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愛の形

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「ゆう君、今日のデートも楽しかったね」
「うん、僕も楽しかった」

 あの聖夜から1ヶ月が経った。僕たちは以前と変わることなく交際を続けている。だけど、一つだけ大きく変わったことがある。

「ふふふ。ゆう君、もうソワソワしている。そんなに楽しみなんだ」
「う、うん」

 自動ドアが開いて、僕たちはホテルに入っていく。

「はい。私の荷物」
「あ…うん」

 朱莉は自分の荷物は自分で持つ性分だ。デートの時、僕が荷物を持とうとするととても嫌がる。だけどそれはデートの時の話。ホテルに入るとそれは一変する。朱莉は冷たい顔になり、僕に荷物を渡す、それが定番になってきた。
 確かに、ここでは僕は彼氏というよりも荷物持ちだ。そんな屈辱を与えてくれる朱莉のことがますます愛おしくなってしまう。
 …いや、もしかしたら僕はトナカイなのかもしれない。こうやって荷物持ちになって、笑いものにされている。トナカイ…あの聖夜を体験した僕にはふさわしいかもしれない。そんなことを考えていると、いつの間にかエレベーターの前に来ていた。

「さ、着いたよ」

 エレベーターに乗り、指定された部屋へと向かう。朱莉は待ちきれないと言わんばかりにルンルンと歩き、ドアノブに手をかけた。ガチャっという音がして、扉が開く。

「ふぉふぉふぉ、朱莉ちゃん、会いたかったわい」
「サンタさん♪ふふふ、私も会いたかった♪」

 朱莉は小走りで駆け出し、サンタの胸に飛び込む。朱莉とサンタがまるで恋人のように抱きしめ合っている。朱莉はサンタの胸の暖かさを確認しながら幸せそうに笑っている。僕はその光景に釘付けになったまま、部屋の片隅に荷物を置く。

「サンタさぁん…プレゼント、欲しいなぁ…」

 朱莉は上目遣いでサンタの顔をじっと見つめている。その目はすでにトロンとしている。強い雄にうっとりとするメスの顔だ。

「ふぉふぉふぉ。本来はクリスマス限定じゃが…朱莉ちゃんは特別じゃ!年中いつでもプレゼントをあげるわい!」
「本当?嬉しい♪」

 サンタの言葉に朱莉は天真爛漫な笑顔を見せる。そして、目を閉じて、唇をむにゅっと突き出す。キスして欲しいと言わんばかりの可愛らしい顔…僕にはしてくれない顔だ。

「おっほ♪こんな顔されたらたまらんわ!今日もたくさん愛して、朱莉ちゃんにいっぱい種付けしてあげるからね!」
「うん。たくさんしてぇ♪責任なら、ゆう君が取るから…♪」

 一つ大きく変わったこと。それは僕と朱莉がHをしなくなったことだ。朱莉はおっさんとHをする。そして、僕はその光景を見ながら自慰行為に耽る。
 随分と変わった営みの形だと思う。でも、僕と朱莉にとって、これこそがお互いの愛を確かめ合う性行為なのだ。僕のコンプレックス、朱莉の過去…それぞれを認め合った末の愛の形なのだ。
 僕は朱莉を愛している。そして他の男にどれだけ抱かれても、朱莉は僕を愛してくれているのだ。
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