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第二十話
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そのあとはあっというまだった。
竜人であるルーベンスくんと話したけど、盛り上がることなく、ぼくは酔っぱらいギルの愚痴を聞く羽目になった。手元にあったワインに口をつけると、また眠くなって限界に達してしまう。
急用ができたというレインが早々と引き上げ、ぼくたちは落穂ひろいのような会話を交わして解散することになった。
ちなみにレインはちゃっかり全員と連絡先を交換して帰っていき、あとで教えてあげるねと耳元で囁いてウィンクして帰っていった強者だ。
恋人をつくるという大義名分を予定していたとおり、できるはずもなく、合コンという飲み会は幕を閉じた。
ロンさんの姿がなくて心配になったら、どうやら酔っ払って獣化してしまったらしい。ギルがあわててかけよっていき、厄介事になるまえにはやく店をでろとジェスチャーをした。
ルーベンスくんも追っていき、ぼくとアーサーくんは代わりに会計を済ませた。
結局、ルーベンスくんがロンさんを送っていく旨が伝えられ、ぼくたちは二次会にいくこともなく解散することになった。
別れ際、アーサーくんから次のデートに誘われた。どうしようと思ったが、東乃国エリアの知り合いがやっているしゃぶしゃぶらしい。
にこっとリルくん似の笑顔をむけられ、両手でぼくの右手をつつむ。
「友人がやっているところなんだ。週末ひまなら一緒にいかない?」
「……ええと、はい。仕事終わりなら」
「よかった。うれしいよ。じゃ、あとで連絡するね。またね~!」
そういうと手をぱっと離して、アーサーくんは長ったらしい話も披露せず、爽やかに去っていった。去り際はあでやかで、あっというまに姿がみえなくなった。
ルーベンスくんもロンさんを抱いて運んで帰っていく背中がみえて、ぼくも家路につく。
どこにもよらず、まっすぐにアパートに帰宅する。
瞼が落ちそうになりながらも熱いシャワーを浴びて、パジャマに着替えて、脱いだものを洗濯物をドラムにいれようとして、ポケットにあった盗聴器に気づく。
スイッチを入れたとたん、発見器が大音量で鳴りだして止まらなかった。
ビービービービビビビビ!!
「うわわわわわわっ……!!」
ビービーと目が覚めるような音を立てて、ものすごいバイブレーションで振動して、ぼくは飛び上がって尻もちをついた。
寝室でもためしてみたらぶるぶると激しく震えて、爆発して壊れそうだ。天井や壁、床にむけてもビービーとどこにでも反応してしまう。
念のためにクローゼットのちかくにむけると、音と振動が最大になって急いでスイッチを切った。
「わ、わわ…。びっくりした。これ、壊れてるかな……。自信作っていってたけど、もしかしたら欠陥品か失敗作かも……」
おもわずぷっと笑いが噴きこぼれた。
つぎにアーサーに会ったときに返しておこう。
リルくんに似たアーサー。壊れたガラクタを渡して、しゃぶしゃぶに誘ってくれた。いい人だけど、薀蓄が長くて好みだけども、どうもしっくりこない。
……うーん、やっぱりだめだ。
ごろんとベッドになだれ込むようにつっぷす。毎日リルくんを呼んでいたせいか、しんとした静かさがさびしい。
リルくん。いま、なにしてるのかな……。
そう思っても、プライベートな連絡先はしらないし、なにをしているなんて知るわけがない。
会わないでいる時間がふたりをつくるというけれど、ふたりの関係をはっきりと明示させてくれるだけだ。
「……ぼくたちは恋人じゃないもんな……。でも、やっぱりあいたいな……」
すぐにアプリを通してコールボタンを押したいところだけど、今日はもう電池切れで力がでない。
週末だし、しつこい客だと思われてはむこうからチェンジされるのもいやだ。まぶたを閉じるとムズムズして、そろりと右手が下の方にいってしまう。
アーサーくん、リルくんにちょっとだけ体型も似ていたなあ……。
「……んッ…、んんっ」
つんとシャツの下で、胸の尖りがさわってくれとねだっていた。空いた手で片方をつまんでひっぱる。いつもならリルくんにひっぱられただけでイッちゃうのに今夜はそうでもない。
「…ふっ……、リルく……ん……、すき……」
アーサーくんの話を聞きながら、リルくんのことばかり考えてしまっていたことに罪悪感がつのる。
まるであの店のどこかにリルくんに見つめられているような熱い視線を感じて、全然頭に入らなかった。
……だめだな。店にリルくんがいるわけないのに。ぼくはなにを勝手に期待していたんだろう。突然現れて、あの合コンからきみはぼくのものなんだとヒーローのように連れ去ってしまうなんて妄想もいき過ぎだ。
ゆるゆるとした動きから、右手の速度がはやまる。リルくんのものはもっと熱くて太い。
すぐにおもらししてしまって、ここに栓をしたらといっていたっけ……。
「……ッ…、あッ」
かなしいかな。ぼくはリルくんの声と顔を浮かべて、二回ほど達してしまった。たぶん、本当のぼくのことをリルくんが知ったら軽蔑するかもしれない。
竜人であるルーベンスくんと話したけど、盛り上がることなく、ぼくは酔っぱらいギルの愚痴を聞く羽目になった。手元にあったワインに口をつけると、また眠くなって限界に達してしまう。
急用ができたというレインが早々と引き上げ、ぼくたちは落穂ひろいのような会話を交わして解散することになった。
ちなみにレインはちゃっかり全員と連絡先を交換して帰っていき、あとで教えてあげるねと耳元で囁いてウィンクして帰っていった強者だ。
恋人をつくるという大義名分を予定していたとおり、できるはずもなく、合コンという飲み会は幕を閉じた。
ロンさんの姿がなくて心配になったら、どうやら酔っ払って獣化してしまったらしい。ギルがあわててかけよっていき、厄介事になるまえにはやく店をでろとジェスチャーをした。
ルーベンスくんも追っていき、ぼくとアーサーくんは代わりに会計を済ませた。
結局、ルーベンスくんがロンさんを送っていく旨が伝えられ、ぼくたちは二次会にいくこともなく解散することになった。
別れ際、アーサーくんから次のデートに誘われた。どうしようと思ったが、東乃国エリアの知り合いがやっているしゃぶしゃぶらしい。
にこっとリルくん似の笑顔をむけられ、両手でぼくの右手をつつむ。
「友人がやっているところなんだ。週末ひまなら一緒にいかない?」
「……ええと、はい。仕事終わりなら」
「よかった。うれしいよ。じゃ、あとで連絡するね。またね~!」
そういうと手をぱっと離して、アーサーくんは長ったらしい話も披露せず、爽やかに去っていった。去り際はあでやかで、あっというまに姿がみえなくなった。
ルーベンスくんもロンさんを抱いて運んで帰っていく背中がみえて、ぼくも家路につく。
どこにもよらず、まっすぐにアパートに帰宅する。
瞼が落ちそうになりながらも熱いシャワーを浴びて、パジャマに着替えて、脱いだものを洗濯物をドラムにいれようとして、ポケットにあった盗聴器に気づく。
スイッチを入れたとたん、発見器が大音量で鳴りだして止まらなかった。
ビービービービビビビビ!!
「うわわわわわわっ……!!」
ビービーと目が覚めるような音を立てて、ものすごいバイブレーションで振動して、ぼくは飛び上がって尻もちをついた。
寝室でもためしてみたらぶるぶると激しく震えて、爆発して壊れそうだ。天井や壁、床にむけてもビービーとどこにでも反応してしまう。
念のためにクローゼットのちかくにむけると、音と振動が最大になって急いでスイッチを切った。
「わ、わわ…。びっくりした。これ、壊れてるかな……。自信作っていってたけど、もしかしたら欠陥品か失敗作かも……」
おもわずぷっと笑いが噴きこぼれた。
つぎにアーサーに会ったときに返しておこう。
リルくんに似たアーサー。壊れたガラクタを渡して、しゃぶしゃぶに誘ってくれた。いい人だけど、薀蓄が長くて好みだけども、どうもしっくりこない。
……うーん、やっぱりだめだ。
ごろんとベッドになだれ込むようにつっぷす。毎日リルくんを呼んでいたせいか、しんとした静かさがさびしい。
リルくん。いま、なにしてるのかな……。
そう思っても、プライベートな連絡先はしらないし、なにをしているなんて知るわけがない。
会わないでいる時間がふたりをつくるというけれど、ふたりの関係をはっきりと明示させてくれるだけだ。
「……ぼくたちは恋人じゃないもんな……。でも、やっぱりあいたいな……」
すぐにアプリを通してコールボタンを押したいところだけど、今日はもう電池切れで力がでない。
週末だし、しつこい客だと思われてはむこうからチェンジされるのもいやだ。まぶたを閉じるとムズムズして、そろりと右手が下の方にいってしまう。
アーサーくん、リルくんにちょっとだけ体型も似ていたなあ……。
「……んッ…、んんっ」
つんとシャツの下で、胸の尖りがさわってくれとねだっていた。空いた手で片方をつまんでひっぱる。いつもならリルくんにひっぱられただけでイッちゃうのに今夜はそうでもない。
「…ふっ……、リルく……ん……、すき……」
アーサーくんの話を聞きながら、リルくんのことばかり考えてしまっていたことに罪悪感がつのる。
まるであの店のどこかにリルくんに見つめられているような熱い視線を感じて、全然頭に入らなかった。
……だめだな。店にリルくんがいるわけないのに。ぼくはなにを勝手に期待していたんだろう。突然現れて、あの合コンからきみはぼくのものなんだとヒーローのように連れ去ってしまうなんて妄想もいき過ぎだ。
ゆるゆるとした動きから、右手の速度がはやまる。リルくんのものはもっと熱くて太い。
すぐにおもらししてしまって、ここに栓をしたらといっていたっけ……。
「……ッ…、あッ」
かなしいかな。ぼくはリルくんの声と顔を浮かべて、二回ほど達してしまった。たぶん、本当のぼくのことをリルくんが知ったら軽蔑するかもしれない。
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