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第十一話

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 彼の下に身体を滑り込ませて、そのままむけられたおしりの最奥まで指を埋め込む。
 密着した背中の肌が汗ばんで、彼の匂いが濃くなっていくのがわかった。一本、二本とぎちぎちだったところもあっというまにひらいていく。

「あっ……あっ、あっ……あっ……だ、だめ……」
「だめじゃないでしょ? もっとっていわなきゃやめちゃうよ」
「やっ……それは……」
「ニーアさん、発声練習じゃないんだよ。そういうときはなんていうの?」

 かあああと彼の肌が赤く染まっていく。
 クリームを塗ったくられているのでなおさら肌の変化が目に入る。
 つい、いじめたくなるというのはこういうときのことをいうのか。僕は指の第二関節を曲げて、しこりをつつく。
 うつぶせになって、おしりを高く上げて、必死で声を押し殺す姿。最高にかわいい。無口じゃなくてシャイでウブなのだ。
 額に汗をうかべて、ぷるぷると悶えて震える姿は支配欲を過度に高まらせ、庇護欲もわき上き上がらせる。

「ニアさん、もーっと足をひらいてここをみせてよ。前も汁がだらだら垂れて、よだれみたいにお腹を濡らしているね」

 親指でスジをおさえて、ゆるゆると上下に動かして刺激を加えていく。ぴくんぴくんと腰が前後にゆれて、またいだ足先がぴんと伸びてる。

 このまま張りつめたものを扱いたまま、ゆるめた場所をこじ開けて、ゆっくりと挿入してゆさぶりたい。

「あッ……りるくん……」
「なに?」
「……んッ……なにも」
「んー……、なにもないの?」

 やましい欲望を彼に読まれないように僕はもっと指を奥深くに沈ませた。
 彼の濃厚なオメガの匂いがアルファの本能を刺激して、そんな衝動に襲われそうになって理性を奮い立たせる。

「も、もっとおくに……ほ、…ほしい……です」

 ……クソ。ここで敬語なんて。かわいすぎるだろう。なんで隣室の真面目で堅物の警察官がこんなに魅力的でかわいいんだよ。
 
 ずぶすぶと奥深くに沈めてやると、先っぽからしゅわっと液体が漏れでてきた。目が潤んでる。このまま刺激するまえにゴムをかぶせて、ゆっくりと追いつめて絶頂にみちびくのがいい。

 最初は捜査を舐めていた。
 即効性のある睡眠薬を直腸に塗りつけて、隣室にカメラを仕込んで回収だけすればいいと思っていた。
 それに相手は頑固で堅物の警察官だ。つまらなくて、体よく追い出されるのかと予想していたし、チェンジしたら他の捜査員が担当する。
 それがどうだ。
 一目見て、面食らった。最優秀エージェントとして国に命を捧げてきた誇り高き自分が固まってしまうほどに。
 正直いうと出会った瞬間、運命の番いかと思った。
 一目惚れというのはこういうことをいうのだろうか。
 
 この瞬間を例えるならば、ドーンときたところか。それともズドンと45口径で撃たれたというところか。
 まさに運命。かわいい。妖精か。
 リルリルフェアリルなんてくだらない源氏名をゲラゲラ笑いながらつけた同僚のリリーには殺意しかわかないが、噛んでしゃべる彼をみて謝意を伝えたいほどだった。

 絶対に元締めじゃない。勘だ。
 それは確実で、凶悪犯だったらバッド心中なしの愛の逃亡劇を考えなければならない。エージェントの勘が本能的にそう訴えたのがわかった。
 彼の無実を証明しなければいけない。警察も犯罪局ももはやあの手この手で主犯を検挙しようとしている。

 それから僕は必死だった。ありとあらゆるテクニックの総力を上げ、彼に嫌われないように、チェンジされないようにがんばった。

 もちろん、ひと通り彼を満足させたら、隣室にカメラと盗聴器を仕込んでいた。
 仲間にせっつかれて、彼の寝室にも仕込んでみたが、聞かせられるものはなかった(ほぼ自慰と巣作りというのも彼の名誉のために口を閉ざしておく)

 難点といえば、彼が純粋すぎるところだ。
 噓と誇張にまみれた僕の妹の話をハンカチで目頭をおさえて、黙って聞いて信じてくれた。いつでもこれるようにそれとなくプレミアムに加入するように勧めたのに、すぐに即決してしまった。

 それなのにお人よしなのか、かれはつねに僕の都合を聞いて呼んでくれる。やさしくて、礼儀正しくて、いい人すぎるほどで、騙しているこっちが心配になってしまう。

「あっ……だめっ…、でるっ……でるでる……」
「蜂蜜ももっと足そうね、ニアさん?」

 アルファのものを握りながら背中を弓なりにしてのけぞってる。やばいな。かわいいしかない。
 最近はうしろだけでいきそうになっているところもさらに魅力度が増す。目の前の屹立した雄棒に舌を這わせながらも、その小さな舌先でチロチロさせてくる。

 それがまたもどかしくて、かわいくて、もうダメだった。僕は完全に真面目で無口な彼の虜になっていた。
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