竜帝と番ではない妃

ひとみん

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腕の中で何やらもぞもぞ動き、目が覚めた。

「う・・ん?」
・・・・まぶし・・・・―――わっ、やっば!爆睡しちゃった!!
え?黒龍は?・・・・いない・・・?

広めのリビングだけど、黒龍が横たわっていると、当然のことだけど狭く感じていた。
だけど、いまは・・・広々と・・・・
って、え!?あの身体でどこ行った!??

寝起きで働かない頭を抱えながら起きようとした時、ギュっ抱き着くナニかに気が付いた。
「え?」
自分の腕の中にいたのは、七、八才位の男の子。

え?誰?・・・ここ、誰も入れないはずよね?え?え?

苦しい中途半端な態勢のまま固まっていると、少年が目を覚ました。
目をこする愛らしい仕草に一瞬目を奪われたけど、私を見上げてきたその瞳に益々頭の中が真っ白になった。

「・・・・・レイ、なの?」

くるんと愛らしいその瞳は、とても美しい琥珀色をしていたのだから。





太陽は天高く昇っていて、室内の時計を見れば十四時を指していた。
あれから混乱した私はスイをたたき起こし、しばし呆然とした後、ダイニングで遅い昼食を三人で摂っている。
今日の昼食はコッペパンサンド。
ソーセージはもちろんの事、ふわふわたまごに、野菜たっぷりチキンマスタード。定番の焼きそばは外せないわよね。
まぁ、ある物での簡単メニューだったんだけど・・・・

お子様レイは、焼きそばサンドが気に入ったのか、一生懸命に口を開けてパンにかぶりついている。

「めっちゃ、可愛いんだけど・・・・」

お子様レイは美しくも可愛らしい、とても整った容姿をしていた。
髪は私と同じ黒。目は黒龍と同じ琥珀色をしている。
消失した黒龍。そして、現れた子供。
名前を聞けば「レインベリィ・アーンバルだ」と黒龍の時とは全く違う、子供特有の高めの愛らしい声で答えてくれた。
思わず抱きしめて頬擦りしてしまった事は、致し方ないと思うのよ。

「スイ・・・大人が子供になるって事、ここでは良くあるのかしら?」
「私も初めて見ました。竜人族では、こう言う事例はこれまでもあったのでしょうか・・・」
「俺も聞いたことは無い。恐らくだが、最小限のエネルギーと魔力で生命機能を維持するために、子供の姿になったのかもしれない」
「えぇ!?まさに省エネ!!」
竜人族は省エネ機能も備わっているという事なの!?

・・・・にしても、可愛らしい・・・食べちゃいたいくらい、可愛らしい・・・!
ルリやスイも可愛らしくて、目いっぱい満足するまでかまい倒したけど・・・まぁ、満足と言うよりこれ以上やったら嫌われるだろうって所で・・・自制したのだけれどね。
でも、レイにはすでに頬擦りしまくっちゃったわ。
彼も驚いて固まっていたけど、後半は諦めたのかされるがままだったわね。
それにしても・・・
「その、省エネお子ちゃまレイ君は、いつまで続くのかしら?」
「変な名前を付けないでくれ。・・・恐らくだが、長くて十日ほどだと思う。流れ出た血が多すぎた」
確かに・・・失血死してもおかしくない量だったもの・・・

間に合って良かったとしみじみ思い、レイの頭を撫でた。
「こんななりだが、エリよりは遥かに年上だという事を忘れるなよ」
照れくさそうにそんなことを言うけれど、まんざらでもなさそうな表情が可愛くて、既に本日何度目になるのか・・・抱き着いてしまったわ。
口では文句を垂れるけれど、本気で嫌がっているわけではなく、反対に甘える様に身体を頬を摺り寄せてくるから私の抱擁はとどまることを知らない。・・・つまりは調子こいちゃったのよ。

そんな私達を、生暖かい目でスイが見ているなんて、レイを抱きしめる事に夢中だった私は気づく事すらなかった。
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