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1章 異世界に召喚されたら職業が旅人だった件

俺のステおかしくね?

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 ――異世界生活三日目。

 今日は魔術の講義があるらしい。嫌な予感しかしないが、サボる訳にもいかない。今日も一応、お声はかかっている。もしかしたら……もしかしたら知識・魔術系旅人という線もあるかもしれないからだ! 旅人といえば旅の経験豊富で知識人なイメージ! 魔術を扱える旅人だって多いに決まってる。

 ヴァルさんから聞いたのだが、旅人というのは基本的に何でも幅広く適正のある職業なのだとか。だからこその優良職。俺の場合、直接戦闘はダメだったが、間接的な部分に特化している可能性は大いにある。諦めるのはまだ早い!

 …………自分に一生懸命言い聞かせているという自覚はある。だって俺、この世界に来てから魔力的なもの感じた事なんてねーし、頭が良くなった気もしねーもん。職業補正はどうやら息してねーし?


 ちなみに今日の朝食も豪勢だった。……だから、朝からこんなん食べきれねーってば。あ、でも残しても良いんだっけ。





「では魔術の実技講習をはじめます」

 昨日とは打って変わって、柔らかい空気を纏った年かさの女性が今日の講師。役職は魔術師団の教官で、過去には副師団長も務めた人らしい。座学も受け持つ才女である。ただ「げんえきじだいはすごいやばかった」ってヴァルさんが怯えてた。詳しく聞く勇気も無かったので彼女の過去は謎に溢れている。

 そんな才女だが過去の片鱗は最初から見え隠れしていた。

「まずは魔術の使い方ですね」

 ……え、いきなり? こういうの、普通は魔力的なものの感じ方とかからやるんじゃないのか?

「最初は基本中の基本であるステータス閲覧魔術からです」

 俺の焦りとは裏腹に教官の話は続いていく。……いや、でも今日は初日のためか全員参加だから、誰でも使える魔術なのかもしれない。

「ステータス閲覧魔術は、頭の中で『ステータス』と念じるだけで自分の状態が把握できるものになります」

 説明を聞いただけだとピンと来ないな……。取り敢えずやってみるか。

 ステータス!

 念じてみると――

レベル:10
クラス:ストレンジャー(異邦神)
HP:150/150
MP:9/10
(TP:1000/1000)
たいりょく:15
まりょく:3
かしこさ:9
ちから:7
すばやさ:12
スキル:▼

 目の前に透明な板のようなものが現れて、いろいろ表示されていたのだが……おい、俺のステータスは往年の王道RPGかよ!? まあ表示されたってことは魔術が使えないというわけではないのが証明された証左なので、正直ホッとした。武術が駄目で魔術も駄目だった日には目も当てられないからな。

「見ることはできましたか? これは自分にしか見ることが出来ないものなので、大いに活用して下さいね」

 皆が興味津々に自分のステータスを覗き込んでいるのを見て、満足そうに告げる教官。

「――参考までに。生命力や魔法力以外の各数値は、一般の方だと10が平均的なものになります」

 …………ナンダッテー。力が無いのは昨日嫌ってほど思い知らされたが、魔術に関係ありそうな数値も絶望的なんだが、俺はどうすれば……? というか、クラス表示が何かバグってないか? 異邦人ならわかるが、異邦神って何なんだ、神って。

 …………俺、もしかしなくても『旅人』じゃ無くね? ただし、仮に『神』だとしてもこのステータス低すぎだろ。一般人にも負けるじゃねーか! どんな神だよ!? あと、異常に高い数値でカッコ書きのTPとやら、お前は一体何者なんだ。何に使うのお前。

 体力と素早さは人並み以上とわかっただけでもまぁよしとするか。……しかし、ふと他のやつらの数値が気になったので周りの言葉に耳を傾けてみた。

「職業補正で平均50越えてら……かしこさ除く。俺の頭が悪いと言いたいのかこれぇ!」
「聖女のMP高っ! 500越えてるー」
「賢者ってやっぱり魔法寄りなんですねぇ……」
「勇者やばい、平均100越えてる。職業補正がやばい」

 ……勇者パーティーさん達の職業補正やべえ。俺が十人束になってかかっても瞬殺される数値だ。そして俺のステータス、やっぱ職業補正かかってねーだろ! だって旅人さんは平均値がお高めの優良職だってヴァルさん言ってたもんよ!! 仮に神だったとしてもこの数値は無い。…………俺、もしかしなくても詰んだ? これは誰にも知られないようにしなければ…………!


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