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第十六話
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「それでさ、ファッション・ウィークのイベントでのセキュリティ事情なんだけど……」
うんぬんかんぬんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー――……。
すでにぼくだけが「さしすせそ」なんて相槌を必要することなく、絶妙なタイミングでこくりこくりと上体を前後にゆり動かしていた。
アーサーは一生懸命に話してくれた。いまも、現在進行形で。
諜報部隊にいるんじゃないかというぐらいに警備機器に精通していてそれを惜しげもなく溢れる知識を披露してくれた。
ぼくの横で、まったく興味のない最新の防犯対策事情を熱心に教えてくれるのだ。次月号の雑誌を飾るゴシップ事情のほうがまだましなぐらい、最新の警備から防犯機器までの説明を右から左へ次々と抜けていく。
ロンさんと竜人はなにをしているんだろうと思っていると淡々と会社の面談みたいな問答を交わしていた。
せっかく会話をしているので割り込むのも申し訳ないからやめた。ギルはというと、あとからやってきたレインと話して、ご機嫌ですでにロックオンされている。
レインは竜人であるルーベンスに目標をセットしたがすげなく断られたので無難なギルに照射をかえたようだ。
ぼくのあくびをかみ殺して昨夜のできごとを思い出していた。
昨夜はとってもよかった。
蜂蜜と生クリームをぬったくって、最後は熱いシャワーと湯船つかって疲れもぶっとぶアフターファイブだった。
あやうく本番までいきそうになって、そのままリルくんの種を植えつけられるような勢いだった。まあ、それは雪崩のように落ちてきた大量のコンドームの箱から一つをとってぼくたちは理性を取り戻した。
リルくんに押し倒されてノックもずっぽりはめた本能セックスしたいところだけど、彼は家族計画はしっかり立てたい派だと思うから我慢した。
それとヒートに使用する抑制剤について聞かれたけれども、大げさに心配する様子に優しさを感じて、ぼくはまたキュンときてしまった。
幼いころに同じオメガ性の姉さんの市販薬を使ったところ、薬の成分に耐性があったせいでチンチラになってしまって散々笑われてしばらく戻れなくなったトラウマがある。
そのせいで、いまはちゃんとしたところで処方された薬を使用している。へんな薬をつかって、ドラッグディーラーや薬物中毒者みたいに思われないように彼にその袋もみせて身の潔白をそれとなく示した。
ソフィアという厄介な薬のせいで、ドラッグにハマって抜けだせないオメガがいるのを知っているのもあって余計な暴露をしてしまった気がする。
まあ、いい。ハードドラッグの使用歴があるなんてへんな誤解があったらこまる。ただ、もしかしたら彼が魔法薬取締局や重大犯罪局のエージェントだったらどうする。まあ、そんなことは非現実的でないに等しいし、そのためにぼくに近づいたなんて狙われたヒロインみたいで萌えるけど。
ええと、いけない。アーサーの延々した話のせいで、余計な想像力が増してしまう。
ありえない妄想だけど、あやしい隣人を捜査するためにぼくを騙して近づく最優秀エージェントだったら……って映画の見過ぎだ。
そんなのありえるわけがないし、画面の中の世界観でしかない。重大犯罪局のエージェントなんて入局するだけで難しいのに、さらに厳格なテストと審査がある。
リルくんのようないい人オーラ満開の善人には無理だ。普段接する極悪人たちとは全然ちがう。
こないだのウサギAVよりひどい妄想をしてどうするんだ、ニア。
ヒートになったら必ず呼ぶ(コールボタンを押す)約束を交わしたわけだし、このまま新婚生活プランにすすんでしまいたいほどうまくいっているんだ。
……なにからなにまで本当やさしくて、完璧で、ぼくにはもったいないぐらい。それでも好きだな。
好きすぎて、お風呂のあとは寝室までプリンセスのように横抱きで運ばれて瞼にキスされたとたん、すぐにぐっすりと眠ってしまった。
おかげで目が覚めたときは朝で、リルくんが熱いコーヒーとオムレツという素敵な朝食を用意してくれた。
『ニアさん、あまりコーヒーを飲み過ぎないちゃだめだよ。またおもらしちゃうとこまるしね』
ふふふと笑われた顔を思い出し、ぼくは顔をカァっと熱くしながら目の前のピスタチオを手にとって殻から豆をだして食べた。
人の話を聞いているだけなのに、赤くなったり、ドキドキしてしまうなんてへんなやつだと思われないか心配になったけど、アーサーは気にせず滔々と一方的に話す。
今日は飲みすぎないようにしなきゃいけない。食事をメインにして、セーブしながらワインを飲んでいる。
リルくんの手のなかでおもらししてしまうのが癖になってしまっているし、トイレにいくたびにへんな妄想をしてしまうと困る。
次はおもらししないようにしないと……。
夢の中で洩らして、おねしょシーツかペットシーツが必要になってしまう。ただでさえ名前を呼びながら夢精して起きてしまうのだ。しっかりしなければ……。
意識を奮い立たせたとき、横にいたアーサーの目が輝いた。セキュリティ機器の耐用年数と法定耐用年数、減価償却費について。それと通信機器を入れ替える最適な時期を熱く語ってくれたところだった。
……はっ。いけない、まったく聞いていなかった。
気づいたら、自分が開発したセキュリティ機器について話がうつっていたようだ。
「そ、そうなんですね。それはすごいですね」
「そうなんだよ! それで、いま話題の防犯機器をつくってみたんだ。へへへ実はもってきたんだけどさ、これなんだ! これ、あげるよ!」
じゃーんとだされたのは手のひらサイズの盗聴器発見器のようだ。
こんなものもらっても、ぼくの寝室は盗聴器などないのに。
うんぬんかんぬんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー――……。
すでにぼくだけが「さしすせそ」なんて相槌を必要することなく、絶妙なタイミングでこくりこくりと上体を前後にゆり動かしていた。
アーサーは一生懸命に話してくれた。いまも、現在進行形で。
諜報部隊にいるんじゃないかというぐらいに警備機器に精通していてそれを惜しげもなく溢れる知識を披露してくれた。
ぼくの横で、まったく興味のない最新の防犯対策事情を熱心に教えてくれるのだ。次月号の雑誌を飾るゴシップ事情のほうがまだましなぐらい、最新の警備から防犯機器までの説明を右から左へ次々と抜けていく。
ロンさんと竜人はなにをしているんだろうと思っていると淡々と会社の面談みたいな問答を交わしていた。
せっかく会話をしているので割り込むのも申し訳ないからやめた。ギルはというと、あとからやってきたレインと話して、ご機嫌ですでにロックオンされている。
レインは竜人であるルーベンスに目標をセットしたがすげなく断られたので無難なギルに照射をかえたようだ。
ぼくのあくびをかみ殺して昨夜のできごとを思い出していた。
昨夜はとってもよかった。
蜂蜜と生クリームをぬったくって、最後は熱いシャワーと湯船つかって疲れもぶっとぶアフターファイブだった。
あやうく本番までいきそうになって、そのままリルくんの種を植えつけられるような勢いだった。まあ、それは雪崩のように落ちてきた大量のコンドームの箱から一つをとってぼくたちは理性を取り戻した。
リルくんに押し倒されてノックもずっぽりはめた本能セックスしたいところだけど、彼は家族計画はしっかり立てたい派だと思うから我慢した。
それとヒートに使用する抑制剤について聞かれたけれども、大げさに心配する様子に優しさを感じて、ぼくはまたキュンときてしまった。
幼いころに同じオメガ性の姉さんの市販薬を使ったところ、薬の成分に耐性があったせいでチンチラになってしまって散々笑われてしばらく戻れなくなったトラウマがある。
そのせいで、いまはちゃんとしたところで処方された薬を使用している。へんな薬をつかって、ドラッグディーラーや薬物中毒者みたいに思われないように彼にその袋もみせて身の潔白をそれとなく示した。
ソフィアという厄介な薬のせいで、ドラッグにハマって抜けだせないオメガがいるのを知っているのもあって余計な暴露をしてしまった気がする。
まあ、いい。ハードドラッグの使用歴があるなんてへんな誤解があったらこまる。ただ、もしかしたら彼が魔法薬取締局や重大犯罪局のエージェントだったらどうする。まあ、そんなことは非現実的でないに等しいし、そのためにぼくに近づいたなんて狙われたヒロインみたいで萌えるけど。
ええと、いけない。アーサーの延々した話のせいで、余計な想像力が増してしまう。
ありえない妄想だけど、あやしい隣人を捜査するためにぼくを騙して近づく最優秀エージェントだったら……って映画の見過ぎだ。
そんなのありえるわけがないし、画面の中の世界観でしかない。重大犯罪局のエージェントなんて入局するだけで難しいのに、さらに厳格なテストと審査がある。
リルくんのようないい人オーラ満開の善人には無理だ。普段接する極悪人たちとは全然ちがう。
こないだのウサギAVよりひどい妄想をしてどうするんだ、ニア。
ヒートになったら必ず呼ぶ(コールボタンを押す)約束を交わしたわけだし、このまま新婚生活プランにすすんでしまいたいほどうまくいっているんだ。
……なにからなにまで本当やさしくて、完璧で、ぼくにはもったいないぐらい。それでも好きだな。
好きすぎて、お風呂のあとは寝室までプリンセスのように横抱きで運ばれて瞼にキスされたとたん、すぐにぐっすりと眠ってしまった。
おかげで目が覚めたときは朝で、リルくんが熱いコーヒーとオムレツという素敵な朝食を用意してくれた。
『ニアさん、あまりコーヒーを飲み過ぎないちゃだめだよ。またおもらしちゃうとこまるしね』
ふふふと笑われた顔を思い出し、ぼくは顔をカァっと熱くしながら目の前のピスタチオを手にとって殻から豆をだして食べた。
人の話を聞いているだけなのに、赤くなったり、ドキドキしてしまうなんてへんなやつだと思われないか心配になったけど、アーサーは気にせず滔々と一方的に話す。
今日は飲みすぎないようにしなきゃいけない。食事をメインにして、セーブしながらワインを飲んでいる。
リルくんの手のなかでおもらししてしまうのが癖になってしまっているし、トイレにいくたびにへんな妄想をしてしまうと困る。
次はおもらししないようにしないと……。
夢の中で洩らして、おねしょシーツかペットシーツが必要になってしまう。ただでさえ名前を呼びながら夢精して起きてしまうのだ。しっかりしなければ……。
意識を奮い立たせたとき、横にいたアーサーの目が輝いた。セキュリティ機器の耐用年数と法定耐用年数、減価償却費について。それと通信機器を入れ替える最適な時期を熱く語ってくれたところだった。
……はっ。いけない、まったく聞いていなかった。
気づいたら、自分が開発したセキュリティ機器について話がうつっていたようだ。
「そ、そうなんですね。それはすごいですね」
「そうなんだよ! それで、いま話題の防犯機器をつくってみたんだ。へへへ実はもってきたんだけどさ、これなんだ! これ、あげるよ!」
じゃーんとだされたのは手のひらサイズの盗聴器発見器のようだ。
こんなものもらっても、ぼくの寝室は盗聴器などないのに。
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