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2章 冒険者ギルドに入ってみる件

はじめてのおつかいが終わって……

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 待ちあわせ場所であるギルドに帰ってきたのは、酒場がにわかに活気付く夕暮れ時だった。……草刈りは重労働なのだよ。草刈り機という文明の利器が無いからな。あったらあったで、あの刈る時に発生する爆音は近所迷惑だが。ともあれ報酬の銀貨一枚を手にいれたのでホクホクだ。

 さて、シータはどこに――いた。カウンターでうちひしがれてやがる。やっぱ惨敗だったのな。

「よう、シータ。人間、誰だって上手くいかない時もあるさ」

 ま、元気だせ。夕飯奢ってやるから。一番安い銅貨十枚のやつだけどな! くはは!

 ここで豆知識。銅貨は百枚で銀貨一枚、銀貨は百枚で金貨一枚に換算される。わかりやすいのは良い事だ。日本より物価が安いので、一般庶民が金貨を扱うのはそうそう無いそうである。

「うるさいです。私だって、商人に足元見られなければ立派に完遂できた筈なのです!」

 ああ、今着てるドレスがアダになったのか……。まあ、ハタから見たら『世間知らずのお嬢様、初めてのおつかい』だからな。そりゃ商人側からしたらカモるしかないわ。
 こっちの世界の商品には定価とかがないからなー。買い物はある意味で商人との戦いだ。大きな街の商店とかならまた事情が変わるんだろうが……。
 俺が買い物代行を真っ先に拒否ったのはその辺の情報を得ていたからである。スーパーとかコンビニに慣れた現代っ子が、百戦錬磨の商人に値切りなんつー高度な交渉ができると思うなよ? そもそも適正価格がわからんし。

「おかげで報酬も減らされてしまうし……踏んだり蹴ったりですわ」

 ああ、報酬はもらえたのか。て事は一応は注文をこなせたんだろう。予算オーバーになっただけで。

「とりあえず、お互い初依頼達成って事でメシでも食おうぜ?」
「一番安い銅貨十枚のご飯ですけれど」
「お前さっきの地味に根に持ってるな……」
「さて、どうでしょうね?」

 クスリと笑みを見せるシータ。なんとか浮上してきたみたいだ。立ち直りの早い事で。

「明日は二人揃って朝イチで服屋かねぇ」
「ですわね。このドレス、意外と目立つ様ですし」
「意外と、だと…………!?」

 意外とどころか間違いなく目立っとるわ! 感覚がズレてるにも程があるだろ!!

「シータはまず庶民感覚を身につけるところから始めるべきだと思うぞ、うん」
「どういう意味ですの!? 私だって一般常識くらい存じておりますわ!」
「おつかい、失敗したのに?」

 うぐっと言葉に詰まるシータ。

「ま、初めての外だし仕方ないっちゃ仕方ないさ。俺も似たり寄ったりだしなー」

 本読んだ位で一般常識が身につくわきゃない。そもそも本に載ってないしな、一般常識。





 ――夜。
 変な夢をみた。というか見ている。これが明晰夢というやつか。

「キュルキュル。キュルルン」

 俺の正面にはデフォルメ仕様な金色の龍が一匹。なんか可愛く鳴いている。だがなぜデフォルメ? リアル調のが絶対カッコいいじゃねーか。

「キュルル! キュルキュル!」

 どうも俺の思考がダダ漏れらしく、龍は抗議をはじめた。え? 好きでデフォルメされてる訳じゃないって?

「キュル!」

 その通り! と、頷く龍。奴の言ってる事がわかるのは夢だからか?

「キュルッ、キュルキュル!」

 そこで取り出したるはこの果実? そう言って龍が差し出してきたのは、どっからどう見てもりんごにしか見えない果実だった。

「キュルルン」

 これをサーチしてみろ? サーチ……森羅万象の事か。……よし。


名称:知恵の実

一口かじれば『かしこさ』+1。一個食べれば+10。魅惑のチートアイテム。周回遅れな貴方に! りんごとは似て非なる果実。

適正価格:時価


 へー、森羅さんって鑑定じみた事もできるんだなー。これだけでもかしこさが上がった気がするなー。……それにしても『周回遅れな貴方に』ってどういう意味だよ!?

「キュルッ!」

 って、おいこらまて龍。そのあからさまに怪しいドーピングアイテムを俺の口にねじり込もうとするのヤメロ。一口ならともかく、大きさ的に一個はムリ、無理だから……モゴゴゴゴ――


 そこで俺の意識は途切れた。



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