上 下
24 / 36

24

しおりを挟む
クロエは祖母であるルナティアからの手紙を受け、城の奥深い会議室に前回と同じ面々に集まってもらった。
そして一同、うーん・・・と、唸り声を上げる。

「連合国、ですか」
宰相アランドが呟く。
その呟きに、机いっぱいに広げているリージェ国の地図を眺めた。
地図の上には国を十五等分するように線が引かれ、番号が振られている。そして、その地域の特徴、条件が簡単に書かれていた。
例えば、

一、王都。
王が住む城有り。貧富の差が激しく貴族街の反対側にスラム街がある。
特産物なし。
街の公共事業が進んでいないせいか、城の周りのみ道路は石畳で舗装。
スラムの地域が大きく、衛生管理がよくない。
条件・・・スラムを解体、衛生管理が出来る国に限る。

二、農村
王都に一番近い農村。領主は他の領主に比べれば比較的まとも。
ただし、宝石コレクター。隠し財産有り。
特産物、主に小麦。リージェ国一の生産量を誇る。
近くを川が流れているが、汚染されている。
その水を引いての小麦は質が良くない。
条件・・・衛生管理が出来、土地改良の出来る国に限る。



十、地方農村 
ミロの花栽培地域。
土地は広いが、二十世帯しか住んでいない。
全ての住民は広大なミロの花を管理。
特産物なし。
此処だけは肥沃な土地で、近くを流れる川は清水。
条件・・・ミロの花を殲滅。農業知識の豊富な国に限る。

十一、地方農村
ミロの花加工工場あり。
労働者の為の宿舎あり。地元住民は加工工場で働く人間の管理、商売をしている。
特産物なし。
土地も枯れていている。西側に鉱山あり。良質な宝石が採れるが国は気付いていない為、未開発。
条件・・・土地改良と隣国クルア国も領地として管理できる国に限る。



十五、地方農村
加工現場で亡くなった人間を処理する遺体捨て場。
北側に大きな山があり、その麓に穴を掘り埋めている。
山は鉱山で質の良い金銀がとれる。こちらも未開発。
土地も肥沃とは言えないが比較的ましな方。
条件・・・遺体を回収し供養、隣国アルル国を領地とし管理できる国に限る。


などなどなど・・・・
地図に記入されているのはこの程度。だが付属に付けられている別紙には一枚の紙にひとつの土地の、その内状と条件が事細かに書かれていた。
そして、その中でどこが欲しいか教えろと言うのだ。

過去の歴史を振り返っても欲しいと思った土地は問答無用、力ずくで奪ってきた国がほとんどだ。
だが今はルナティアの影響が大きい所為か、当然のように友好的且つ平和的に過ごすことが出来ていた。
それが、一国を解体し連合国を作る。そしてどこが欲しいのか協力国に希望を出させるなど、前代未聞の事だ。
ましてやまだその国は存続しているというのに。

「おばあ様・・・素晴らしいですわ!」

クロエの一言に、自分達がおかしいのかと、周りの者達が一瞬引いた事は言うまでも無い。
思考が似ているのだろう。蛙の子は蛙とはよく言ったものだと、周りは思わず身震いをした。
「だって、戦争にしても内乱にしても、大きな被害を被るのは何の力も持たない平民ですもの。被害を最小限にする為には、速やかに次の為政者に移行しなくてはいけませんわ」
そんな周りの反応などお構いなしに、クロエは嬉々とした表情でその土地の条件を書いた紙を捲っていく。
クロエにしてみれば、ルナティアとルドルフがそうと決めたのなら、反対する理由など無いのだ。
かといって言いなりになっている訳でもない。あの国を落とすならば、先を見据えそれに対し何が起きても対処できるよう進めていかなくてはならない。
ルナティア達の提案は、それに適っているものなのだから反対する理由が無いだけなのだ。
周りはまだ国を落としていないのにと言うが、これは落としてから考えたのでは遅い。
「あの国を落とす事は、既に決まっている事です。各国共それに向けて準備しているのですから。ならば私達は、一つ先を見なくてはいけません。でしょ?」
そう言って笑うクロエの後ろにルナティアの影が見えた気がして、一同頷くしか出来ないのであった。

気を取り直し、その土地の特徴と条件を書かれた紙に目を通す。
「しかし上手い事を考えるものだな」
元宰相のグラスが唸る。
「確かに。正直うまみのある土地は少ないですが、一番手を出したくない土地にはちょうど良く鉱山がある」
現宰相アランドが感心した様に紙に目を走らせた。
「しかも貧しくてどうしようもない隣国と抱き合わせだなんて、考えたもんだぜ」
前近衛のダレンが指で紙を弾いた。
「それよりも俺は、この情報網の正確さに度肝を抜かれたよ。どれだけ探ってもここまでは掴めなかったからな」
元暗部ベレニスが悔しそうに顔を歪めた。
「まぁ、年季が違うのですから仕方ありませんよ」
現暗部のユミルが肩を窄めた。
「所で、何処に決めるにしろ、誰を国王にするんだ?」
現近衛のジャスパーが「どこも大変そうだよな」と頭を掻気ながら「為政者も決めること」という文字をなぞった。
それに反応したのは意外にもクロエだった。
「私はエドリード様を推薦しますわ!」
「え?父上を?」
イサークはもとより、周りの側近達は目を剥いた。
現在エドリード夫婦は、ルナティアに骨抜きにされている国々を回っている。
元々、フルール国の花祭で知り合った親交の深い国々を訪れたくて、うずうずしていたエドリード夫妻。
譲位した事をいい事に、諸国漫遊しているのだ。
ただ遊んでいるだけではなく、時には有力な情報をもたらしてくれる時もある。彼等の最終目的地は勿論、シェルーラ国だ。
「確かにこれだけ問題のある国を治めるとなれば、エドリード様位の実績のある方の方が良いとは思うが・・・」
果たして頷くだろうか・・・と、グラス。
「それは大丈夫ですわ」
自信ありげに答えるクロエにイサークが、「何故そう言いきれる?」と不思議そうに問う。
「簡単なことです。各国から為政者を出すという事は、シェルーラ国からはおばあ様とルドおじ様が出てくるはずです」
その言葉に一斉に皆が「あっ」と声を上げた。
「サハド国からは王弟のアンリ様が名乗りを上げるはず」
そう言って十五カ国全ての、予想される人物の名を上げていった。
名を上げられた錚々たる顔ぶれに、一同納得した様に頷いた。そして、

みんな、ルナティア様の信者ではないか・・・・と。

そんな人達が集まった連合国を想像し、一同固唾を飲んだ。
きっと宗主権を持つのは、ルナティアが治める国になる筈。
そうなれば世界最強の連合国・・・いや、連合国とは名ばかりの強国が出来上がるのは火を見るよりも明らか。

そんな未来を想像し、何故かはわからないが悪寒が走り、一同無意識に腕を擦るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

転生令嬢の婚約者様〜冷酷皇帝陛下が私を溺愛してきます

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは私が生きていた時代から五百年後の世界でした。  かつて男爵令嬢だった私は、子爵家の令息の幼馴染と婚約し、幸せになるはずでした。  ですが、私を見染めたという王太子殿下に、私は凌辱されました。  彼を愛していた私は殿下を許せず、舌を噛んで死んだはずなのです。  なのに、どうして私は生きているのでしょうか。  

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...