愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第18話 期末試験・後編

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 今回もまた英国数社理の他に音楽、美術、技術家庭、保健体育のテストが行われる。
 今回は学校の放課後毎日蒼が旭の勉強に付き合っていたため、出来るだけ自力で頑張るらしい。

「今回も夏同様、赤点を取ったものには再試がある。30点以下が再試となる。それでは、最初のテストは英語。それじゃあ頑張れよ」

 そして、1日目英語、理科、保健体育。2日目国語、技術家庭、音楽。3日目数学、美術、社会のテストが行われた。
 3日目のラスト、社会の問題の時、暁は蒼の机の上に座っていた。

『どうしたの?』

 蒼は自分のテスト用紙の端に暁に向かって言葉を書いた。
 暁の言葉は旭と蒼にしか届かないので、喋り始める。

「社会のテスト、ほとんど選択問題だろ。旭はカンニングしないで1人でやるって言ってたけど旭ってば皆と違う解答ばかり選んでて僕心配になっちゃって」

 旭はガタッと机と椅子が揺れる。

「うるせぇぞ九条」
「すんません」

 その言葉に旭は全て解き終わったあとに、問題を見直した。
 そして、終了の鐘が鳴る。

「終わったー」
「お疲れ。どうだった?」
「おう!ばっちりだ!!問3はAだよな?」
「残念。Bだよ」
「え?」
「旭と蒼の解答ほぼ真逆だったぞ」
「え?」
「蒼の答えが合ってるとしたら、旭は再試だな」
「うっそだろー!」
「どんまい」

 そっと肩を叩く蒼に、顔面蒼白な旭。
 数日後、テスト返却の日がやってきた。
 30点以下は再試。結果は…。

「ヨッシャー!再試は社会のみだ!!」

 テスト返却の際、5教科の先生からは色々と突っ込まれた。
 前回は満点だったのに、何故今回はこんなにギリギリなのか。ほとんどが30点台なのだ。
 英語だけは、82点と頑張っていた。
 怪しんでいた担任からは、

「やっぱり中間はカンニングしたんじゃ…」
「してないっす!」
「落差が凄すぎるだろ」
「前回はまぐれが多かったというか」
「でも前回はほとんど選択問題がなく、書き問題だったぞ。それに比べて今回はほとんど選択問題。選択問題の方が間違えるって、普通は逆だろ」
「それは、すね」

 怪しいと思いながらも旭を信じることにした担任。

「はぁ、まあ頑張れよ。今回は1発で合格出来るといいな」
「うす!」

 放課後。

「じゃあ、旭部室で待ってるから」
「おう!一発で合格してやるぜ!」
「頑張るんだぞ!!」
「あ、待って暁。暁は…なんかあった時のために一緒に居てくれよ」
「え~。何かって?」
「その~蒼さんのテスト用紙を見に行くとか?」
「カンニングする気だ」
「だって俺2択を間違えるんだぜ」
「それなら前回選んだのと違う方を選べば良いじゃないか」
「そんなの、覚えてるわけないだろ」
「良い顔で何言ってるんだ」
「な!頼む、暁!!」
「分かったよ…」
「それじゃあまた後で」
「おう!」

 再試者が続々と教室に入ってくる。
 旭と同じ社会の再試者は5人のようだ。

「すっくな!」
「そりゃあな、2択の選択問題でどう間違えるんだよ」
「で、でも俺含めて5人はいるんすよね」
「あ、でも九条。他4人は当日欠席者だ」
「え…」
「再試者はお前だけだということだ」
「くっそー」
「つーわけで、1年と2年3年は同じ教室でやる」

 すると、吹奏楽部元部長の江田と漫画研究会元部長の小鳥遊が入ってきた。

「あっれー、2人も再試っすか?」
「お前と違ってこっちは受験で忙しいんだよ」
「…すんません」

 あまりの圧に押し負ける旭。
 江田がチラッと1年のテスト用紙を見る。

「お前これ選択問題だろ」
「選択問題で再試!?ぎゃはは」

 馬鹿にする江田と小鳥遊に顔が真っ赤になる旭。
 試験が始まる3分前。皆が着席するなか、蒼の兄。翠が教室に入ってきた。

「あれ?翠兄ちゃん?」
「旭?何してんの」
「さ、再試で」
「まあそっか。ここにいるならそうなるか」
「もしかして翠兄ちゃんも!?」
「違うよ、先生に頼まれてきたんだ。カンニング防止で監視しろって」
「カ、カンニング」
「旭はもちろんそんな子じゃないでしょ。心配してないよ」

 良心が痛む旭。

「旭じゃなくて、江田先輩と円谷の2人」

 江田、翠と一緒で吹奏楽部員であり新部長の円谷。

「元部長も現部長が再試とか恥ずかしいよね」
「こ、こいつも部長だろ」
「うん、そうだね。でも旭は吹部じゃないし」

 そんな話をしているとまた扉が開いた。
 来たのは再試の監督官である先生。

「全員、着席しろ」

 見たことのない強面の先生だった。

「俺の名前は金城大我。江田と円谷、そして1年にしてカンニング行為が疑われている九条。お前らの監視のために俺がここの監督官となった。そして、新生徒会長である桐生にもここに居てもらうこととなった。カンニング行為が見つかった場合、冬休みは無いと思え。それでは試験開始!!」

 そうして、緊迫した部屋の中運命を決める再試がスタートした。

 一方、そんな旭の試験を待つ蒼は部室で本でも読んで待っていた。

 ガラッ。

 扉が開く。
 部室に入ってきたのは、椿だっだ。

「あれ?旭君は?」
「再試」
「そっか。ねぇ、蒼君」
「どうしたの?」
「蒼君はさ、リシャールって知ってる?」

 蒼は心臓を掴まれてるような感覚に陥った。

「他にもイレールとか」

 ニヤつきながら椿は話始める。
 蒼は読んでいた本を机に置き、椿をじっと見た。

「その名前どこで聞いた?」
「やっぱ知ってるんだ」
「椿!」
「わぁ、怖いなぁ。大きな声出さないでよ」
「…」
「リシャールってさ、僕の、いや俺の前世の名前なんだ」

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