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伯爵視点
しおりを挟む血統主義が優先され、魔力第一主義のこの風潮が、始まったのが、ガバチョル3世の世代。
ガバチョル3世は、沢山の側室。沢山の愛妾を持ちながら、平民との関係も激しく、その子孫は数えきれないほどだった。
ガバチョル4世の名を手に入れた3世の子は、ガバチョル3世をしい、その子のほとんどを虐殺した。
すると、結界を張れる人間が極端に減り、魔法を使える人間が減った。
しかし、そうなると今までは重宝されていなかった魔力が少なかった人間が重宝され、魔力第一主義が無くなったはずがまた再燃した。
現在のガバチョル5世の世代は既に3世の圧政のことなんか忘れ去られ、ほんの数十年前のことの筈の大虐殺のこともまるで忘れているらしく、二の舞を踏みまくっている貴族が一杯。正直、うんざりである。
そんな中、見つけたガバチョル3世の子孫。マリア。
3世の子であった父は既に酒に溺れて死んでいるし、洗脳するのにも丁度良い。敬愛する国王陛下の為にも魔力第一主義者の排除の為にもその子を手に入れようとしたのだが、マリアは既に奴隷商に売られていた。
急いで、奴隷商に取引をして、引き取ろうとしたら、例の商人は引き取る際に必ずどんな年齢でも性行為をすると言うではないか。貴族としてそれは困る。非常に困る。
予定よりも早いがマリアを回収するべく動いたら、マリアは、既に牢から出て逃げ回っている最中だったようで、水晶で確認したら、すぐそばの壁の影に隠れていた。部下に命令して捕らえ、馬車の中で軽く現状を説明。
どう見ても聞いていないが、一応、説明だけはする。
家に向かい入れ、お腹がペコペコらしいので、食事を準備させた。
初めは流動食を。後に身の付く食べ物にとシェフに指示しておく。
その間に国王との面談を打診。
数週間後に視察会議と併せて、面談することが決まる。
加えて、教会と密談。
恐らく、マリアはガバチョル3世の血を深く注いでいる。
ガバチョル3世はとても聖魔法に特化していた。
だから、マリアが聖女になる可能性が高い旨の会議だ。
神官がこっそり来て、鑑定し、そうだと確信されたが、発表は時期を見てとなった。
ガバチョル4世の名残で、5世である国王陛下の王妃は魔力が少ない庶子で王族の血を持たない公爵令嬢だった。彼女とその間に生まれた第一王子は薬にも毒にもなりそうにない土魔法が少し使える程度だった。しかし、重臣に押し付けられて成った側妃との間に生まれた子は、かなりの魔力持ちで、火魔法に特化しており、第二王子であるのにもかかわらず、貴族達は第二王子が王太子に相応しいとして、過半数の貴族はそれを当然として受け取っていた。
私は生まれながらに魔力があまりない。
その子もまた、魔力がほとんどない。
でも、魔力が無くても機械でそれが賄える技術を作り上げた。
魔力にこだわらなくても、いくらでも動かせる機械を。
でも、頑張ったが、この国の貴族は機械の技術を葬るほうに躍起になった。
王様は機械をもっと普及したいと言ってくれはしたが、彼にはそれをするための地盤が無かった。
私は国王陛下に教会の鑑定証明書と共に面談に行った。
結論として、聖女のいる伯爵を守る手続きは済み、内々にではあるが、貴族全体にうちを攻撃することを禁じる旨が伝わった。
多少未だに攻撃はあるけど、技術研究は続けられる程度には活動が可能になった。
今まで敬愛していた陛下に多少不満が出たが、それでも、不信になるほどではない。
次にいずれ国母にしたいマリアを教育することにした。
公爵令嬢レベルの教育だ。
しかし、マリアは学術的な者や体術的なものはあっと言う間に覚えるが、礼儀作法はなかなか覚えられない。
教師曰く
「野生の獣に教えるようにじわじわ芸を仕込んでいる気分になる。」
と訳の分からないことを言われた。
それでも、貴族令嬢然に見える程度にはなった。
家族がごたごた言ってきたが、そんな暇は私には無い。
次の計画の為に動かなくてはならない。
第二王子の失墜。
それこそ、私の望み。
マリアはとても綺麗だから、サクッと王子を篭絡させ、その後失恋でもしてくれたら、魔力がガクッと減ってどうにかなったりしたら、最高だなぁ。
とか言う妄想をマリアに言ってみた。
マリアは聞いていないようだったけど、そこは別にいい。
学生なんかにできない工作をするのは大人なのだから。
とか考えていたのだが、彼女は何もしていないのにも関わらず、第二王子が勝手に堕ちてきた。
マリアは第二王子のことを心底嫌っている。
私のことも微妙に嫌っているようではあるが。。
そんなことより、大司教の孫をマリアと接触させることの方が重要である。
そして、それも、時間をおいてクリアー。
孫様の働きで時期が来た。
マリアは聖女発表され、第二王子もそれを後押しした。
大司教のお孫様はその後、学園を休学して、マリアを奴隷にした人や奴隷商の直系の者たちを残らず排除する運動を始めている。
それは、どうでもいいので、放置。
だって、マリアを虐待していた奴隷商と調教師は既にこの世にはいない。
マリアが逃げる直前に魔物が檻から出ていたと報告を受けた。
どうやらあの奴隷商は魔物も密売していたらしく、その魔物が偶然、あの日に檻から出て、偶然、奴隷商と調教師を八つ裂きにして喰らっていたらしいので、肉片だって、ほとんど残っていないそうだ。
口封じに動く必要は皆無となった。
それから、仲間であるはずの公爵令嬢がマリアをイジメたとかいう噂が蔓延し始めた。
これには公爵から抗議が来た。
でも、公爵とうちで密偵を走らせてみれば、マリアもオリビエ令嬢もまるで関係のないところで話が進んでいる。
それどころか、促進しているのは婚約者の筈の第二王子ではないか。
オリビエ令嬢を休学させるかどうかを話し合いをしたが、結局、そのまま無理やりにでも登校させることで結論が出た。
決定的なこと。つまり、第二王子からの婚約破断で第二王子を確実に仕留める気でいるらしい。
元々、第二王子とオリビエ令嬢との婚約は第二王子からの猛烈なアタックが初めだった。
オリビエ令嬢は第二王子のことを好きだったらしいが、今は憎く感じているらしいし、公爵自身も令嬢が望むなら第二王子派でもいいってくらいのほぼ中間の派閥になっていたが、元はこちら側の派閥。
オリビエ令嬢が一番。それ以外はどうでもいい。と言った感じだったし、
「一応嫁に行くならと準備した養子の息子さえも第二王子の側近にして渡していたのに、第二王子にも養子の息子にも期待を思いっきり外された」
とおっしゃられて、廃嫡手続きも順調に進んでいるとか。
現在の宰相の長子が第二王子の側近として迎え入れられているのだが、宰相はうちの派閥と敵対関係。
騎士団長の息子も火魔法至上主義の魔法騎士団長の息子も第二王子の派閥。
これで、第二王子の派閥の人間は全てマリアに骨抜き。
マリア自身は彼らのことを嫌悪しているのに、欠片たりとも気付かないあいつ等は動物としての本能さえも忘れた愚か者で間違いない。
あの殺気を感じれないなんて、本当に驚かざるを得ない。
そんな中、敵対派閥はやらかすやらかす。
オリビエ嬢に罪を着せて、好き勝手やりたい放題。
中には中間派閥の者もやらかしたけど、それは公爵が対処。
どう対処したかは、気にすることはない。必要もない。
証拠が次から次へと貯まっていく。オリビエ令嬢、かなり落ち込んでいるのに気付かず、復讐に燃えている公爵。
ちょっと、振り向いてあげた方が良いと指摘してあげた方が良いだろうか?
そんな中で迎えた卒業式、最大のやらかしをすると既に計画は察知済み。
第一王子派閥は別の会場で卒業式を迎えているのを彼らは知らない。
この会場にいるすべての者が公爵にとっての断罪相手である。
マリアを含んでいるのには多少ムッとするところはあるが、私自身、彼女自身に然程興味はない。
私が第一としているのは機械を潤沢に作れる環境。
それだけだ。
結果は予想以上の成果である。
第二王子派でオリビエ令嬢の自称友人達の家は公爵が手回しし、借金だらけにされた。流通も止められている。
数人の令嬢は成人のみの夜会に出ていた証拠を暴露させ、貴族の良い所に嫁に行く先もなくさせ、教会は、教会で聖女を虐めていた令嬢の受け入れを拒否。
そんな令嬢がどうなるかは・・・まぁ、気にする必要はないか。
第二王子は無事に廃嫡。
去勢の後、平民落ちとなった。
側妃が騒いだけど、側妃の家と言うのは宰相の家だった。
その唯一の男児であったはずの宰相子息は、マリアに不能にされて、使い物にならない。
しかも、それを12歳の娘が宰相に居たのだが、その子を孕ませてどうにかしようとしていたのを公爵の部下の侯爵が止めた。
それを大々的に発表。
宰相はゆっくりとご退場いただく計画がちょっとかなりのスピードで進んでいる。
騎士団長子息は女性でか弱いはずのマリアに簡単にノックアウトされたことも女性に剣を抜いたこともあり、団長が激怒。すぐに廃嫡された。団長自身も責任を取って爵位を返上。今は一般の兵士として一から入団している。まだ28歳なので、何とかなるだろう。
彼自身は派閥よりも騎士道の方が大事だったので、こちらとしても問題ない。
まぁ、あの息子は気に入らなかったので、廃嫡の後に放り出されたところを拘束。
男娼街に売り飛ばした。
魔法騎士団長は元々筆頭公爵家の物だったのが、失言が多くて、伯爵家まで落ちた家だったので、今度の騒動で更に下の爵位に落ちるそうだ。
一番の血統主義思想の持主であり、魔力第一主義者が準男爵に堕ちてしまったら、求心力とやらは一体どこに行くかが楽しみである。
例の如く、その原因を作り出した子息は廃嫡されたので、そちらは別の特殊な男娼街に売り飛ばした。
魔力を吸い取られ、吸い取られた魔力を元に動く玩具にずっと苛まれるのは、どんな気分なんだろうか?
まぁ、それもどうでもいい。
妻と息子はいつの間にか家を出て言ったが、気にする必要はない。
家を存続させるつもりは毛頭ない。
なにせ、妻も息子も機械のことに理解が無かった。
そもそもこの家自体は魔力第一主義者だったのだ。
魔力もほとんど無いくせに。
妻も息子も魔力がほとんど無いくせに、魔力第一主義者なのは本当に理解に苦しい。
実家に帰ったようだけど、帰る実家とやらは受け入れてくれるのだろうか?
だって、既に公爵が制裁中だ。
あぁ、一等美味しいお肉を準備しよう。
マリアのことはとても素晴らしい道具だとは思っているが愛情は持ち合わせていない。彼女も私に対して持っていないだろう。
だけど、彼女はとても使い勝手がいい。
ご褒美は大事だと思う。
機械にも手入れが必要なように彼女にも手入れは必要なのだから。
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