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92話「ダンジョン探索前夜の相談事」(視点・ヒロヤ→ドロシー→カズミ→ヒロヤ→カズミ)

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「れな、せっかくだからお家でお昼食べてから宿に向かうね!」

 ギルドを出て、レナは手を振って治療院へと走っていく。

「ほんと、お家が好きだよなレナは」
「いや、俺達まだ子供なんだからそっちの方が普通だからね?」
「そういやそっか。いや、アンタ達どうも子供だと思えなくてさ」

 そう言って、いつもの人懐っこい笑顔を見せるリズ。

「だから……アタイはそんなアンタにベタ惚れなんだけどね……」

 笑顔から一変、妖艶な微笑みで耳元に囁きかける。

「リズ!?」

 こんな昼間から誘いを掛けるような仕草をするリズを、俺は少し睨みつける。
 そんな俺からの視線を、リズはニヒヒと笑って受け流す。

「……まぁ、レナは両親と離れてる時間が長かったのもあってね……だから、一緒に居られる時は両親と過ごさせてあげたい」

 レナの正体に触れない程度に事情を説明する。

「そっか……そんなだったら余計甘えたいんだろうね」

 リズはレナが走っていった治療院に目をやる。

「だね……」
「じゃあ……アタイも宿に着くまでは甘えていいかい?」

 リズが俺に腕を絡める。

「……宿までね」
「やたっ!」

 グイグイとその胸を俺の腕に押し付ける。

「あと……そろそろさ──抱かれたいんだ……」

 周りを確認する様にキョロキョロしたあと、俺の首筋に軽くキスするリズ。

「カズミもそろそろ我慢の限界っぽいんだよね。ドロシーも10日以上欲情してないらしいし。リズはその後かな?」
「えー!そりゃ切ねえよ……」
「リズはずるいんだよ。……いつも二人になったらこんなふうに迫ってくるんだもんな……」

 俺はそんなリズから視線を外す。「俺だって我慢できなくなっちゃうよ……」と小さく呟いてから。
 そんな呟きをリズが聞き逃す筈もない。ぱあっと笑顔になったかと思うと、俺を後ろから抱き締めて、身体全部を押し付けてくる。

「じゃあさ……カズミやドロシーが何も言ってこなかったらさ……今夜アタイと……な?」
「……こんなにその気にさせられちゃ……断れないよ」

 頭を逸して、リズのほっぺにキスをする。

「っていうか、ほんとにずるいのは俺だよな……」
「?」
「女の子の方からこんな事言わせちゃうんだから。こういう事は男の俺からちゃんと誘わないと……な……」
「ヒロヤっ♡」

 一段と身体を押し付け、力いっぱい抱き締めてくるリズ。

「やっぱりアンタ……イイ男だよ。もう、アタイの全部あげるからな!」

 そう言うリズの笑顔を見ると、やっぱりリズは素敵な女の子だと改めて思うよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

(そろそろ……お薬を飲んでおきましょうか……)

 ルドルフ先生に処方された『情欲を抑える薬』について、最近気が付いた事がある。

(こうやって、ヒロヤさんと少し離れている時に飲んでおけば、会った時に溢れてくるだろう『情欲』を抑える効果があるんですよね)

 過去、何度か『情欲』が溢れた時に飲んでみたが、効き目は無かった。

(初めて抱かれて……ヒロヤさんに淫紋を定着して頂いた時から約二週間。なんとか薬で抑える事ができてますしね)

 粉薬を口にし、水で流し込む。これで今日も大丈夫な筈だ。ただ──

(淫紋の力や身体が求めてるとかじゃなく……心から抱かれたいと思ってるわたしが存在しているんですよね……)

 人狩りから救ってくれて、凍てつく雪の中暖めてくれて、オットーという卑劣な男からも守ってくれた。

(ようやくヒロヤさんのものになれたのです。そういう気持ちになるのも……無理はありませんよね……)

 今夜、情欲に溺れる事なく……あの人に抱いてもらおうか……そう考えただけで、アソコがしっとりと濡れてしまうのは……淫紋のせいでは無いだろう。

(あっ)

 淫紋が優しく輝き、そしてほんのりと温かくなる。

(ヒロヤさんが帰ってきた……♡)

 それをこの身で感じる事ができるのが凄く嬉しい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ハンナさん達とお昼ご飯の支度を済ませ、ヒロヤとリズの帰りを待つ。
 今朝、ヒロヤの家にハンナさんの件で伺った時、思わず結婚の報告をする妄想が頭にちらついた。
 実は、パパとママには既に伝えてある。

「ヒロヤと結婚する」

 と。
 最初は子供が言う戯れ言と笑って受け止めていた様子だったが、その後も真剣にヒロヤへの想いを伝え続けたママには本気だと伝わっている。
 パパは、ヒロヤに剣術の指南をするうちに

「カズミの亭主はヒロヤくんしか居ない」

 という考えになっているのでオールおっけーである。
 何故、ここまでヒロヤとの結婚を両親に訴え続けたかというと。
 パパは騎士。なので、貴族とはいえ『騎士ナイト爵』と呼ばれる一代限りの貴族位。
 わたしに貴族としての生活を与えるつもりなら、恐らく他家の爵位の高い貴族から縁談話を受けるだろう。それをさせない為の予防線だったのだ。前世でおかしな縁談受けちゃったからね。
 せっかくヒロヤと両想いなのに、高位貴族からの縁談で引き裂かれるなんて想像もしたくない。
 まぁ、ヒロヤパパも男爵で領地持ちだからミュラー家としても断る理由はないんだよね。
 とか、打算的な事考えてるけど……根本にあるのはもちろん『前世からの浩哉ヒロヤへの想い』だからね?
 っていうか、こっちの世界でヒロヤと一緒にいればいるほど、この想いは強くなる。もう好き過ぎておかしくなりそうなぐらいヒロヤが好き。

(だから……そろそろ……)

 ようやくヒロヤに抱かれたあの夜から随分経った。そろそろ……また……いいよね……?
 野性的な魅力があるリズの身体、オスを発情させるほど魅力的に実るドロシーの身体、そして淫紋。特にその淫紋は本当に羨ましく思う。

(ヒロヤに……隷属する……)

 そう考えただけで、心も身体も熱くなる。
 そんな二人を抱いた後でも、この未成熟な私の身体にヒロヤは欲情してくれるのだろうか?
 そんな心配を振り払いたいのもある。だから……

(早くまたヒロヤに……)

 そう考えると、未成熟でありながらもヒロヤのアレを求めるようにアソコが濡れてしまう。

(今夜……いいよね……?)

 そろそろヒロヤを求めてもいいよね?

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ハンナさん、カズミ、マルティナ、ドロシーが協力して準備したというお昼ご飯は、とても美味しかった。
 ハンナさんにも笑顔が戻り、食欲も少し回復したようでほっとした。ただ、カズミとドロシーの顔が赤いのは気のせいか?

「二人とも大丈夫?少し疲れた?」

 食後の片付け中に声を掛けてみたが、二人とも平気だという。熱も無いみたいなので、俺の気のせいか……

「明日はダンジョン探索なんだから、ちゃんと身体を休めとかないと」

 そう声を掛けておいたが、リズも顔が赤いからと、カズミ、ドロシーは「少し休む」とリズを連れて寝室へと入って行った。

(リズの赤いのは、今夜の期待でなんだろうけどさ……)

 まぁ、今の間に休んでおくのは悪く無い。俺はキッチンで洗い物をするハンナさんとマルティナの、まるで仲の良い姉妹の様な後ろ姿を眺めながらお茶を啜った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ひょっとして……今夜……狙ってる?」
「……そろそろ……情欲が抑えられなくなりまして……」
「ア、アタイは……その……カズミとドロシーが求めなければ……抱かれたいかなぁって……」

 三人の気分がブッキングしちゃったか。
 お昼ご飯の時、ドロシーとリズがやけに熱っぽい表情してるなぁとは思っていた。ヒロヤは私とドロシーの心配をしていたので、私も同じような様子だったんだろう……少し恥ずかしい。

「ヒロヤ、リズの熱っぽい表情には何も言わなかったよね……」
「……ひょっとして……二人で約束してました?」

 私とドロシーの追及に、少したじろぐリズ。

「だからさ、さっきも言ったように『カズミとドロシーが求めなければ』だよ……カズミはアタイ達の事優先して……もう長い事……その……抱かれてなかったろうし、ドロシーもそろそろ……情欲が抑えられないだろうし……」

 モジモジと話すリズ。可愛い。

「だ、だから!二人が優先で……アタイは後回しでいいんだ!きっ、気にしないでくれ!」
「そういう訳にはいかないよリズ。ね?ドロシー?」
「ですね。……ヒロヤさんとお約束したんでしょうし、わたしの主様が約束を違えるような事をさせる訳にはまいりません」

 ドロシーも微笑んでリズにそう答える。

「だ、大丈夫だから。ヒロヤ言ってたんだ。『女の子から誘わせる様な事させちゃだめだ。こういう事は男の俺からちゃんと誘わないと』みたいな事をさ。だから、ヒロヤから誘われるまで……大丈夫だ……」
「なるほど。確かにこういう事はヒロヤさんから誘うべきですよね」
「ほんとそう。こんな美少女三人が……誘う方なんておかしいもんね」

 ドロシーに全面同意。

「だから……ちゃんとヒロヤに責任取ってもらいましょうよ」
「「責任?」」

 ドロシーとリズが首を傾げる。

「……三人同時っていうのは……まだ……その……恥ずかしいから……今夜交代で愛して貰いましょうよ!」

 決めた。明日はダンジョン探索だけど、ちょっとヒロヤに体力使って貰おう。

「……大丈夫かなヒロヤの体力……」
「『浩哉さんの力』解放してくれれば大丈夫だと思いますよ?」

 心配そうではあるが、期待に顔を上気させているリズに、ドロシーがあっけらかんと答える。

「まぁ、戦う時みたいに無茶な身体の使い方はしないから後遺症も無いだろうけど……私はまだアレは受け入れられない……と思う……」
「私は平気です」
「アタイはアレを経験したい!」
「じゃあ、私最後でいい?落ち着いてからなら『ヒロヤ』に抱いて貰えるだろうし」
「一番手はドロシーで頼むわ。アタイは……心とアソコの準備が……」
「分かりました。ではわたしが一番手で」
「……早くレナの『疑似淫紋』出来ないかな……」

 思わずこぼれた呟きに、リズが大きく頷いた。

「よし、じゃあ決まりね。それで、今夜の段取りはね……」

 私はリズとドロシーの三人で今夜の企みを相談した。
 
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