目は口程に物を言う(クマ→ヒロイン転生)

toyjoy11

文字の大きさ
上 下
3 / 3

~オリビエ・エリイト公爵令嬢視点~

しおりを挟む


毎日毎日働いて、やっと取れた連休にバスで日帰り旅行に行こうと計画していた。
それなのに。。
そのバスは崖から真っ逆さま。

シートベルトでその場では助かったけど、シートベルトは取れないし、切れないし。
身動きが出来ない。

そのうち野生の動物が集まってきた。

助けてくれようとしてくれた人も居たけど、最終的に見捨てられ、私は野犬に食い殺されて死んだ。

幸運だったのは、私を殺した野犬は一息に私の喉を食い破ったので、痛みが持続しなかったこと位。



次の瞬間、目を覚ましたら、強烈な殺意に身をすくめたところだった。
目の前の令嬢はどう考えても野犬のレベルではない。
もっと獰猛な動物の殺気。

(殺される。)
と確信した。

腰が抜けて、がくがくと震える。
気付けば、お漏らしをしてしまっていた。
助けてくれるはずの体の持ち主のご友人達は既に裏切って遠巻きにしている。

裏切られた。
見捨てられた。
このままだと殺される。

色んな葛藤が渦巻く。

でも、彼女との視線を逸らすことも出来ない。

震えて待っていたら、婚約者の第二王子が助けに来てくれ・・たと思っていたのに…どうして?どうして、貴方迄?

私とオリビエの感情が共鳴する。


私が失神する直前、彼女は私の二の腕を美味しそうと言うような目線で見ているなと思った。

夢の中、私はオリビエと対治した。
とても仲良くなった。

そんな和気あいあいとした話し合いの中、私とオリビエは協定を結んだ。
まだ、12歳の少女は35歳の私よりも随分と幼い。幼い彼女を守るためにも私は彼女との約束を守ることにした。
いずれ私はこの体から出て、成仏させてもらうように彼女に協力してもらうけど、それまで一緒に頑張ると言うとても小さな約束。

そして、現状を色々聞いて、とある共通点を見つけてしまった。
前世での乙女ゲームと人名が丸被りのキャラが多いのだ。

そして、オリビエの位置は悪役令嬢。
その乙女ゲーム自身はやったことが無い。積みゲーとして、説明書だけみて、声優目的だったので、いつかやろうと思ってたものだったから。名前以外何も覚えていない。でも、ざまぁ小説は通勤中よく読んでいたからきっとわかる。
無実の罪を背負いたくない。
一番は学園に行かないことだが、溺愛してくれる父にお願いをしたのにそれは拒否された。

第二王子との婚約はいずれ白紙にするけど、それが成立するまで待って欲しいと。そして、学園はしっかり通うようにと言われた。

私は絶望した。
オリビエも絶望した。

だから、私とオリビエは学園に通い、色んな噂に呑まれ、蔑まれ、色んなものを盗まれたり破られたりなどの地味な虐めにも耐え、その間ずっと白昼夢を見れるようになった。オリビエと一緒にずっと遊んだ。
食事は学園で変なものを食べさせられたせいで受け付けなくなった。
家ではそんなものを食べさせられては居なくてもあの目が怖い。
人を当然のように虐めるあの人たちの目。

むしろ、マリア嬢の殺意の方がまだマシだ。食べられそうではあるけれど。
助けてくれそうな人は居た。
でも、噂が嘘だと分かっている人も手を差し伸べてはくれなかった。

いつしか、オリビエと私は同じものになっていた。
記憶の共有が行われ、私がオリビエなのかオリビエが私なのかが分からない。

ただ、一つ共通していること。

「お父様の裏切り者。」
と言うもの。

3年間の苦行のピリオド。
卒業式の断罪イベントはなんの障害もなく執り行われることになった。
義弟は家でも学校でも私を蔑む。

だから、壇上の上に義弟ものぼっている。

(あぁ、もう、駄目だ。私は修道院送りになる。ざまぁ系の小説だとその途中で盗賊に襲われて×××な事だってある。あぁ、もう駄目だ。もう、終わりだ。)

つらつらと並べられる見覚えのない罪状。
婚約者の筈の第二王子がマリア嬢を抱きしめて、私を指差し嘲笑う。

(貴方が私を好きだと言って、始まった婚約でしたのに。)
(私、貴方のこと少なからず想っておりましたのに。。)

涙が止まらない。
そして、案の定、彼は私に定番のセリフを言ってのけた。
要は、婚約破棄と国外追放。

しかし、次の瞬間、助け船を出してくれたのは思わぬ人だった。
元々、凄く嫌そうに第二王子に抱かれていると思ったのだ。

殺意が最高潮に達しているマリア嬢は第二王子をアッパーカットした。
軽々と第二王子が吹っ飛ばされた。
そして、簡単に気絶しやがった。
それからは、あっと言う間。
嫌味なメガネは去勢され、陰険な剣士は喉に正拳突きで失神させられ、暴力ばかりの魔法騎士団長子息は魔力封じされてしまった。
弟は角でガタガタと震えて色を亡くしている。

そして、高らかに透き通った声で彼女は、マリア様は言ってくれた。
私の無実を。

それからは衛兵がなだれ込んで観衆ごと捉えられ、私とマリア嬢以外衛兵に捕まって連行された。

お父様が嬉々として復讐をしている。
私はそんなお父様のことをもう、お父様として見ることができないでいる。
私はマリア様と一緒にお茶をして、教会にいつも遊びに行くようになった。
教会の修道女は、貴族でありながらでもなれると言う。

私はマリア様の傍に居たい。
神の御許のもと、信仰していきたい。

そう、司教様に告げたら、通いの修道女として許された。
お父様は未だに何も気付いていない。

部屋をまとめ、家を出る手続きとしての書類を司教様経由で集めてもらい、正式に司教様の養女になるように準備もして貰った。
未だにお父様は復讐に夢中。

私はお父様と約束していたのに、それさえもお父様は破って復讐の方に行動をシフトしている。

私は出来上がった書類を部屋に置き、執事に引き止められはしたけど、最後の感謝と礼をして、家を出た。

司教様は私を優しく迎えてくれた。
彼の孫息子のエイダンともとても仲良くさせて貰っている。
いずれ、私とエイダンで結婚しようと約束もしている。

彼はとても優しく、それでいて、正しいことをしてくれる。
私が言うことに耳を貸してくれるし、駄目なことは駄目と教えてもくれる。

復讐がひと段落して、私がいないことに気付いたお父様が一度教会に来たらしいけど、新しいお父様が追い払ってくれた。
今の私は穏やかにマリア様を信仰している。

日々、ただただ、神への忠誠を誓い続ける。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました

Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』 それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。 最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。 そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。 さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...