微妙に足りないぞ。
「予算的に厳しいなら古着をお勧めするがね」
日本にいる時は古着なんて全く縁が無かったんだが、郷に入っては郷に従えってやつか。この世界では新しく服を仕立てるのは、金持ちか何かしらの記念日が控えてるヤツくらいなんだと。
「今は目立つ服装を何とかするのが先だし、仕方ないか」
「ですわね。先立つ物が無いのだから仕方ありませんわ」
最終的に俺は一般的な旅人の服一式――赤いチュニックに白いシャツと茶色のズボン、それにブーツ、マントのオーソドックスなスタイルになった。これで物珍しげな視線ともオサラバだ。シータも華美さは無いものの似たような感じだ。紫色のマントに白のシャツとスカートに絶対領域ニーソと紫のブーツ。ワンポイントに胸元には水色のネクタイというスタイル。意外だったのはお嬢様育ちであろう彼女が服の素材にあまり文句を言わなかった事。彼女も郷に入って郷に従ったんだろうか?
ちなみに森羅万象に鑑定機能があるのを活用して、徹底的に値切らせていただいた。すまんね、服屋のオヤジよ。
だって無い袖は振れないんだよなー。
服を売れ? 却下だ。
俺は日本に帰る気満々なので学ランを売るわけにはいかんのだ。あれ、オーダーメイドだから意外と高いらしい。お袋がぼやいてたのを聞いた覚えがある。三年間着ることを考えたら安いんだろうけどなぁ。
あと、シータのドレスは高価すぎて店に買い取り拒否された。支払いするだけで店が傾きかねない服って何なん? しかし俺は知っている。あのドレスと似たり寄ったりなのが、彼女のプライベートルームに少なくとも十着以上はあることを……。ダンマスってそんなに儲かるのか?
*
「今日のお仕事一覧は何があるんだろうなー」
「買い物代行があったらリベンジしてやりますわ!」
意気揚々とギルドへ向かった俺たちを待っていたのは――
「おや、今日はずいぶんとらしい(・・・)格好になったじゃないかい」
もちろん受付のおばちゃんである。やっぱ昨日の出で立ちはアレだったんすね……。つーても俺は着の身着のままだったし、シータのドレスもあれが一番質素だったんすよ、おばちゃん。
「今日あんたたちが受けられるのはコレになるよ」
おばちゃんから渡された依頼の束。昨日より増えていて、着実にステップアップしているのを感じる。……これが充実感というやつか!
「単に今日の依頼が多いだけなのでは?」
「現実的なツッコミ禁止ィ!」
悲しくなるだろ!!
まあそれはともかく今日のお仕事だ。なになに……。
「街はずれのネルドさんちの草刈りに、雑貨屋の荷下ろし、エール農場の草刈りに、住宅区のラルドさんの買い物代行、中央公園の草刈り……」
草刈りの割合多っ!
そして今日も買い物代行依頼があったので、シータはガッツポーズをしていた。リベンジマッチがそんなに嬉しいか。
「草刈りに関しては、昨日の兄ちゃんの仕事振りが評判になっててね。たぶんこれから増えてくるんじゃないかねえ」
おおう、俺の日本人気質バリバリの仕事振りが早速評価されているだと!
……しっかし、そんなに雑草に困ってる家が多いのかよこの街。…………もういっそのこと熱湯か塩でも振りまいて不毛の地にでもしてやった方が良いのでは? と思ったが、草抜きじゃなくて草刈りなんだよなぁ。全滅させては元も子もない。ある程度残さないと見栄えが悪いもんなぁ……。
「農場みたいな広い所はまだ不安があるし、街はずれのネルドさんちにしとくか……」
さあ、今日も借金返済のためにお仕事頑張りますか!
20
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。
しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。
とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。
『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』
これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。
(旧)異世界で家出して貴族にお世話になります
石コロコロ
ファンタジー
ある日、目が覚めると異世界!
しかも赤ん坊!\(^o^)/
ウキウキしてた主人公の親はなんと!
虐待してくる酷いやつだったから
家出をした主人公!
そして貴族になることになった主人公は、、( ̄▽ ̄)ニヤリッ
さてどうなるのかな
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる