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1章 異世界に召喚されたら職業が旅人だった件

図書室で自習してみる

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 結局、図書館に行く事にした。筋トレはどこでもできるが、読書はまず本のある場所に行かないとどうにもならない。場所は手近にいる人を捕まえて聞いた。いつもヴァルさんを頼る訳にもいかないしな。

 図書館……というか、図書室は城の中にあるだけあって広い上に、一生かけても読めないんじゃないかというくらい本がギッシリだった。古い紙の香り、というやつだろうか。独特の香りがする。この香りと山盛りの本を見てるだけで頭がクラクラしてくる。え? この中から目的の本を探すだけでも一仕事じゃないか? つーか俺、そもそも何の本を読むかすら決めてない。

「どうかされましたか? 異邦の方」

 入り口で悩んでいたら声を掛けられた。メガネをかけた美人さんだ。本を抱えてる所を見るに図書室関係者か? ちなみに一目で召喚された人間とバレたのは、未だに学ラン姿だからである。

「……いや。勉強しようと思って来たんすけど、何から手をつければ良いかわからなくて……」
「……では地理の本がおすすめですね。ですが、異邦の方なら座学の講義があるのでは?」

 おっとー、美人さんの目が何か疑わしいモノを見る目に変わりかけてるぞー。やばい。何か言い繕わなくてはっ!

「あー、その。物覚えが悪すぎるっつって追い出されました」

 本当はそれ以前の問題だったのだが、馬鹿正直に「文字が読めなかったから」とか言ったら余計怪しまれかねない。そんな奴が図書室来るとか怪しすぎだ。美人さんは教官ならあり得ると思ったのか、「あら、まあ」とご納得。……教官伝説に助けられたぜ。

「私この図書室の司書をしておりますので、いくつか丁度良い本を見繕って来ますね」

 そう言って司書さんは本の海へと消えていった。この中から適切な本を探せるとか司書すげえな。俺にはわからんけど、ジャンル別とかで並んでるんだろうか? そうだとしても凄い事に変わりはないが……。

 ヒマなので手近にあった本を手に取り森羅万象さんを発動してみる。

『邪神と魔族』
 魔王を頂点とする魔族が崇める神を邪神と呼ぶ。魔王が現れし時に出現する邪神は最初は弱々しく無害だが、その成長は著しく最終的には強大な力をもって人族を脅かす存在である。彼の存在は、全てを見通し、全ての理を操る。

「はー、魔王の上にそんなヤバいのがいるのかー」

 王は「魔王を倒せ」としか言ってなかったが、最終的にはこの邪神とか言う奴も倒さないとダメなんじゃね? ……なーんか引っかかるな。どうして邪神の話がカケラも出て来なかったんだ? 魔王よりよっぽどヤバイ奴じゃんか。忘れてたのか知らないのか。それとも、存在が眉唾なのか。
 あとはゲームとかでも良くあるアレか? 魔王倒したら今まで全く影も形もなかった大魔王が現れて、大魔王倒したらやっぱり以下略な神が現れて、神を倒したら以下略の何ソレが……っつーエンドレスパターン。インフレが凄いやつな。

 まあ一人で考えていてもラチがあかない。今度誰かに相談……できねーよ! 俺、文字読めねーのに、本で読んだとか言えねえよ! 情報ソースが説明できねぇぇぇ!!


*


「お待たせしました。こちらが勉強用に丁度良い本になります」

 うんうん唸っていたら司書さんが帰って来た。その手には数冊の本。厚すぎず薄すぎずの丁度良い塩梅だ。流石はプロ。

「図書室の本は原則、持ち出し禁止ですから室内で読んでくださいね」

 そう言って司書さんは入り口近くのカウンター席に戻っていった。それにしても、部屋には持って帰れないのか。……そういや講義のテキストもそうだったよな。もしかしてこの世界では本は貴重品なのかねぇ……?

 ま、勉強用のテキストも来た事だし『かしこさ』上げを頑張りますか!


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