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9話「挑発」
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「うわっ!お店がいっぱい!」
レナの治療院を曲がった先が中央広場になってるんだが、そこに様々な屋台が並んでいた。
そこで冒険者、兵士、村の人が買い物をしている。
大声を上げたカズミが、早速いい香りのする屋台へと走っていく。
「ねぇねぇ!お肉の串焼きだよ!美味しそう!」
俺とレナを手招きする。
「今食べたら晩御飯食べれなくなるよ」
そう言いながら屋台へと向かったが、これは確かに食欲をそそる香りだ。
「ワイルドボアの肉ね。あなた達の世界だと……イノシシ?」
レナが耳元で教えてくれた。
「ヒロヤも稽古でお腹空いたんじゃない?」
「そりゃ空いたけど……カズミが食べたいだけだろ?」
ポケットにおこづかいの入った巾着は持ってる。確か銅貨20枚ほど入ってたはずだ。
値段を見ると……1串3切れ刺さってて銅貨5枚。
「1本50円ってとこかしら」
レナが俺達の分かる貨幣価値で教えてくれる。
1小銅貨が1円、1銅貨10円らしい。ふむ。分かりやすい。
「よし。俺が奢るよ。1本ずつ食べる?」
「食べたいけど……流石に1本食べちゃうと晩御飯やばいね……」
「れなも1本は無理っぽい……」
確かに肉一切れの大きさはなかなかのものだ。今の俺達だと3~4口ぐらいか。ひと口では無理だ。
「じゃあ1本を三人で分けようか。おばさん!1本下さい」
「まいど!みんなで分けるのかい?じゃあ一切れずつにしてやろうかね」
そう言って網の上の1串にタレを塗り、器用に串の肉をばらす。
それぞれに短い串を刺して、ひとつずつ木の皮に乗せて手渡してくれた。
「はい。5万銅貨ね」
あれだ。『はい50万円』っていうお店のおばちゃんだ。
「高いよ!」
笑いながら巾着から銅貨5枚を出して手渡した。
受け取ったお肉はすごく美味しそうな匂いがした。
「ありがとう!」
俺達は広場にある椅子に向かった。
「毎度あり!落とすんじゃないよ!」
「ヒロヤくん、ありがとね」
「ヒロヤ、はい。あーん」
カズミが自分の串焼きを俺の口元に持ってくる。
きたか。主任お得意の『あーん』。前世でもよくこれでからかわれた。
「いや、主任……自分で食べてくださいよ」
つい前世を思い出し、当時の返しそのまんまで答えてしまった。
「あれ?なんで食べれないのかな?私はもうヒロヤの上司じゃないし、年上でもない。ましてや人妻でも無いんだから遠慮する事ないよ?ほら、あーん♪」
いやまぁそうだけど。
「わかった。あーん……」
目の前に差し出された串焼きをひと齧りする。
「うんまっ!」
肉と脂身のバランスがいいのか、意外と柔らかくて甘辛いタレも良い。
「じゃあ私も!あーん……」
はいはい。
俺は自分の肉をカズミに差し出す。
「はむ……美味しっ!もっと臭みがあるかと思ったけど、全然そんなこと無いね!」
カズミは両手を頬に当て、幸せそうにもぐもぐしてる。
「………………」
ふとレナを見ると、恍惚の表情でヨダレまで垂れてますよ!
「レナ、6歳の女の子がそんな顔しちゃだめ」
「いやもう尊み政権樹立ってやつ……」
この恋愛ものオタク女神め。
「レナ、食べないの?あーんしてあげようか?」
カズミが俺のかじった串焼きをレナに差し出す。
「れなもうお腹いっぱい」
「そうなの?食べられない?」
「いや、多分そっちのお腹いっぱいじゃないと思うよ……」
「うん。お腹は空いてる。尊みでいっぱい」
そう言いながら、レナは差し出された串焼きにかぶりついた。
「うん!美味しいね!お肉も尊みもごちそうさまです」
この女神様あかん……
「なんだよヒロヤ、おまえ放課後も女と遊んでるのかよ」
……ジャンだ。同級生三人と女の子ひとりを侍らせている。
「お前も女の子連れてんじゃん」
ジャンに目線もくれてやらないまま、串焼きを頬張る。
「コイツは俺の妹だよ。俺はお前みたいになよなよしてねぇし」
「ふーん」
「なぁお前、俺と勝負しないか?」
ジャンがニヤリと笑う。
「村はずれに『幽霊屋敷』があるんだけどさ……」
広場から少し離れた路地でジャン達と相対する。
「そこで肝試しするんだよ」
「くだらねぇ」
俺はカズミとレナを連れて広場に戻ろうとしたが、カズミは『幽霊屋敷で肝試し』に興味を持った様子。あかん。
「怖いのかよ。だらしねぇな」
「全然怖くないんですけど?寧ろ楽しそうなんですけど?」
カズミが振り返ってジャンを睨みつける。
「じゃあ決まりだな。明日の夜、村はずれの幽霊屋敷に集合な」
「わかったよ。まぁ幽霊がそこに居ようが居まいが全くどうでも良いけどな」
カズミが挑発に乗ったから受けざるを得まい。
「あそこは本当に居るんだよ」
ジャンが意味ありげに笑う。
「さっきギルドで駆け出し冒険者のパーティーが騒いでたんだよ。『仲間のシーフが行方不明になった』ってな。あれは間違いなく幽霊屋敷に食われたんだよ」
「ひとりで幽霊屋敷に行ったのか?そのシーフは」
しまった。ちょっと興味惹かれちまった。
「夜、仲間で酒飲んで宿に帰る時に、そいつだけ『酔いを醒ましてくる』って村はずれの方に歩いて行ったらしいぜ」
……ふむ。それは気になるな。
「当然探しに行ったんだろ?その仲間の事」
「あぁ。朝になっても宿に帰って来てないから探したらしい。幽霊屋敷も調べたらしいけど誰も居なかったって」
ジャンの話を聞いて、カズミとレナを見てみると……あかん。二人とも興味津々だわ。
「明日の夜かぁ。次の日学校休みだけど、家を抜け出すのが大変だな」
昔は俺も良く家を抜け出して友達と夜の探検とかしたもんだが。まぁ俺はなんとかなるとしても……
チラッとカズミとレナを見ると、二人とも俺を見て頷く。え?夜抜け出しちゃうの?
「夜1時に幽霊屋敷集合だ。逃げんなよ」
とりあえずジャンから村はずれの幽霊屋敷の場所を聞いてから別れた。
「ふふふ。肝試し」
カズミがにやけてる。
「本当に幽霊だとしても、れな『浄化』の魔術使えるし大丈夫だよ」
「でも本当にモンスターや魔物が居たら、俺達だけだとヤバいかもよ」
「それもれなに任せて。屋敷ぐらいなら『探知』でモンスター居るかどうか判るから。もし居たら兵舎に連絡しようよ」
「だね。……まぁその時は家抜け出した事バレて怒られるだろうけど」
「子供は大人に怒られてなんぼだよ」
カズミ、肝座ってんな……
「まぁ、どうせジャン達が俺達を怖がらせようと何か仕込んでるだけだと思うけどね」
「うん。れなもそう思う」
「でしょうね。平気な顔して肝試しクリアしてやりましょうよ」
これは俄然楽しみになってきた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「あいつら、絶対ビビらせてやるからな……」
俺はとにかくヒロヤが嫌いだ。
ただでさえ俺の親父は『領主様は凄い。坊っちゃん達もきっと立派になる。ジャンも見習うんだぞ』ってうるせぇんだ。
元々は冒険者で、怪我して引退したところを領主様に呼ばれて、この村のギルド出張所を任された親父。『領主様は俺ら冒険者の憧れだ』ってよ。
ヒロヤみたいな奴のどこが立派になるんだよ。いつも女とつるんでるような奴が。
それに連れてる女ってのが、クラスで1番可愛いんじゃねえかってぐらいのレナと、初めて見て俺が一目惚れしちまったカズミ。
「クソ生意気な奴だぜ」
幽霊屋敷とはいえ、そこには何も居ない事を俺達は知ってる。
何度か冒険者が調べに行って何も無かった事が報告されてるんだ。
だから、俺が仲間を仕込んでアイツらを怖がらせてやる。
ヒロヤがビビりまくって、カズミやレナに愛想尽かされるならザマァだ。
そこで俺の肝っ玉の太さをあの娘たちに見せつけてやるんだ。
「お前ら、明日の夜はうまいことやれよ」
俺は仲間に念押しした。
「ジャン、その……行方不明のシーフって話は……」
身体は細く、背ばかり高いランツが聞く。
「あぁ、あれはホントの話だ。でもまぁ幽霊屋敷は無関係だぞ。仲間の冒険者や他のパーティーも調べて何も無かったらしいし。なんだよ、お前がビビってどうするんだよ」
「いやビビってねぇし」
コイツには屋敷の中に潜んでの『脅かし役』をやらせる予定だ。
ひとりじゃ怖がるだろうけど、妹のアリサを組ませれば、アリサの事が好きなランツは見栄を張って怖がる事なく役を全うするはずだ。
「兄ちゃん、さっきの女の子達可愛かったね。男の子もなんかカッコよかったよ」
ひとつ下の妹アリサが微笑む。
「そうでもねぇよ!アイツが肝試しで腰抜かすところを見たらアリサも幻滅するさ」
アリサの事が好きなランツがやる気になった。
「でも……こういうのあんまり良くないよ?」
「お前、怖いのとか好きだろ?あの幽霊屋敷に入れるんだぞ?」
「うん!それは楽しみ!」
我が妹ながら、コイツの怖いもの知らずにはちょっとビビる。
「俺も『脅かし役』やりたいな。なんかあいつらマジでビビらせたい」
ちびのガズラが手を挙げた。
「そうだな……じゃあ俺とマッシュが屋敷の外であいつらの相手するわ。いいなマッシュ」
デブのマッシュが頷く。
「へっ、楽しくなってきたぜ」
ヒロヤめ。自分の情けなさを思い知らせてやる。
レナの治療院を曲がった先が中央広場になってるんだが、そこに様々な屋台が並んでいた。
そこで冒険者、兵士、村の人が買い物をしている。
大声を上げたカズミが、早速いい香りのする屋台へと走っていく。
「ねぇねぇ!お肉の串焼きだよ!美味しそう!」
俺とレナを手招きする。
「今食べたら晩御飯食べれなくなるよ」
そう言いながら屋台へと向かったが、これは確かに食欲をそそる香りだ。
「ワイルドボアの肉ね。あなた達の世界だと……イノシシ?」
レナが耳元で教えてくれた。
「ヒロヤも稽古でお腹空いたんじゃない?」
「そりゃ空いたけど……カズミが食べたいだけだろ?」
ポケットにおこづかいの入った巾着は持ってる。確か銅貨20枚ほど入ってたはずだ。
値段を見ると……1串3切れ刺さってて銅貨5枚。
「1本50円ってとこかしら」
レナが俺達の分かる貨幣価値で教えてくれる。
1小銅貨が1円、1銅貨10円らしい。ふむ。分かりやすい。
「よし。俺が奢るよ。1本ずつ食べる?」
「食べたいけど……流石に1本食べちゃうと晩御飯やばいね……」
「れなも1本は無理っぽい……」
確かに肉一切れの大きさはなかなかのものだ。今の俺達だと3~4口ぐらいか。ひと口では無理だ。
「じゃあ1本を三人で分けようか。おばさん!1本下さい」
「まいど!みんなで分けるのかい?じゃあ一切れずつにしてやろうかね」
そう言って網の上の1串にタレを塗り、器用に串の肉をばらす。
それぞれに短い串を刺して、ひとつずつ木の皮に乗せて手渡してくれた。
「はい。5万銅貨ね」
あれだ。『はい50万円』っていうお店のおばちゃんだ。
「高いよ!」
笑いながら巾着から銅貨5枚を出して手渡した。
受け取ったお肉はすごく美味しそうな匂いがした。
「ありがとう!」
俺達は広場にある椅子に向かった。
「毎度あり!落とすんじゃないよ!」
「ヒロヤくん、ありがとね」
「ヒロヤ、はい。あーん」
カズミが自分の串焼きを俺の口元に持ってくる。
きたか。主任お得意の『あーん』。前世でもよくこれでからかわれた。
「いや、主任……自分で食べてくださいよ」
つい前世を思い出し、当時の返しそのまんまで答えてしまった。
「あれ?なんで食べれないのかな?私はもうヒロヤの上司じゃないし、年上でもない。ましてや人妻でも無いんだから遠慮する事ないよ?ほら、あーん♪」
いやまぁそうだけど。
「わかった。あーん……」
目の前に差し出された串焼きをひと齧りする。
「うんまっ!」
肉と脂身のバランスがいいのか、意外と柔らかくて甘辛いタレも良い。
「じゃあ私も!あーん……」
はいはい。
俺は自分の肉をカズミに差し出す。
「はむ……美味しっ!もっと臭みがあるかと思ったけど、全然そんなこと無いね!」
カズミは両手を頬に当て、幸せそうにもぐもぐしてる。
「………………」
ふとレナを見ると、恍惚の表情でヨダレまで垂れてますよ!
「レナ、6歳の女の子がそんな顔しちゃだめ」
「いやもう尊み政権樹立ってやつ……」
この恋愛ものオタク女神め。
「レナ、食べないの?あーんしてあげようか?」
カズミが俺のかじった串焼きをレナに差し出す。
「れなもうお腹いっぱい」
「そうなの?食べられない?」
「いや、多分そっちのお腹いっぱいじゃないと思うよ……」
「うん。お腹は空いてる。尊みでいっぱい」
そう言いながら、レナは差し出された串焼きにかぶりついた。
「うん!美味しいね!お肉も尊みもごちそうさまです」
この女神様あかん……
「なんだよヒロヤ、おまえ放課後も女と遊んでるのかよ」
……ジャンだ。同級生三人と女の子ひとりを侍らせている。
「お前も女の子連れてんじゃん」
ジャンに目線もくれてやらないまま、串焼きを頬張る。
「コイツは俺の妹だよ。俺はお前みたいになよなよしてねぇし」
「ふーん」
「なぁお前、俺と勝負しないか?」
ジャンがニヤリと笑う。
「村はずれに『幽霊屋敷』があるんだけどさ……」
広場から少し離れた路地でジャン達と相対する。
「そこで肝試しするんだよ」
「くだらねぇ」
俺はカズミとレナを連れて広場に戻ろうとしたが、カズミは『幽霊屋敷で肝試し』に興味を持った様子。あかん。
「怖いのかよ。だらしねぇな」
「全然怖くないんですけど?寧ろ楽しそうなんですけど?」
カズミが振り返ってジャンを睨みつける。
「じゃあ決まりだな。明日の夜、村はずれの幽霊屋敷に集合な」
「わかったよ。まぁ幽霊がそこに居ようが居まいが全くどうでも良いけどな」
カズミが挑発に乗ったから受けざるを得まい。
「あそこは本当に居るんだよ」
ジャンが意味ありげに笑う。
「さっきギルドで駆け出し冒険者のパーティーが騒いでたんだよ。『仲間のシーフが行方不明になった』ってな。あれは間違いなく幽霊屋敷に食われたんだよ」
「ひとりで幽霊屋敷に行ったのか?そのシーフは」
しまった。ちょっと興味惹かれちまった。
「夜、仲間で酒飲んで宿に帰る時に、そいつだけ『酔いを醒ましてくる』って村はずれの方に歩いて行ったらしいぜ」
……ふむ。それは気になるな。
「当然探しに行ったんだろ?その仲間の事」
「あぁ。朝になっても宿に帰って来てないから探したらしい。幽霊屋敷も調べたらしいけど誰も居なかったって」
ジャンの話を聞いて、カズミとレナを見てみると……あかん。二人とも興味津々だわ。
「明日の夜かぁ。次の日学校休みだけど、家を抜け出すのが大変だな」
昔は俺も良く家を抜け出して友達と夜の探検とかしたもんだが。まぁ俺はなんとかなるとしても……
チラッとカズミとレナを見ると、二人とも俺を見て頷く。え?夜抜け出しちゃうの?
「夜1時に幽霊屋敷集合だ。逃げんなよ」
とりあえずジャンから村はずれの幽霊屋敷の場所を聞いてから別れた。
「ふふふ。肝試し」
カズミがにやけてる。
「本当に幽霊だとしても、れな『浄化』の魔術使えるし大丈夫だよ」
「でも本当にモンスターや魔物が居たら、俺達だけだとヤバいかもよ」
「それもれなに任せて。屋敷ぐらいなら『探知』でモンスター居るかどうか判るから。もし居たら兵舎に連絡しようよ」
「だね。……まぁその時は家抜け出した事バレて怒られるだろうけど」
「子供は大人に怒られてなんぼだよ」
カズミ、肝座ってんな……
「まぁ、どうせジャン達が俺達を怖がらせようと何か仕込んでるだけだと思うけどね」
「うん。れなもそう思う」
「でしょうね。平気な顔して肝試しクリアしてやりましょうよ」
これは俄然楽しみになってきた。
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「あいつら、絶対ビビらせてやるからな……」
俺はとにかくヒロヤが嫌いだ。
ただでさえ俺の親父は『領主様は凄い。坊っちゃん達もきっと立派になる。ジャンも見習うんだぞ』ってうるせぇんだ。
元々は冒険者で、怪我して引退したところを領主様に呼ばれて、この村のギルド出張所を任された親父。『領主様は俺ら冒険者の憧れだ』ってよ。
ヒロヤみたいな奴のどこが立派になるんだよ。いつも女とつるんでるような奴が。
それに連れてる女ってのが、クラスで1番可愛いんじゃねえかってぐらいのレナと、初めて見て俺が一目惚れしちまったカズミ。
「クソ生意気な奴だぜ」
幽霊屋敷とはいえ、そこには何も居ない事を俺達は知ってる。
何度か冒険者が調べに行って何も無かった事が報告されてるんだ。
だから、俺が仲間を仕込んでアイツらを怖がらせてやる。
ヒロヤがビビりまくって、カズミやレナに愛想尽かされるならザマァだ。
そこで俺の肝っ玉の太さをあの娘たちに見せつけてやるんだ。
「お前ら、明日の夜はうまいことやれよ」
俺は仲間に念押しした。
「ジャン、その……行方不明のシーフって話は……」
身体は細く、背ばかり高いランツが聞く。
「あぁ、あれはホントの話だ。でもまぁ幽霊屋敷は無関係だぞ。仲間の冒険者や他のパーティーも調べて何も無かったらしいし。なんだよ、お前がビビってどうするんだよ」
「いやビビってねぇし」
コイツには屋敷の中に潜んでの『脅かし役』をやらせる予定だ。
ひとりじゃ怖がるだろうけど、妹のアリサを組ませれば、アリサの事が好きなランツは見栄を張って怖がる事なく役を全うするはずだ。
「兄ちゃん、さっきの女の子達可愛かったね。男の子もなんかカッコよかったよ」
ひとつ下の妹アリサが微笑む。
「そうでもねぇよ!アイツが肝試しで腰抜かすところを見たらアリサも幻滅するさ」
アリサの事が好きなランツがやる気になった。
「でも……こういうのあんまり良くないよ?」
「お前、怖いのとか好きだろ?あの幽霊屋敷に入れるんだぞ?」
「うん!それは楽しみ!」
我が妹ながら、コイツの怖いもの知らずにはちょっとビビる。
「俺も『脅かし役』やりたいな。なんかあいつらマジでビビらせたい」
ちびのガズラが手を挙げた。
「そうだな……じゃあ俺とマッシュが屋敷の外であいつらの相手するわ。いいなマッシュ」
デブのマッシュが頷く。
「へっ、楽しくなってきたぜ」
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