1 / 21
僕と彼女のクリスマス①
しおりを挟む※
「まさかあんな素敵なお店を予約してくれたなんて思わなかったわ。ゆう君もやる時はやるね♪」
「何だよ、それ」
「ふふふ。冗談冗談」
今日はクリスマス・イブ。街には至るところにキラキラとしたイルミネーションが飾られていて、恋人たちで賑わっている。その恋人たちの中に僕と朱莉もいた。
僕たちは今、高層ビルの一角にあるレストランでディナーを済ませてきた。ネオンが煌めく都会の夜景を眺めながら、洒落たフランス料理に舌鼓を打った。大学生の僕にはあまり身の丈に合っているお店とは思わない。だけどせっかくのクリスマスだ。思い切って背伸びをしてみるのもいいじゃないか。
朱莉もまさかあんなお店に連れてきてもらえるとは思っていなかったようで、先ほどからずっと上機嫌だ。笑顔の朱莉はやっぱり可愛い。この天真爛漫な笑顔を見れただけでも奮発した甲斐があるというものだ。
※
僕と朱莉は男女混合のバレーサークルで知り合った。朱莉は170cm以上ある長身で、何でも高校時代は強豪校でレギュラーを張っていたらしい。実際、初心者の僕より背が高くて、はるかにバレーが上手だ。
そんなわけで、サークルに入会した当初は何となく近寄り難く感じた。だけど話してみると明るく真面目な性格をしていて、分け隔てなく人と接することができる人なのだと知った。
それに、容姿もとても綺麗だ。顔は今流行りのアイドルを少し芋くさくした感じ…と言えばいいのだろうか。ぱっちりとした目が印象的な、整った顔立ちをしている。でもメイクやファッションには疎いようで、どこか垢抜けていない雰囲気が漂っている。僕はそれもまた彼女の魅力と思っているけど、本人に「芋くさい」なんて言おうものなら不機嫌になるだろうなあ…
ちょっと下世話になるけど身体は引き締まっていながら、出るところは出ていて、とてもメリハリがある。鍛え抜いた健康的な肢体だ。朱莉本人は着たい服が限られるようで、もっと痩せたいみたいだ。だけど僕からすれば全く気にならない。むしろ今の健康的な身体の方が男性にとっては魅力的だ。
※
「何?どうしたの?」
「あ、ごめん」
どうやら朱莉のことをジロジロと見過ぎてあたようだ。朱莉はこういう男の下心を鋭く察知する。結構な数の先輩たちがアタックをしたみたいだけど、朱莉はそういう誘いは全て断っていたみたいだ。
「何よ。怪しいなあ」
「そんなことないよ。さ、着いたよ」
「わあ…綺麗」
ここは先輩に教えてもらった穴場の公園だ。イルミネーションと満点の星空がとても綺麗だ。こんな最高の景色を、大好きな朱莉と共有できる。本当に幸せだと思う。
※
公園にあるベンチに2人で腰掛けてから、どれくらい景色を眺めていたのだろう。朱莉がポケットから手を出して、僕のポケットに手を入れてきた。ポケットの中で手と手が絡み合って…いつしか恋人繋ぎになっていた。指一本一本に朱莉の暖かさが伝わる。
「…今日は、本当にありがとう」
少しぶっきらぼうに朱莉が言う。心なし顔も少し紅潮している気がする。恥ずかしくて僕の目をしっかり見て話せないようだ。そんな朱莉も愛らしく感じる。
「その…次は、どこ行くの?」
「えっ…」
「ゆう君の行きたい場所なら、どこでも行くから…」
朱莉の方からこういうことを言うのはとても珍しい。だけど驚きよりも、はるかに胸の高鳴りと高揚感が勝っていた。僕は朱里の肩を抱き寄せ、ミディアムショートを優しく撫でた。そこから、唇を重ねた。
「んうぅ、むぅん…んん、んぅ…」
朱莉の甘い吐息が漏れる。まるでお互いの身体が溶けて、一つになるみたいな感覚になって…僕たちはキスを続けた。
これ以上ないくらい幸せなクリスマスだ。だけど僕にはコンプレックスと誰にも言えない願望があった。ホテルへと向かう道中、そのことに思いを馳せていた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
タイムリーパーの僕がスキル:メタバーシングで女子とシマクル話。
星空指数
恋愛
タイムリープした主人公が女の子達と出会い、彼女達から聞いた露出や混浴などの体験をメタバーシングで仮想現実化し、そのエロ・シチュの中で彼女達とHをしまくる短編集です。【エロです】
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
坊っちゃまの計画的犯行
あさとよる
恋愛
お仕置きセックスで処女喪失からの溺愛?そして独占欲丸出しで奪い合いの逆ハーレム♡見目麗しい榑林家の一卵性双子から寵愛を受けるこのメイド…何者?
※性的な描写が含まれます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる