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第三章 借金漬けにされるとは、情けない!

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「まさか、王宮の近くにこんな高貴な酒場があったとは…」
「ははは。ここは政治家たちと腹を割って話す場所でもある。そう簡単に中には入れんぞ?」

 ハロルド様に連れられてきたのは、高貴な身分の人々が通うという酒場だ。お店の装飾やデザインはとてもシンプルだ。その分一つ一つの物がこだわって配置されている気がする。置かれている物は全て高級そうだけど、全体としての調和がちゃんと取れている。だから、成金の趣味みたいに下品さがない。
 まさか、こんな高級な酒場が、王宮近くの平凡な家屋の地下室にあるなんて。僕は今だに信じられない。
 うう、しかしこういう高級そうな雰囲気は緊張するな。自分がまるで場違いじゃないかと思えてくる。
 一方のハロルド様は流石の振る舞いだ。そうだ、真似できそうな振る舞いは真似してみよう。
 
「さて、食事も済ませたところで、本題に移ろうか」
「は、はい!」

 くだらないことを考えていた僕は、思わずドキっとしてしまう。それまでリラックスしていたハロルド様は、一気に真剣な顔つきへと変わっていた。

「1つ目は、地下通路を通った後の話だ」
「今後の話ですね」
「その通りだ。地下通路を通った後、モンスターは更に強力になる」
「そ、そんなに強いのですか」
「いかにも。エルド殿とはいえ、一筋縄ではいかぬだろう」

 僕の心の中で不安な感情が膨らんでいく。冒険を始めるってことは、それだけ危ない目にあうということだ。分かっていたけど、こう改めて言われると…
 僕の顔が強張っているのに気がついたのか、ハロルド様はにっこりと微笑んだ。

「そう不安がらなくても良い。実は地下通路を出てすぐ北の山に修練場があるのだ」
「しゅ、修練場ですか」
「ああ、武芸者たちが日々鍛錬に励んでおる。そこでしっかりと心身を鍛えて貰えば良い。もちろん必ず行く必要はないが、魔物に苦戦するならば行っても損はないぞ」
「ありがとうございます!」

 こんな有益な情報を教えて下さるとは。やっぱりハロルド様は気配りができて素晴らしい方だ。

「ふふふ、不安が晴れたのなら何よりだ」
「はい!」
「さあ、2つ目の話に進もう。少し申しにくいのだが…」

 ハロルド様が少し言い淀んでいる。一体何の話なのだろう。

「アンナ殿…つまり、そなたの母君についてだ」
「え?」

 予想もしていなかった話題に、僕は間の抜けた声を出してしまった。母さんがどうかしたのだろうか。いや、母さんとハロルド様の間に何かあったのだろうか…
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