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第三話
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「どういうことですか!?」
声変わりもまだしていない、甲高い声を張り上げた。
左右両脇におかれた狭苦しいベッド。大きな窓に沿うよう、机がふたつ並んでいる。
さっそく寮に到着し、部屋に案内され、俺は目を丸くしてしまう。
部屋のせまさではなく、その部屋に住むであろうメンバーに対してだ。
ガウェインはそれを無視した。呆然と立つ俺の横で、無表情に荷物を置いている。どさどさっとした音と、俺の突拍子のない声がまじる。
ケイ先輩は、扉のそばで、腕組みしながらやれやれと首を横にふった。
「どういうって、そういうことだけど?」
「ジョン、落ち着いてって。兄さまが同室だから、なんかあったときも大丈夫だよ」
ぴょんとアーサーさまがケイ先輩のうしろから顔を出した。
はぅ! かわいい!
相変わらずというか、普遍的にかわいい。
本当に大丈夫なのだろうか。
こんなに華奢で、バンビみたいな瞳をケイ先輩に汚されかねない。
「でも、でも……!! 俺は同室を希望していたはずです。こんなの、勝手すぎます!!」
「ガウェインと同じだから、よかったじゃねぇか?」
「そうじゃないです! エクターさまへもしっかり、同室になるようお願いしておりました!」
「親父はおやじじゃん。おれはここの監督生よ?」
うそだ。
本当はケイ先輩とガウェインが同室になるはずだったのを、先輩がすり替えたんだ。
さっき他の監督生がケイ先輩にブツブツと文句を口にしていたのをみた。
くそ野郎め。
父であるエクターさまに手紙を送りつけてやりたい。
王の兄だからって、監督生になって、権力を振りかざすなんて卑怯だ。
「お、おれはアーサーさまと……」
「こら! ジョン、「さま」はだめだよ。めっ!」
「ジョン、少しはアーサーばなれをしろ。アーサーだってもう赤子でもないんだ。俺といればなにも問題ないだろ。アーサーと離れていた分だけ、いろ~んなことを教えてやる予定なんだから。なっ!」
あばばばばばばばば。
やめろ。やめてくれ。
このドスケベ、ブラコン。
どうせ、いかがわしい本を見せつけるに決まってやがる。
くそのっぽ、チャラ男め。
「……ジョン、あきらめろ。新入生がなにを言っても無駄だ。ましてや、アーサーは王族だ。もっと広くて、警備のしっかりしたところにいるべきだ。同室はケイ先輩がちょうどいい」
「……けいび」
ぽんっとガウェインが同情の眼差しをこちらに注ぐ。やめろ。
おまえこそ、親愛なる殿下のそばにいられなくて悲しくないのか?
おれは悲しい。
殿下と一緒に枕を並べ、寝顔をみることができなくなるじゃないか。
「な? そういうわけだから、ガウェインともども仲良くやれよ?」
「……は、い」
「ジョン、淋しくなったらこっちに遊びに来てね?」
きゅるるんと潤んだ瞳が俺を見つめてくる。
ああ、なんて無慈悲なことば。
「……もうさびしいです」
しょぼんとした顔を向けると、アーサーさまもつられて泣きそうになる。
よかった。ちょろい。
「…………ジョン、今日は一緒にねる?」
「こらこらこら! だめだっつってんだろ! ジョンもアーサーに甘えるな。今日からはジョンはアーサー裁ち! ガウェインもちゃんとこいつの面倒をみろよ」
「……わかりました」
「じゃあな、ふたりとも喧嘩すんなよ!」
「ジョン……」
「アーサーさまああああ」
四人の会話が交錯したが、ケイ先輩がアーサーさまをつれて出ていこうとする。
ひどい。
どうして、俺がガウェインと一緒なんだ。
美形でもガチムチ野郎と四六時中一緒にいるなんて、地獄にちかい。
「ジョン、元気だせ」
ガウェインが近づいてきて、俺の手をとろうとした。
そのとき、キラリと金髪が扉から飛び出した。
「あ、ガウェイン、ジョンに変なことをしないでね?」
アーサーさまはにっこりとほほ笑んで、ひらひらと手をふって部屋を出ていった。
なんだよ、変なことって。
筋トレか?
なんとなく、伸ばされた手を振り払ってしまった。
声変わりもまだしていない、甲高い声を張り上げた。
左右両脇におかれた狭苦しいベッド。大きな窓に沿うよう、机がふたつ並んでいる。
さっそく寮に到着し、部屋に案内され、俺は目を丸くしてしまう。
部屋のせまさではなく、その部屋に住むであろうメンバーに対してだ。
ガウェインはそれを無視した。呆然と立つ俺の横で、無表情に荷物を置いている。どさどさっとした音と、俺の突拍子のない声がまじる。
ケイ先輩は、扉のそばで、腕組みしながらやれやれと首を横にふった。
「どういうって、そういうことだけど?」
「ジョン、落ち着いてって。兄さまが同室だから、なんかあったときも大丈夫だよ」
ぴょんとアーサーさまがケイ先輩のうしろから顔を出した。
はぅ! かわいい!
相変わらずというか、普遍的にかわいい。
本当に大丈夫なのだろうか。
こんなに華奢で、バンビみたいな瞳をケイ先輩に汚されかねない。
「でも、でも……!! 俺は同室を希望していたはずです。こんなの、勝手すぎます!!」
「ガウェインと同じだから、よかったじゃねぇか?」
「そうじゃないです! エクターさまへもしっかり、同室になるようお願いしておりました!」
「親父はおやじじゃん。おれはここの監督生よ?」
うそだ。
本当はケイ先輩とガウェインが同室になるはずだったのを、先輩がすり替えたんだ。
さっき他の監督生がケイ先輩にブツブツと文句を口にしていたのをみた。
くそ野郎め。
父であるエクターさまに手紙を送りつけてやりたい。
王の兄だからって、監督生になって、権力を振りかざすなんて卑怯だ。
「お、おれはアーサーさまと……」
「こら! ジョン、「さま」はだめだよ。めっ!」
「ジョン、少しはアーサーばなれをしろ。アーサーだってもう赤子でもないんだ。俺といればなにも問題ないだろ。アーサーと離れていた分だけ、いろ~んなことを教えてやる予定なんだから。なっ!」
あばばばばばばばば。
やめろ。やめてくれ。
このドスケベ、ブラコン。
どうせ、いかがわしい本を見せつけるに決まってやがる。
くそのっぽ、チャラ男め。
「……ジョン、あきらめろ。新入生がなにを言っても無駄だ。ましてや、アーサーは王族だ。もっと広くて、警備のしっかりしたところにいるべきだ。同室はケイ先輩がちょうどいい」
「……けいび」
ぽんっとガウェインが同情の眼差しをこちらに注ぐ。やめろ。
おまえこそ、親愛なる殿下のそばにいられなくて悲しくないのか?
おれは悲しい。
殿下と一緒に枕を並べ、寝顔をみることができなくなるじゃないか。
「な? そういうわけだから、ガウェインともども仲良くやれよ?」
「……は、い」
「ジョン、淋しくなったらこっちに遊びに来てね?」
きゅるるんと潤んだ瞳が俺を見つめてくる。
ああ、なんて無慈悲なことば。
「……もうさびしいです」
しょぼんとした顔を向けると、アーサーさまもつられて泣きそうになる。
よかった。ちょろい。
「…………ジョン、今日は一緒にねる?」
「こらこらこら! だめだっつってんだろ! ジョンもアーサーに甘えるな。今日からはジョンはアーサー裁ち! ガウェインもちゃんとこいつの面倒をみろよ」
「……わかりました」
「じゃあな、ふたりとも喧嘩すんなよ!」
「ジョン……」
「アーサーさまああああ」
四人の会話が交錯したが、ケイ先輩がアーサーさまをつれて出ていこうとする。
ひどい。
どうして、俺がガウェインと一緒なんだ。
美形でもガチムチ野郎と四六時中一緒にいるなんて、地獄にちかい。
「ジョン、元気だせ」
ガウェインが近づいてきて、俺の手をとろうとした。
そのとき、キラリと金髪が扉から飛び出した。
「あ、ガウェイン、ジョンに変なことをしないでね?」
アーサーさまはにっこりとほほ笑んで、ひらひらと手をふって部屋を出ていった。
なんだよ、変なことって。
筋トレか?
なんとなく、伸ばされた手を振り払ってしまった。
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