愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第7話 部長会議

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 部長会議の日がやってきた。
 バタバタと走りながら教室にやってきた旭と蒼。

「失礼しまーす」
「失礼します」

 教室に入ると、39部の『部長』、『生徒会長』『副会長』『生徒会書記』という威厳を持つ42人が待ち構えていた。

「遅い!」
「すみません。ホームルームで副担任の話が長引いてしまって」
「副担任は誰だ」
「小林先生です」
「…それは、仕方がない」

 小林先生は旭達の副担任であるが、話が長いと有名なのである。
 45分の授業のうち、25分は関係のない話をし必ず授業が延長する。
 まぁ、今回は関係がないので小林先生の話はここまでにしよう。

「じゃあ2人はそこに座って」
「はい」
「それでは、今年度1回目の部長会議を始めます。今回の議題は来月の体育祭について」

 生徒会長が会議を進める。
 
「妖精部部長の九条君、副部長の桐生君は初めての会議、初めての体育祭になるので今日は軽く聞いて参加していて下さい」
「はい」
「体育祭の種目については各クラスで話すと思うので、この会議で行うは体育祭で1番盛り上がる部活対抗リレーです。部活対抗リレーでは毎年200mを4人で走ります。ただ走るだけでは面白くないため、バトンをバットやボールにしたりユニフォームで走ったり各部活それぞれの良さ、面白さで競技を行います。基本的には昨年と一緒で良いと思うけど皆はどう思う?」
「はい」
「吹奏楽部」

 吹奏楽部部長・江田が手を上げる。

「はい。毎年フルートを持って走ってるけど、指揮棒にチェンジしたい」
「うーん、そうするとオーケストラ部と被るんだよな」
「そんなこといったら美術と書道は筆なんだし一緒だろ」
「違いますー、全然違いますー。江田は目が悪いんですかー?」
「はぁ?テメェやんのか?」
「上等だ」
「待って待って、落ち着いて」

 吹奏楽部部長と美術部部長が喧嘩を始めそうになるもすぐに仲介に入る生徒会長。

「分かった。指揮棒で良いよ。でも吹奏楽部って分かる服装走ること」
「あー部活Tとか?」
「うん。そうだね。そうしよう」
「了解」
「オーケストラ部も服を変えることは出来る?」
「こちらも部活Tシャツでいいか?」
「もちろん」
「それならば良い」
「良かった。じゃあ、他に何かある人」
「はい」
「陸上部」
「はい、毎年陸上部ハードルなんだけどさすがにキツいから変えてほしい」
「でも陸上部と他の部活で公平にするにはハードルが一番なんだよね」
「短距離の選手以外にするとか?」
「それは短距離差別だ」
「うーん。じゃあどうするか」

 全員3年ということもあるが、遠慮なく意見を言い合う状況に旭と蒼は見てることしか出来なかった。そんな時、

「九条君、桐生君、君たちはどう思う?」
「え?」
「君たちだって部長・副部長という立場でここにいる。意見を言う権利を持っているんだよ」
「えっと、…高飛びの棒とか?」
「いいかもね」
「でも危ないんじゃない?」
「危ない?」
「うん。高飛びの棒を持って走るってことは絶対に邪魔になるし後ろを走る選手に危険が及ぶ」
「そっか。貴重な意見をありがとう、九条君」
「あの」
「桐生君、どうぞ」
「陸上部は1番外側のレーンにして、内側に入っちゃいけないってのはどうですか?」

 1レースで走る人数は10人。内側に入れないとなると陸上部は結構辛い。

「…うん。良いね!」
「それなら危険はないし平等に走れるかもな」
「それでいいかい、陸上部」

 陸上部部長の顔は少し険しくなる。しかし、これを断れば次はどんな難題がくるか分かったもんじゃない。

「…ハードルに比べたら優しいもんだ。ありがとな、桐生」
「ははは、はい」
「吹奏楽部、陸上部と終わって他にある部は?」

 手を上げる人は居なかった。

「うん。それじゃあ、今回の本題。新しく創設された部、妖精部はどうするか。山田先生からはオカルト雑誌でと言われてるけど。皆はどう思う?」
「お前らの部活って妖精部って言うけど実際は妖精を探す部なんだろ。妖精のコスプレして走れば」
「嫌です」
「なんで?」
「それは、恥ずかしいから…」
「乙女か!」
「うん。でも今回はオカルト雑誌でいいんじゃないかな。1年目だし、最初の体育祭は楽しくあってほしいからね」
「じゃあ来年はコスプレな」
「えっ?」
「他に何かある人ー」

 淡々と会議を進める生徒会長。

「無い、みたいだね。じゃあ、」
「いやいやいや来年はコスプレっすか?」

 生徒会長は旭の顔を見てニコッと笑った。
 その後手を1回叩く。

「それじゃあ、今日の会議はここまで。皆、お疲れ様」

 次々に教室を出ていく各部長と生徒会役員。旭が戸惑っていると生徒会長が旭と蒼の元へやってきた。

「お疲れ様。初めての会議どうだった?」
「あぁ。そう、っすね」

 来年はコスプレ姿で走らなければいけない。旭は嫌すぎて微妙な顔をしている。
 そんな旭に対し生徒会長は言った。

「…来年のことは来年の部長達で決めたらいいよ。今年は今年で楽しんでもらいたいからね。それから、意見をくれてありがとう」
「でも俺、高飛びの棒とか、蒼に比べて全然良い意見出せなくて」
「いいや。あんなにパッと意見を出してくれて助かったよ。吹奏楽部の江田君とか君たちも知ってる園芸部の花井君とか最初は全く喋れなかったからね。漫研の小鳥遊君に至っては未だに存在感を消して指されないようにしてるから、意見をくれるのはすごい助かるんだ。だからありがとう。それに君たちはまだ1年生だ。これからこれから」
「はい。ありがとうございます」
「うん。それじゃあね」

 教室を出てそのまま帰宅する旭と蒼。

「生徒会長、良い人だったね」
「だな」

 そんな会話をしながら家路に着いた。

 
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