33 / 44
33 多視点
しおりを挟む
「気をつけなくてはいけない貴族は、まぁ、既に手を打った家もあるが・・・」
そう言いながら、ノートに次々と名前を書いていくレインベリィ。
スラスラと五つほどの名前を書き、丸で大きく囲んだ。
「この五つの貴族は、勝手に俺の婚約者候補と名乗っているバカどもだ。そして処理済みだ」
「婚約者候補、ですか?」
「あぁ。もともと結婚に関してはいずれするんだろうなくらいにしか考えていなかったし、誰かに心奪われるほど惹かれた事もなければ、興味も持てなかったから候補すらあげていなかった」
「じゃあ、勝手に?そんなことが可能なんですか?」
「可能じゃないさ。何度も警告してる。だが、埒が明かない」
どこか諦めたように首を振るレインベリィ。
なにがなんでも竜妃の座を得ようとする貴族達に、ルリは呆れと嫌悪を、スイは『バカども』として貴族名を書き写した。
「まぁ、このバカ五家に関しては、度重なる警告を無視し勝手に竜帝の婚約者候補を名乗った罪で、アーンバル竜帝の名前で訴えた事を帝国中に触れ渡した」
「げっ・・・事実上、公開処刑じゃないですか」
「エリを帝国に迎えるんだ。害となる貴族共はいらんだろう」
ほぼ表情のない顔で言い放つ言葉は、まるで氷の様に冷たく竜帝でもある一面が垣間見えるようだった。
「そしてもう一人、既に血の繋がりすらないだろうと言う位、遠い親戚・・・らしい、ガイガー侯爵家のエラ令嬢。これはこの五家と比べ物にならないくらいバカだ」
「・・・え?」
「バ、カ?」
「あぁ。まるで子供が思いつく様な手で纏わりついてくる」
夜会、茶会、視察・・・とにかくレインベリィが訪れる場所に必ず現れ、接触を図ってくる。
目の前で突然転んだり、飛び出してきたり、誰も虐めてなどいないのに何かしら訴えてきたり。
無実の令嬢に罪を擦り付け、悲劇のヒロインぶる事で貴族間では有名になり、今では誰も彼女には近づかないというのに。
「ガイガー侯爵家・・・・確か、現当主の姉が前帝の妃の座を狙っていたとか・・・」
「スイはすごいな。その通りだ。当時も手段を選ばないやり方で竜妃の座を狙っていた」
「なるほど。今度は娘を陛下の妃にと」
「そこまでして竜妃にしなくてはいけない理由って何かあるのかしら?」
「くだらない理由さ。初代当主は非常に優秀だったんだけどね、その後の当主達は領地経営能力のない奴ばかり。借金まみれなんだ。返済の為に領地を担保に国から金を借りては返せないの繰り返し。今じゃ立派な無領地貴族さ」
「へ・・へぇ・・・」
「今時、そんなバカもいるんですね・・・」
「経営能力はないがプライドだけは異常に高くてね。何とか姉妹娘を竜帝に売ろうと必死さ」
「自称婚約者候補のバカ貴族の他に、借金の形に女子供を竜帝に売ろうとするこれまたバカ貴族・・・・帝国、大丈夫ですか?」
「まぁ、バカが目立ってしまって、そんな奴らしかいないように思うかもしれないが、優秀な貴族のほうが多いから安心してほしい」
「でも、ガイガー侯爵家の処分はどうなっているんですか?」
「ガイガー侯爵令嬢は子供じみた事ばかりで、どちらかと言うと被害を受けている貴族達から訴えられていてね。俺自身には実害がないので、今現在は様子見なんだ」
「令嬢は父親の指示で動いているんですかね」
「まぁ、俺に取入れとはいわれているだろうなぁ。それにかなり思い込みが激しいみたいでね、それで他の令嬢と問題を起こすらしい」
ルリとスイは互いに顔を見合わせ眉間に皺を寄せた。
「なんだか、一番嫌なタイプだね」
「そうだね。こういう子って言葉が通じなんだよね。自分の世界の中だけで生きているから」
「エリ様の存在を知ったら、絶対に接触してくるね」
「うん。何を為出かすか。まぁ、エリ様には物理的には傷一つ付けられることは無いと思うけど・・・・」
「取り敢えず滞在場所を決めないとね」
「えぇ。陛下、警備万全の宿屋を紹介して欲しいのですが」
スイの言葉に「え?」とレインベリィが首を傾げた。
レインベリィの表情にルリとスイも「え?」と首を傾げる。
「エリ達は城に滞在してもらう予定なのだが」
「お城にですか?」
ルリ達はレインベリィの様子から、恐らく江里を傍から離さないのではと思っていた。
このまま囲い込んで、妃にするつもりなのではと。
だが江里はそんな事など全く考えておらず、純粋に帝国観光だと思っている。
そこら辺の温度差が常識の違いでもあるのだと、ルリ達は思っている。
「陛下・・・そこら辺の事は、エリ様を説得してくださいね」
ルリ達は何処までも主である江里の願いを叶えるだけ。
どちらに転んでも、ルリ達がやるべきことは変わらないのだから。
そう言いながら、ノートに次々と名前を書いていくレインベリィ。
スラスラと五つほどの名前を書き、丸で大きく囲んだ。
「この五つの貴族は、勝手に俺の婚約者候補と名乗っているバカどもだ。そして処理済みだ」
「婚約者候補、ですか?」
「あぁ。もともと結婚に関してはいずれするんだろうなくらいにしか考えていなかったし、誰かに心奪われるほど惹かれた事もなければ、興味も持てなかったから候補すらあげていなかった」
「じゃあ、勝手に?そんなことが可能なんですか?」
「可能じゃないさ。何度も警告してる。だが、埒が明かない」
どこか諦めたように首を振るレインベリィ。
なにがなんでも竜妃の座を得ようとする貴族達に、ルリは呆れと嫌悪を、スイは『バカども』として貴族名を書き写した。
「まぁ、このバカ五家に関しては、度重なる警告を無視し勝手に竜帝の婚約者候補を名乗った罪で、アーンバル竜帝の名前で訴えた事を帝国中に触れ渡した」
「げっ・・・事実上、公開処刑じゃないですか」
「エリを帝国に迎えるんだ。害となる貴族共はいらんだろう」
ほぼ表情のない顔で言い放つ言葉は、まるで氷の様に冷たく竜帝でもある一面が垣間見えるようだった。
「そしてもう一人、既に血の繋がりすらないだろうと言う位、遠い親戚・・・らしい、ガイガー侯爵家のエラ令嬢。これはこの五家と比べ物にならないくらいバカだ」
「・・・え?」
「バ、カ?」
「あぁ。まるで子供が思いつく様な手で纏わりついてくる」
夜会、茶会、視察・・・とにかくレインベリィが訪れる場所に必ず現れ、接触を図ってくる。
目の前で突然転んだり、飛び出してきたり、誰も虐めてなどいないのに何かしら訴えてきたり。
無実の令嬢に罪を擦り付け、悲劇のヒロインぶる事で貴族間では有名になり、今では誰も彼女には近づかないというのに。
「ガイガー侯爵家・・・・確か、現当主の姉が前帝の妃の座を狙っていたとか・・・」
「スイはすごいな。その通りだ。当時も手段を選ばないやり方で竜妃の座を狙っていた」
「なるほど。今度は娘を陛下の妃にと」
「そこまでして竜妃にしなくてはいけない理由って何かあるのかしら?」
「くだらない理由さ。初代当主は非常に優秀だったんだけどね、その後の当主達は領地経営能力のない奴ばかり。借金まみれなんだ。返済の為に領地を担保に国から金を借りては返せないの繰り返し。今じゃ立派な無領地貴族さ」
「へ・・へぇ・・・」
「今時、そんなバカもいるんですね・・・」
「経営能力はないがプライドだけは異常に高くてね。何とか姉妹娘を竜帝に売ろうと必死さ」
「自称婚約者候補のバカ貴族の他に、借金の形に女子供を竜帝に売ろうとするこれまたバカ貴族・・・・帝国、大丈夫ですか?」
「まぁ、バカが目立ってしまって、そんな奴らしかいないように思うかもしれないが、優秀な貴族のほうが多いから安心してほしい」
「でも、ガイガー侯爵家の処分はどうなっているんですか?」
「ガイガー侯爵令嬢は子供じみた事ばかりで、どちらかと言うと被害を受けている貴族達から訴えられていてね。俺自身には実害がないので、今現在は様子見なんだ」
「令嬢は父親の指示で動いているんですかね」
「まぁ、俺に取入れとはいわれているだろうなぁ。それにかなり思い込みが激しいみたいでね、それで他の令嬢と問題を起こすらしい」
ルリとスイは互いに顔を見合わせ眉間に皺を寄せた。
「なんだか、一番嫌なタイプだね」
「そうだね。こういう子って言葉が通じなんだよね。自分の世界の中だけで生きているから」
「エリ様の存在を知ったら、絶対に接触してくるね」
「うん。何を為出かすか。まぁ、エリ様には物理的には傷一つ付けられることは無いと思うけど・・・・」
「取り敢えず滞在場所を決めないとね」
「えぇ。陛下、警備万全の宿屋を紹介して欲しいのですが」
スイの言葉に「え?」とレインベリィが首を傾げた。
レインベリィの表情にルリとスイも「え?」と首を傾げる。
「エリ達は城に滞在してもらう予定なのだが」
「お城にですか?」
ルリ達はレインベリィの様子から、恐らく江里を傍から離さないのではと思っていた。
このまま囲い込んで、妃にするつもりなのではと。
だが江里はそんな事など全く考えておらず、純粋に帝国観光だと思っている。
そこら辺の温度差が常識の違いでもあるのだと、ルリ達は思っている。
「陛下・・・そこら辺の事は、エリ様を説得してくださいね」
ルリ達は何処までも主である江里の願いを叶えるだけ。
どちらに転んでも、ルリ達がやるべきことは変わらないのだから。
11
お気に入りに追加
356
あなたにおすすめの小説
王太子殿下が私を諦めない
風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。
今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。
きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。
どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。
※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
優しい姉に婚約者を奪われ、裏切られました。他
ほったげな
恋愛
私には、ロマーナという姉がいる。また、ヘルトというイケメンの婚約者もいる。だが、ある日、姉が「ヘルトとの婚約を破棄してほしい」と言い出した。なんと、ヘルトとロマーナは愛し合っているという。ヘルトに確認したところ、肯定され、婚約破棄を言い渡された…。※短編集です。
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる