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~オリビエ・エリイト公爵令嬢視点~
しおりを挟む毎日毎日働いて、やっと取れた連休にバスで日帰り旅行に行こうと計画していた。
それなのに。。
そのバスは崖から真っ逆さま。
シートベルトでその場では助かったけど、シートベルトは取れないし、切れないし。
身動きが出来ない。
そのうち野生の動物が集まってきた。
助けてくれようとしてくれた人も居たけど、最終的に見捨てられ、私は野犬に食い殺されて死んだ。
幸運だったのは、私を殺した野犬は一息に私の喉を食い破ったので、痛みが持続しなかったこと位。
次の瞬間、目を覚ましたら、強烈な殺意に身をすくめたところだった。
目の前の令嬢はどう考えても野犬のレベルではない。
もっと獰猛な動物の殺気。
(殺される。)
と確信した。
腰が抜けて、がくがくと震える。
気付けば、お漏らしをしてしまっていた。
助けてくれるはずの体の持ち主のご友人達は既に裏切って遠巻きにしている。
裏切られた。
見捨てられた。
このままだと殺される。
色んな葛藤が渦巻く。
でも、彼女との視線を逸らすことも出来ない。
震えて待っていたら、婚約者の第二王子が助けに来てくれ・・たと思っていたのに…どうして?どうして、貴方迄?
私とオリビエの感情が共鳴する。
私が失神する直前、彼女は私の二の腕を美味しそうと言うような目線で見ているなと思った。
夢の中、私はオリビエと対治した。
とても仲良くなった。
そんな和気あいあいとした話し合いの中、私とオリビエは協定を結んだ。
まだ、12歳の少女は35歳の私よりも随分と幼い。幼い彼女を守るためにも私は彼女との約束を守ることにした。
いずれ私はこの体から出て、成仏させてもらうように彼女に協力してもらうけど、それまで一緒に頑張ると言うとても小さな約束。
そして、現状を色々聞いて、とある共通点を見つけてしまった。
前世での乙女ゲームと人名が丸被りのキャラが多いのだ。
そして、オリビエの位置は悪役令嬢。
その乙女ゲーム自身はやったことが無い。積みゲーとして、説明書だけみて、声優目的だったので、いつかやろうと思ってたものだったから。名前以外何も覚えていない。でも、ざまぁ小説は通勤中よく読んでいたからきっとわかる。
無実の罪を背負いたくない。
一番は学園に行かないことだが、溺愛してくれる父にお願いをしたのにそれは拒否された。
第二王子との婚約はいずれ白紙にするけど、それが成立するまで待って欲しいと。そして、学園はしっかり通うようにと言われた。
私は絶望した。
オリビエも絶望した。
だから、私とオリビエは学園に通い、色んな噂に呑まれ、蔑まれ、色んなものを盗まれたり破られたりなどの地味な虐めにも耐え、その間ずっと白昼夢を見れるようになった。オリビエと一緒にずっと遊んだ。
食事は学園で変なものを食べさせられたせいで受け付けなくなった。
家ではそんなものを食べさせられては居なくてもあの目が怖い。
人を当然のように虐めるあの人たちの目。
むしろ、マリア嬢の殺意の方がまだマシだ。食べられそうではあるけれど。
助けてくれそうな人は居た。
でも、噂が嘘だと分かっている人も手を差し伸べてはくれなかった。
いつしか、オリビエと私は同じものになっていた。
記憶の共有が行われ、私がオリビエなのかオリビエが私なのかが分からない。
ただ、一つ共通していること。
「お父様の裏切り者。」
と言うもの。
3年間の苦行のピリオド。
卒業式の断罪イベントはなんの障害もなく執り行われることになった。
義弟は家でも学校でも私を蔑む。
だから、壇上の上に義弟ものぼっている。
(あぁ、もう、駄目だ。私は修道院送りになる。ざまぁ系の小説だとその途中で盗賊に襲われて×××な事だってある。あぁ、もう駄目だ。もう、終わりだ。)
つらつらと並べられる見覚えのない罪状。
婚約者の筈の第二王子がマリア嬢を抱きしめて、私を指差し嘲笑う。
(貴方が私を好きだと言って、始まった婚約でしたのに。)
(私、貴方のこと少なからず想っておりましたのに。。)
涙が止まらない。
そして、案の定、彼は私に定番のセリフを言ってのけた。
要は、婚約破棄と国外追放。
しかし、次の瞬間、助け船を出してくれたのは思わぬ人だった。
元々、凄く嫌そうに第二王子に抱かれていると思ったのだ。
殺意が最高潮に達しているマリア嬢は第二王子をアッパーカットした。
軽々と第二王子が吹っ飛ばされた。
そして、簡単に気絶しやがった。
それからは、あっと言う間。
嫌味なメガネは去勢され、陰険な剣士は喉に正拳突きで失神させられ、暴力ばかりの魔法騎士団長子息は魔力封じされてしまった。
弟は角でガタガタと震えて色を亡くしている。
そして、高らかに透き通った声で彼女は、マリア様は言ってくれた。
私の無実を。
それからは衛兵がなだれ込んで観衆ごと捉えられ、私とマリア嬢以外衛兵に捕まって連行された。
お父様が嬉々として復讐をしている。
私はそんなお父様のことをもう、お父様として見ることができないでいる。
私はマリア様と一緒にお茶をして、教会にいつも遊びに行くようになった。
教会の修道女は、貴族でありながらでもなれると言う。
私はマリア様の傍に居たい。
神の御許のもと、信仰していきたい。
そう、司教様に告げたら、通いの修道女として許された。
お父様は未だに何も気付いていない。
部屋をまとめ、家を出る手続きとしての書類を司教様経由で集めてもらい、正式に司教様の養女になるように準備もして貰った。
未だにお父様は復讐に夢中。
私はお父様と約束していたのに、それさえもお父様は破って復讐の方に行動をシフトしている。
私は出来上がった書類を部屋に置き、執事に引き止められはしたけど、最後の感謝と礼をして、家を出た。
司教様は私を優しく迎えてくれた。
彼の孫息子のエイダンともとても仲良くさせて貰っている。
いずれ、私とエイダンで結婚しようと約束もしている。
彼はとても優しく、それでいて、正しいことをしてくれる。
私が言うことに耳を貸してくれるし、駄目なことは駄目と教えてもくれる。
復讐がひと段落して、私がいないことに気付いたお父様が一度教会に来たらしいけど、新しいお父様が追い払ってくれた。
今の私は穏やかにマリア様を信仰している。
日々、ただただ、神への忠誠を誓い続ける。
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