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僕と彼女のクリスマス①

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「まさかあんな素敵なお店を予約してくれたなんて思わなかったわ。ゆう君もやる時はやるね♪」
「何だよ、それ」
「ふふふ。冗談冗談」

 今日はクリスマス・イブ。街には至るところにキラキラとしたイルミネーションが飾られていて、恋人たちで賑わっている。その恋人たちの中に僕と朱莉もいた。
 僕たちは今、高層ビルの一角にあるレストランでディナーを済ませてきた。ネオンが煌めく都会の夜景を眺めながら、洒落たフランス料理に舌鼓を打った。大学生の僕にはあまり身の丈に合っているお店とは思わない。だけどせっかくのクリスマスだ。思い切って背伸びをしてみるのもいいじゃないか。
 朱莉もまさかあんなお店に連れてきてもらえるとは思っていなかったようで、先ほどからずっと上機嫌だ。笑顔の朱莉はやっぱり可愛い。この天真爛漫な笑顔を見れただけでも奮発した甲斐があるというものだ。



 僕と朱莉は男女混合のバレーサークルで知り合った。朱莉は170cm以上ある長身で、何でも高校時代は強豪校でレギュラーを張っていたらしい。実際、初心者の僕より背が高くて、はるかにバレーが上手だ。
 そんなわけで、サークルに入会した当初は何となく近寄り難く感じた。だけど話してみると明るく真面目な性格をしていて、分け隔てなく人と接することができる人なのだと知った。
 それに、容姿もとても綺麗だ。顔は今流行りのアイドルを少し芋くさくした感じ…と言えばいいのだろうか。ぱっちりとした目が印象的な、整った顔立ちをしている。でもメイクやファッションには疎いようで、どこか垢抜けていない雰囲気が漂っている。僕はそれもまた彼女の魅力と思っているけど、本人に「芋くさい」なんて言おうものなら不機嫌になるだろうなあ…
 ちょっと下世話になるけど身体は引き締まっていながら、出るところは出ていて、とてもメリハリがある。鍛え抜いた健康的な肢体だ。朱莉本人は着たい服が限られるようで、もっと痩せたいみたいだ。だけど僕からすれば全く気にならない。むしろ今の健康的な身体の方が男性にとっては魅力的だ。



「何?どうしたの?」
「あ、ごめん」

 どうやら朱莉のことをジロジロと見過ぎてあたようだ。朱莉はこういう男の下心を鋭く察知する。結構な数の先輩たちがアタックをしたみたいだけど、朱莉はそういう誘いは全て断っていたみたいだ。

「何よ。怪しいなあ」
「そんなことないよ。さ、着いたよ」
「わあ…綺麗」

 ここは先輩に教えてもらった穴場の公園だ。イルミネーションと満点の星空がとても綺麗だ。こんな最高の景色を、大好きな朱莉と共有できる。本当に幸せだと思う。



 公園にあるベンチに2人で腰掛けてから、どれくらい景色を眺めていたのだろう。朱莉がポケットから手を出して、僕のポケットに手を入れてきた。ポケットの中で手と手が絡み合って…いつしか恋人繋ぎになっていた。指一本一本に朱莉の暖かさが伝わる。

「…今日は、本当にありがとう」

 少しぶっきらぼうに朱莉が言う。心なし顔も少し紅潮している気がする。恥ずかしくて僕の目をしっかり見て話せないようだ。そんな朱莉も愛らしく感じる。

「その…次は、どこ行くの?」
「えっ…」
「ゆう君の行きたい場所なら、どこでも行くから…」

 朱莉の方からこういうことを言うのはとても珍しい。だけど驚きよりも、はるかに胸の高鳴りと高揚感が勝っていた。僕は朱里の肩を抱き寄せ、ミディアムショートを優しく撫でた。そこから、唇を重ねた。

「んうぅ、むぅん…んん、んぅ…」

 朱莉の甘い吐息が漏れる。まるでお互いの身体が溶けて、一つになるみたいな感覚になって…僕たちはキスを続けた。
 これ以上ないくらい幸せなクリスマスだ。だけど僕にはコンプレックスと誰にも言えない願望があった。ホテルへと向かう道中、そのことに思いを馳せていた。
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