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117話「張り切るアルダ」

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「……まだ寝てるんじゃないかな……」
「だな……アタイのこれも、かなり無理して作ってくれたみたいだし」
「まぁ……護衛任務ですし、わたしはこの格好のままでも」
「でも、流石にちょっと危ないかも」

 ドロシーの新鎧を受け取りに、三姉妹の鍛冶屋まで来たは良いが……なんか入りづらい。昨日の彼女達(特にアルダ)の疲労ぶりを思い出したからだ。

「マルティナの言う通り、その村娘然とした格好じゃキツくねぇか?」

 ドロシーも革鎧を破損していたので、いつもの村娘の服装に、外套を羽織った格好なのだ。

「今回のわたしの役目は、長弓と魔術による後方支援と想定してます。なので問題はないかと──」
「おはよぉ!早く入んなよ!」

 突然、目の前の扉が開き、鎧姿のアルダが元気に飛び出してきた。

「お、おはよう。……ってアルダ、その格好……」
「自分のも作ったんだ。どう?似合ってる?」

 腰を捻ってウインクするアルダ。リズと同じデザインの新しい鎧。透明なアンダーウェアなので、各防具パーツ以外の箇所が露わで……うん。ちびむちのドワーフの身体でこれ装備しちゃうとかなり危険だ(性的に)。

「今回も……付いてくるのか?」

 店内に案内されながらリズが呆れた顔で聞く。

「なんか、ドロシーちゃんのを作ってる間にテンション上がっちゃってね……そのまま自分のも作っちゃった」

 俺達に椅子をすすめて、お茶を淹れてくれる。店内は、先程まで作業していたのか、奥の工房から立ち昇る熱気で暑いぐらいだ。

「あぁ……ワーキングハイってやつかな?」

 俺も前世で残業続きだった時によくテンションが上がったっけ。

「……さぁ……なんでだろうね?」

 俺を見つめるアルダの頬が赤く染まる。

「あ、ドロシーちゃんこっち来て。新しい鎧の説明と装着したげるから。マルティナちゃん!手伝って!」

 アルダはドロシーとマルティナの手を取って、工房へと姿を消した。

「……ふーん……」
「どうしたのリズ?」
「ありゃ本格的にヒロヤに好意持っちゃってるね」

 隣に座るリズが、俺を肘で小突いてくる。

「え?」
「ほんと……罪な男だよ……」

 急に艶っぽい表情で俺を見つめるリズ。

「なん……だよ?」
「いや……アタイの惚れ込んだ男だから……仕方ないよな……んちゅ♡」

 いきなり俺の頭を押さえつけて口づけをする。

「だめだよ他人ひとで……」
「いいじゃん……今誰も見てないんだからさ……♡」

 俺の首筋にさわっと指先で触れ、顎先に舌を這わせる。

「んんん……リズはホントに俺を誘惑するの上手いよね……」

 触って反撃したいけど、パーツ箇所以外は露わに見えるけど、透明なボディースーツに覆われている。
 俺はリズのうなじに手を回し、唇を奪う。

「んちゅぅ……♡ 情熱的なヒロヤ……大好きだ……よ……ひゃうん♡」

 指でそっと耳を撫でる。

「ひょこ♡ らめ……ら……♡ ひゃっ♡ じゅむ♡ じゅる♡ じゅるんっ♡」

 リズの舌を蹂躙して、その表情が熱っぽく蕩けだしたところで……ソファーの向こう側でこちらを見つめる二人に気がついた。

「ヒロくん……凄い……リズさんが蕩けきってるよ……」
「迫ってたのはリズちゃんなのに……ヒロくんヤバい……」

 小さく囁きあう声が聞こえたのか、リズも俺の唇を貪りながらそちらに視線を移し……そして固まった。

「エルダ……メルダ……」
「あ、気にせず続けてくださいよ」
「メルダもその先が見たいんだよね」
「ご……ごめん!その、居るなんて思わなくて……」

 と言い訳する俺は、唇こそ離したものの、リズの頭を抱いたままの姿勢だ。なんの説得力もない。

「流石に疲れちゃってさ……ソファーの向こう側でぶっ倒れちゃってたんだよね」

 ソファーを乗り越えて、メルダが傍にきた。

「あれだけフェロモンむんむんで迫ってたリズさんが、ソッコー蕩け顔で堕ちちゃうんだもん。ヒロくんのキスって魔術かなんかなの?」

 同じくエルダも傍に寄ってくる。

「ちょ!お前らアタイのヒロヤに引っ付くんじゃねぇよ!」

 押しのけられたリズが割って入る。

「メルダも試してみたいなぁ」
「エルダも……」

 そんなリズを二人は片手で押さえ込んで迫ってくる。女の子とはいえ、流石はドワーフ。膂力が凄え。そして、冗談とは思えない二人の熱っぽい表情……

「こらっ!アンタ達、ヒロくんに何してんのよ!」

 工房の扉で、アルダが仁王立ちで二人を睨んでいた。



「まったくアンタ達は……飢えた狼じゃないんだから……」

 ソファーに並んで正座するエルダとメルダを、呆れたように見るアルダ。

「……アルダほどじゃないし……」
「メルダ知ってるんだよ……昨日寝てる時、ヒロくんとのエッチな夢見てたでしょ?」
「!」

 ぼんっ!と音を立てるように真っ赤になるアルダ。

「ばばばばばばばっかじゃないの?そそそそそそんな夢見てませんっ!」
「寝言で言ってたよ……『そこ♡ ヒロくん♡ そこがいいのっ♡』って」
「毛布抱き締めて、キス顔しながら笑ってたしね」
「そんな事言ってませんし、そんな事してません!」
「だから張り切ってたんだよね♡ ドロシーちゃんの鎧作るの♡」
「うるさい!朝までに完成させるのに必死だったのっ!」
「その割には、自分の作る余裕あったじゃん」

 エルダとメルダに揶揄われ、ムキになって言い訳するアルダ。そんな三人を茶を啜りながら見ている俺達。
 マルティナが俺の腕を取って胸に抱き締めてるのは……取られるとでも思ってる?

「そ、そんな事より、ドロシーの新しい鎧も凄いよね!」

 収拾がつかなくなる前に、なんとか話題を振って話を逸らそう。

「凄くフィットして軽いです。それに結構露出が……♡」

 顔を赤らめて、その場でターンしてみせるドロシー。スカートがフワッと舞って、股部分のパーツとむっちりとした太腿がチラリする。
 そして、こちらを向いてポーズを取る。凄い。綺麗。そしてエロい。胸パーツはドロシーのサイズに合わせてバンッ!と張り出していて、そこから続く細いウエストは透明のボディースーツのせいでヘソ見せ。その下に少し顔を出している淫紋の一部。そしてまたバンッと張り出したお尻。良い。

「ちょっとドロシーちゃんが装着すると……刺激的すぎるよね……」
「でも、コンセプト通りの『エロ可愛さ』だよ?」
「リズも大人の女な雰囲気が倍増してるし。概ね正解かもね。マルティナちゃんのも次作ってあげるね」

 三人は揉めていたのも忘れ、腕を組んで頷きあっている。

「それで……今回はアルダが同行すんのかい?」
「これだけ張り切って仕事したから、仕方ないよね」
「うん。今回はアルダに譲ったげるよ」
「そういう事で、アルダが行くね♡ みんなよろしく♡」

 そう言ってポーズを取るアルダ。……うん。アルダのも充分可愛いエロいよ。なんせちびグラマードワーフだし。



「じゃあ行きましょうか!」

 アルダが芦毛の愛馬に騎乗する。

「よし、んじゃアタイが先導するよ」

 みんな騎乗する。俺もハヤに跨ろうとしたところで、エルダとメルダが外套の裾を掴んだ。

「?」
「アルダ……ヒロくんに襲いかかるかもだから……気をつけてね。夢に見るくらいだから……」
「もしその気があるんだったら……優しくしてあげてね?」
「!」
「「ね?」」
「……わかった。想いを寄せられてるんだとしたら、無下にはできないよ……」
「それでこそヒロくんだ!」
「メルダ達も……そのうち……期待してるよ?」
「じ、じゃあ行ってくるね!」

 かなり動揺しつつも、俺はリズ達を追ってハヤに拍車を掛けた。
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