8 / 106
1章 異世界に召喚されたら職業が旅人だった件
図書室で自習してみる
しおりを挟む結局、図書館に行く事にした。筋トレはどこでもできるが、読書はまず本のある場所に行かないとどうにもならない。場所は手近にいる人を捕まえて聞いた。いつもヴァルさんを頼る訳にもいかないしな。
図書館……というか、図書室は城の中にあるだけあって広い上に、一生かけても読めないんじゃないかというくらい本がギッシリだった。古い紙の香り、というやつだろうか。独特の香りがする。この香りと山盛りの本を見てるだけで頭がクラクラしてくる。え? この中から目的の本を探すだけでも一仕事じゃないか? つーか俺、そもそも何の本を読むかすら決めてない。
「どうかされましたか? 異邦の方」
入り口で悩んでいたら声を掛けられた。メガネをかけた美人さんだ。本を抱えてる所を見るに図書室関係者か? ちなみに一目で召喚された人間とバレたのは、未だに学ラン姿だからである。
「……いや。勉強しようと思って来たんすけど、何から手をつければ良いかわからなくて……」
「……では地理の本がおすすめですね。ですが、異邦の方なら座学の講義があるのでは?」
おっとー、美人さんの目が何か疑わしいモノを見る目に変わりかけてるぞー。やばい。何か言い繕わなくてはっ!
「あー、その。物覚えが悪すぎるっつって追い出されました」
本当はそれ以前の問題だったのだが、馬鹿正直に「文字が読めなかったから」とか言ったら余計怪しまれかねない。そんな奴が図書室来るとか怪しすぎだ。美人さんは教官ならあり得ると思ったのか、「あら、まあ」とご納得。……教官伝説に助けられたぜ。
「私この図書室の司書をしておりますので、いくつか丁度良い本を見繕って来ますね」
そう言って司書さんは本の海へと消えていった。この中から適切な本を探せるとか司書すげえな。俺にはわからんけど、ジャンル別とかで並んでるんだろうか? そうだとしても凄い事に変わりはないが……。
ヒマなので手近にあった本を手に取り森羅万象さんを発動してみる。
『邪神と魔族』
魔王を頂点とする魔族が崇める神を邪神と呼ぶ。魔王が現れし時に出現する邪神は最初は弱々しく無害だが、その成長は著しく最終的には強大な力をもって人族を脅かす存在である。彼の存在は、全てを見通し、全ての理を操る。
「はー、魔王の上にそんなヤバいのがいるのかー」
王は「魔王を倒せ」としか言ってなかったが、最終的にはこの邪神とか言う奴も倒さないとダメなんじゃね? ……なーんか引っかかるな。どうして邪神の話がカケラも出て来なかったんだ? 魔王よりよっぽどヤバイ奴じゃんか。忘れてたのか知らないのか。それとも、存在が眉唾なのか。
あとはゲームとかでも良くあるアレか? 魔王倒したら今まで全く影も形もなかった大魔王が現れて、大魔王倒したらやっぱり以下略な神が現れて、神を倒したら以下略の何ソレが……っつーエンドレスパターン。インフレが凄いやつな。
まあ一人で考えていてもラチがあかない。今度誰かに相談……できねーよ! 俺、文字読めねーのに、本で読んだとか言えねえよ! 情報ソースが説明できねぇぇぇ!!
*
「お待たせしました。こちらが勉強用に丁度良い本になります」
うんうん唸っていたら司書さんが帰って来た。その手には数冊の本。厚すぎず薄すぎずの丁度良い塩梅だ。流石はプロ。
「図書室の本は原則、持ち出し禁止ですから室内で読んでくださいね」
そう言って司書さんは入り口近くのカウンター席に戻っていった。それにしても、部屋には持って帰れないのか。……そういや講義のテキストもそうだったよな。もしかしてこの世界では本は貴重品なのかねぇ……?
ま、勉強用のテキストも来た事だし『かしこさ』上げを頑張りますか!
20
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。
SSS級宮廷錬金術師のダンジョン配信スローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国領の田舎に住む辺境伯令嬢アザレア・グラジオラスは、父親の紹介で知らない田舎貴族と婚約させられそうになった。けれど、アザレアは宮廷錬金術師に憧れていた。
こっそりと家出をしたアザレアは、右も左も分からないままポインセチア帝国を目指す。
SSS級宮廷錬金術師になるべく、他の錬金術師とは違う独自のポーションを開発していく。
やがて帝国から目をつけられたアザレアは、念願が叶う!?
人生逆転して、のんびりスローライフ!
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。
しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。
とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。
『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』
これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。
(旧)異世界で家出して貴族にお世話になります
石コロコロ
ファンタジー
ある日、目が覚めると異世界!
しかも赤ん坊!\(^o^)/
ウキウキしてた主人公の親はなんと!
虐待してくる酷いやつだったから
家出をした主人公!
そして貴族になることになった主人公は、、( ̄▽ ̄)ニヤリッ
さてどうなるのかな
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる