上 下
170 / 287

169話「いつもの朝稽古とエルダの想い」▲(視点・ヒロヤ→エルダ)

しおりを挟む
 みんなが起き出す前に、風呂で軽く身体を流してから裏庭にトレーニングに向かう。
 
(昨夜は……酷かったな……)
 
 屋敷の周囲をランニングしながら思い出す。枕元にあった瓶を飲み干した時に、俺の中の凶暴性みたいなものがこみ上げてきた。それに合わせて『浩哉の力』が表に出てきたんだろう。
 ドロシーを攻めたて、リズを貪り、マルティナも、そしてレナまでも貪った。全部覚えている。あの流れでレナの初めてを奪わなかったのは、辛うじて残ってた理性に感謝だ。
 結局『疑似淫紋』の力で和美になったカズミとマルティナ相手にまぐわった後、意識を飛ばしたらしい。
 
(みんなに謝んなきゃな……)
 
 ランニングの後、身体をほぐしてから木刀を手に取る。
 カズミは元の姿に戻り、レナと抱き合って眠っていた。マルティナは俺にしがみついて眠っていたけど、そっと離れてみんなに布団を掛けておいた。
 自分の寝室を覗くと、俺が昨夜布団を掛けた状態のままでリズとドロシーが眠っていた。
 大寝室も俺の部屋も、淫臭が立ち込めていたけど、窓を開けると寒いだろうからそのままにしておいた。
 
(五人相手にあれだけ激しくセックスしたのに……なんか身体が軽いんだよな)
 
 木刀で素振りを続けるが、いつもより『振れている』。
 
「おはようヒロヤ殿」
 
 隣の家から、ギーゼが現れた。同じ様に軽くランニングでも済ませたのか、薄いシャツ一枚の姿で全身から湯気が立ち昇っている。
 
「あ、ギーゼおはよう。準備はできてるみたいだね」
 
 ニコリと頷いたギーゼが、手にした木刀を構える。
 
「今日もよろしく頼みます」
 
 ギーゼの撃ち込み稽古が始まった。
 
 ◆
 
「二人ともおはよう。──ヒロヤ、調子良さそうだな」
 
 前世の『作務衣』の様な稽古着を着たアスカが木刀を手に裏庭に顔を出した。……心なしか肌艶が良い。
 
「おはようございます」
「おはようアスカ。……キミこそなんか調子良さそうだよね」
「あぁ。昨夜はたっぷりゴージュに抱いてもらったからな」
 
 そういう秘め事をサラッと言っちゃうのがアスカクオリティーなのだ。当然の様にギーゼの顔が真っ赤に染まる。
 
「その……そういうものなのですか? ……殿方に抱いてもらう……と……」
「あぁ。心も身体も満たされるし、肌艶も良くなるぞ。──ヒロヤも昨夜はお楽しみだったのだろう? 見た感じだが、いつもと身体のキレが違う」
「あははは……」
 
 ギーゼのジト目が肌に突き刺さるよ……
 
 撃ち込み稽古の後に、初歩的な型をいくつか教えて、あとはアスカを相手に『素早く踏み込んでからの抜刀』の稽古をするギーゼ。もちろん、アスカが軽くいなすものの、元々度胸も良く、剣速も悪くはないのでさまになっているようだ。
 
 日が昇り、みんなが起きてくる前にお風呂を済ませる。以前ギーゼが倒れる事があったから、もちろん俺はアスカやギーゼとは別に入った。
 
 ゴージュ、ドワーフ三姉妹、ノリスとロッタが食堂に降りてきて、俺達と一緒に朝食を済ませた。……エルダとメルダからの視線に熱っぽいものを感じたけど、多分気のせいだ。
 
 やがてカズミ、レナ、リズ、マルティナ、ドロシーが一緒に降りてきて笑顔で挨拶したあと、早速お風呂に向かっていった。うん。昨夜は乱暴なえっちしちゃったけど、みんなご機嫌みたいで良かったよ。
 
「全員そろってご機嫌で朝風呂か。──まさかヒロヤ、昨夜は全員相手にしたのか?」
 
 食後の紅茶を飲みながらアスカが驚いた顔をしている。
 
「師匠なら当然ッスよ。恋人全員満足させてこそのハーレム主ッス」
 
 ……このイチャコラバカップルめ。もう少し言葉を選べよみんないるのに。
 そう思いながらも何も言えずに、小さくなって紅茶を飲んでいると、食堂の扉が大きな音を立てて開き、カリナ姉さんが飛び込んできた。
 
「ち、ち、朝食に呼んでくれないなんて……! ひ、酷いですギーゼもひ、ヒロヤも!」
 
 そんなカリナ姉さんをなんとかなだめたけど、機嫌が直ったのはハンナさんの作った朝食プレートを頬張ってからだった。
 
 ■□■□■□■□
 
 朝食後、リズにクランメンバーのクロスボウ納品を頼まれたので急いでお店に戻った。在庫は倉庫に結構な数あったので矢倉弾倉と一緒に馬車に積み込む。……しかし眠い。ちょっとアレでロクに眠れなかったのだ。
 
 寝る前にアルダから『初体験』の話を聞いた時、エルダもメルダも凄く羨ましく感じた。
 メルダは「メルダもヒロくんと誰かの行為を覗いてみたい」なんて言い出しちゃって。アルダみたいに自分の気持ちを確認したいんだって。
 
 ……そりゃエルダも男の子には興味あるし、そろそろ恋人のひとりでも欲しいなとは思ってる。
 お店に来る冒険者や兵士さんが誘って来る時もあるけど、ヒロくんより素敵な男の子なんていないんだよなぁ。
 
 だから……昨夜はヒロくんの寝室を三人で覗きにいったんだ。そして、寝室の扉をそっと開けて……
 そこでエルダ達が見ちゃったのは……綺麗な顔をした逞しい青年に組み敷かれて絶叫にも似た嬌声を上げるドロシーちゃんの姿だった。
 
 ──「いっでる♡ いってましゅ♡ らめ♡ いってるのにぃ♡ また♡ いっちゃうぅぅぅぅぅ♡」
 ──「射精すぞ! 子宮ひらいて中で受け止めろ! 孕め! 孕めドロシー!」
 ──「だめだめだめ!♡ 浩哉さんだめっ!♡ 淫紋が♡ いうこときいちゃうから♡ 孕んじゃいましゅから♡ ほんとに孕んじゃいましゅから♡ 赤ちゃんできちゃいましゅから♡ んぁぁぁぁ!♡ いいけど♡ 孕んでもいいでしゅけど♡ 孕む♡ 孕ませて♡ 浩哉さん♡ 孕ませてぇぇぇぇぇぇ♡」
 
「え……? ドロシーちゃん……浮気……」
「でもドロシーちゃん、『ひろやさん』って……」
 
 エルダもメルダも訳がわからなかった。
 
「……あれ、ヒロくんなんだよ。ちょっと特殊な事情があってさ」
 
 三人で部屋を覗き込みながら、アルダがポツリと呟いた。
 
「「え?」」
 
 ドロシーちゃんを激しく攻めたてる青年をよくよく見ると……確かにヒロくんの面影を感じる事ができた。
 
(それにしても……)
 
「……凄い……あんなに激しくするもんなんだ……♡」
 
 頬を紅潮させたメルダがゴクリと唾を飲む。エルダもそう思った。
 
「ううん。ヒロくん、アルダの初めての時は……その……もっと優しかったよ? ……もちろん『あの姿』のヒロくんじゃなかったけど」
 
 室内での行為を見るアルダとメルダの表情に、心なしか蕩けたような情欲を感じた。多分エルダも同じ様な表情をしているだろう。
 
 体位を変え、何度も何度も絶頂アクメに達するドロシーちゃん。その姿は妖艶であり、どこか美しさまで感じる。
 
「いいな……なんか羨ましいよ……♡」
 
 メルダがポツリと呟く。その手は自然と自分の乳房と下半身へと伸びている。
 
「……うん、いいね。……エルダもあんなふうに……」
 
 しっとりと濡れた股間に手を這わせる。
 
 その時だった。リズの部屋の方からレナちゃんの声が聴こえてきたのは。
 
 ──「ヒロヤくんが! 『エルフの秘薬』を一気飲みしちゃったって!」
 
 ドタドタと音が響き、部屋を出てくる気配がしたので、エルダ達は慌てて部屋の前から離れて階段を駆け上がり、自分達の部屋へと戻った。
 その後、なんとか寝ようと試みたけど……結局、アルダもメルダも、そしてエルダも眠る事が出来ずに朝を迎えたんだ。
 
 ◆
 
(寝不足どころじゃないよね……一睡も出来なかったんだもん)
 
 大きなあくびをしながら、馬車を走らせる。
 
(でも……あんな姿のヒロくん見ちゃったら……)
 
 筋肉質で、スラリとした青年。顔立ちも整っていて、そしてなんといってもあのヒロくんなのだ。
 
(惚れるしかないじゃない……♡)
 
 多分、メルダも同じ様に思ってるだろう。
 
『ヒロくんの恋人になる』
 
 少なくとも、エルダはそう決めた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

終焉の世界でゾンビを見ないままハーレムを作らされることになったわけで

@midorimame
SF
ゾンビだらけになった終末の世界のはずなのに、まったくゾンビにあったことがない男がいた。名前は遠藤近頼22歳。彼女いない歴も22年。まもなく世界が滅びようとしているのにもかかわらず童貞だった。遠藤近頼は大量に食料を買いだめしてマンションに立てこもっていた。ある日隣の住人の女子大生、長尾栞と生き残りのため業務用食品スーパーにいくことになる。必死の思いで大量の食品を入手するが床には血が!終焉の世界だというのにまったくゾンビに会わない男の意外な結末とは?彼と彼をとりまく女たちのホラーファンタジーラブコメ。アルファポリス版

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

流星少年が欲しい、命の精と甘美な躍動

星谷芽樂(井上詩楓)
BL
【全天オデュッセイア・長編うみへび座篇】 88星座を国とした、全天オデュッセイアという世界と、恒星から産まれる星ビト達の様々な愛の物語。 〈全天オデュッセイアの世界観&用語集〉 https://plus.fm-p.jp/u/odu88kitra/free?id=4 【あらすじ】 海蛇国の杣人(木こり)として生きる青年ウクダーの元に、突然謎の美しい少年が現れた。 少年は宇宙を旅する恒星から飛び出し、出会った人の精が欲しいのだと訴える。 しかし精を貰うには、肌を重ねて深く身体を一つにしなければならない。 これは愛する者同士だけに許された行為でもあった。 少年の突然の申し出にウクダーは戸惑い、見知らぬ人と交合に想い悩む。 一方で少年の美しさに心を奪われ、欲望に溺れたい衝動にも駆られる。 なぜ少年は精が欲しいのか、そして少年の正体とは? 一時しか過ごせない少年の為にウクダーが選んだ方法とは……。 真面目で堅物なウクダー×純新無垢な妖精の様な少年ウォラーレ の、期間限定の愛の交わりをぜひご覧下さい♪ ※成人向け描写のお話は(♥)が付きます。 【海蛇国の主な登場人物】 ■ウクダー 海蛇国唯一の杣人(木こり) 森の奥深くに住み、薪を割って生計を立てている。 真面目で物静かな性格。 ウォラーレに出会うまでは他人に一切興味がなかった。 ■ウォラーレ 突然空から落ちてきた謎多き美しい少年。 人形の様に肌も髪も瞳も白く魅惑的だが、性格はとても純粋で明るい。 森の中でうずくまっている所をウクダーに助けられた。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

冷徹王太子の愛妾

月密
恋愛
リヴィエ国の若き国王の妹であるベルティーユは、十二歳の時に敵国であるブルマリウス国に人質として行く事になった。長い戦を終わらせる為の和平条約を結ぶまで、互いに人質交換を取り決めた。リヴィエ国からは王妹であるベルティーユが、ブルマリウス国からは第一王女であるブランシェが人質と選抜された。  それから六年後、ベルティーユは人質の身ではあるがブルマリウス国の第二王子等から温かく迎え入れられ何事もなく平穏に過ごしていた。そして六年の協議の末、間も無く和平条約が結ばれるーー筈だった。その直前、もう一人の人質であるブランシェの訃報が届き事態は急変する。ブランシェの死因は、リヴィエ国王からの陵辱であり、その事に嘆いたブランシェは自ら命を絶ったというものだった。  これまで優しくしてくれていた第二王子のクロヴィスは人が変わったように豹変し、妹の死を嘆き怒り、報復としてベルティーユを陵辱する。更にその後、心身共に衰弱したベルティーユは、今は使われていない古い塔に幽閉された。そこにやはり以前まで優しかった筈の第三王子ロランが現れ、ベルティーユの処刑が決まった事を告げる。それから数日後の処刑執行の朝、ベルティーユを迎えに来たのは……冷酷非道と名高いブルマリウス国の王太子のレアンドルだった。そして彼は「これより君は俺の妾だ」そうベルティーユに告げた。

処理中です...