61 / 62
一章
61 王都見学1
しおりを挟む
■■■リタ視点
今日は待ちに待った久し振りの休日。休みの日はご主人様に相談してユリイカとブラドちゃんとも合わせている。
「うき、うきっ」
「何だか楽しそうね。そんなに王都に行くのが嬉しいのね」
「リタはルミナス村と森しか知らない。人がいっぱいいる場所は避けていたから」
仕事は聖女に丸投げしているので少しだけ申し訳ない気持ちがある。でも、リタは好きな時に出勤していいと言われているのであまり気にしないことにする。
代わりといってはなんだけど、祈りの間の台座の上には小さな神獣様人形を置いておいた。今後、私がお休みする際は置いておこうと思う。我ながら可愛らしく作れたと思う。
「そうよね……。お休みも久し振りでしょ。ゆっくり楽しんできてね。あと、王都で暴れちゃダメよ」
「リタ暴れない」
「何かあっても神殿が守ってくれるとは思うけど、物事には限界というものがあるのよ」
心配というか失礼なことを言ってくる聖女だ。彼女が指示をして神殿関係者を見張りにつけているのは知っている。王都に行けばかなりの数の神官が私たちを離れた場所から警護するのだろう。
まあ警護というより、問題が起こらないように陰ながら対処してくれたりという感じだと思う。それもユリイカが暴れたら難しいと思うけど。
「いってきます」
手を振ってくれるのは聖女だけ。今朝は早くからお祈りの修行があるとかでレティ様はもういない。聖女見習いのルーミィが早朝から迎えにきていた。
ルーミィとは神殿でよく顔を会わせる機会があるから少しだけ仲良くなった。ルーミィがやる聖女の決めポーズというピースサインは私もお気に入りだ。
ご主人様は最近牧場のことで頭がいっぱいなので、今日も朝から牧場の柵作りとかを進めているのだろう。実は何かに使えるかと思って糸を束ねてロープにしている。王都から戻ったらご主人様に渡そうと思っている。喜んでもらえると嬉しい。
「あっ、リタさんおはようございます」
「おはようブラドちゃん。ユリイカは?」
「ユリイカさんまだ寝てて。起きてくれないのです」
「乗合馬車の時間があるから叩き起こそう」
「叩くのはやめた方がいいかと……」
私はこんなにも楽しみにしていたのに、ユリイカは寝坊するぐらいどうでもよかったというのか。
扉を開け、ずんずんと中へ入っていくと寝相の悪い姿でリビングのソファーで寝ているユリイカがいた。
「ユリイカさん、お出掛けが楽しみ過ぎて眠れなかったみたいなんです。王都とか人がいっぱいでこわいと思うんですけど……」
「そうか。眠れなくて寝坊したのか。なら許そう。ユリイカは私が馬車まで運ぶからブラドちゃんは乗合馬車のチケットを準備しておいて」
「は、はい。わかりました」
私たち三人にはちょっとした共通点がある。一つはご主人様の部下であるということ。次に友達が少ないということ。ユリイカも若くして四天王とかになったらしく、友達というより部下が多いと言っていた。ブラドちゃんは人見知りだし言わずもがな友達はいない。
私自身、今までがモンスターだったから人と友達になるというのはハードルが高い。私が友達だと思っているのはこの二人とルーミィ、あと聖女も入れておこうか。つまり、まだ四人しかいない。
でもたった四人だけなのに、こんなに楽しい日々を送れるということに驚きを隠せない。友達がもっと増えたらどんな暮らしが待っているのだろう。想像もできない楽しい世界が待っているのかもしれない。
「大人二枚と子供一枚」
「はいよー、チケット確認オッケー。トイレは済ませたかい?」
「問題ない」
「そちらの子は寝てるのかい?」
「うん、寝坊」
「寝坊はわかるけど、寝たまま馬車に乗せられる子は初めてみたよ。後ろの席が少し広いから連れていきな。揺れるけど少しは寝られるはずだよ」
「ありがとう」
馬車でしばらく暇な時間ができる。手提げ袋の中から作りかけのお人形を取りだして糸を編みこんでいく。
「わぁー、これはレティ様とルーミィちゃんですか?」
「うん、ルーミィに頼まれた」
レティ様は頭の上にスライムを乗せた可愛らしい姿で、ルーミィは決めポーズのピースサインをしながら杖を構えている。
「リタさんは器用ですねぇ」
「ブラドちゃんにも何か作る?」
「いいんですか! じゃあ、ボクは神獣様人形が欲しいです」
「私?」
「はいっ。あの小さくデフォルメされたのが可愛らしいのです」
「わかった」
一度作った物なので、時間もかからずにすぐ作れると思う。子供服の完成に合わせて間に合うように作りあげよう。
「ん……ううん……」
「ユリイカ姉さん、そろそろ起きてください」
「ブラド、あとちょっと……」
「何で揺れる馬車の中でまだ寝てられるんですか」
この調子だと王都に到着するまで起きそうにないな。私は今のうちにお人形を完成させてしまおう。帰りの馬車は子供服のデッサンになると思うし。
今日は待ちに待った久し振りの休日。休みの日はご主人様に相談してユリイカとブラドちゃんとも合わせている。
「うき、うきっ」
「何だか楽しそうね。そんなに王都に行くのが嬉しいのね」
「リタはルミナス村と森しか知らない。人がいっぱいいる場所は避けていたから」
仕事は聖女に丸投げしているので少しだけ申し訳ない気持ちがある。でも、リタは好きな時に出勤していいと言われているのであまり気にしないことにする。
代わりといってはなんだけど、祈りの間の台座の上には小さな神獣様人形を置いておいた。今後、私がお休みする際は置いておこうと思う。我ながら可愛らしく作れたと思う。
「そうよね……。お休みも久し振りでしょ。ゆっくり楽しんできてね。あと、王都で暴れちゃダメよ」
「リタ暴れない」
「何かあっても神殿が守ってくれるとは思うけど、物事には限界というものがあるのよ」
心配というか失礼なことを言ってくる聖女だ。彼女が指示をして神殿関係者を見張りにつけているのは知っている。王都に行けばかなりの数の神官が私たちを離れた場所から警護するのだろう。
まあ警護というより、問題が起こらないように陰ながら対処してくれたりという感じだと思う。それもユリイカが暴れたら難しいと思うけど。
「いってきます」
手を振ってくれるのは聖女だけ。今朝は早くからお祈りの修行があるとかでレティ様はもういない。聖女見習いのルーミィが早朝から迎えにきていた。
ルーミィとは神殿でよく顔を会わせる機会があるから少しだけ仲良くなった。ルーミィがやる聖女の決めポーズというピースサインは私もお気に入りだ。
ご主人様は最近牧場のことで頭がいっぱいなので、今日も朝から牧場の柵作りとかを進めているのだろう。実は何かに使えるかと思って糸を束ねてロープにしている。王都から戻ったらご主人様に渡そうと思っている。喜んでもらえると嬉しい。
「あっ、リタさんおはようございます」
「おはようブラドちゃん。ユリイカは?」
「ユリイカさんまだ寝てて。起きてくれないのです」
「乗合馬車の時間があるから叩き起こそう」
「叩くのはやめた方がいいかと……」
私はこんなにも楽しみにしていたのに、ユリイカは寝坊するぐらいどうでもよかったというのか。
扉を開け、ずんずんと中へ入っていくと寝相の悪い姿でリビングのソファーで寝ているユリイカがいた。
「ユリイカさん、お出掛けが楽しみ過ぎて眠れなかったみたいなんです。王都とか人がいっぱいでこわいと思うんですけど……」
「そうか。眠れなくて寝坊したのか。なら許そう。ユリイカは私が馬車まで運ぶからブラドちゃんは乗合馬車のチケットを準備しておいて」
「は、はい。わかりました」
私たち三人にはちょっとした共通点がある。一つはご主人様の部下であるということ。次に友達が少ないということ。ユリイカも若くして四天王とかになったらしく、友達というより部下が多いと言っていた。ブラドちゃんは人見知りだし言わずもがな友達はいない。
私自身、今までがモンスターだったから人と友達になるというのはハードルが高い。私が友達だと思っているのはこの二人とルーミィ、あと聖女も入れておこうか。つまり、まだ四人しかいない。
でもたった四人だけなのに、こんなに楽しい日々を送れるということに驚きを隠せない。友達がもっと増えたらどんな暮らしが待っているのだろう。想像もできない楽しい世界が待っているのかもしれない。
「大人二枚と子供一枚」
「はいよー、チケット確認オッケー。トイレは済ませたかい?」
「問題ない」
「そちらの子は寝てるのかい?」
「うん、寝坊」
「寝坊はわかるけど、寝たまま馬車に乗せられる子は初めてみたよ。後ろの席が少し広いから連れていきな。揺れるけど少しは寝られるはずだよ」
「ありがとう」
馬車でしばらく暇な時間ができる。手提げ袋の中から作りかけのお人形を取りだして糸を編みこんでいく。
「わぁー、これはレティ様とルーミィちゃんですか?」
「うん、ルーミィに頼まれた」
レティ様は頭の上にスライムを乗せた可愛らしい姿で、ルーミィは決めポーズのピースサインをしながら杖を構えている。
「リタさんは器用ですねぇ」
「ブラドちゃんにも何か作る?」
「いいんですか! じゃあ、ボクは神獣様人形が欲しいです」
「私?」
「はいっ。あの小さくデフォルメされたのが可愛らしいのです」
「わかった」
一度作った物なので、時間もかからずにすぐ作れると思う。子供服の完成に合わせて間に合うように作りあげよう。
「ん……ううん……」
「ユリイカ姉さん、そろそろ起きてください」
「ブラド、あとちょっと……」
「何で揺れる馬車の中でまだ寝てられるんですか」
この調子だと王都に到着するまで起きそうにないな。私は今のうちにお人形を完成させてしまおう。帰りの馬車は子供服のデッサンになると思うし。
0
お気に入りに追加
739
あなたにおすすめの小説
マヨマヨ~迷々の旅人~
雪野湯
ファンタジー
誰でもよかった系の人に刺されて笠鷺燎は死んだ。(享年十四歳・男)
んで、あの世で裁判。
主文・『前世の罪』を償っていないので宇宙追放→次元の狭間にポイッ。
襲いかかる理不尽の連続。でも、土壇場で運良く異世界へ渡る。
なぜか、黒髪の美少女の姿だったけど……。
オマケとして剣と魔法の才と、自分が忘れていた記憶に触れるという、いまいち微妙なスキルもついてきた。
では、才能溢れる俺の初クエストは!?
ドブ掃除でした……。
掃除はともかく、異世界の人たちは良い人ばかりで居心地は悪くない。
故郷に帰りたい気持ちはあるけど、まぁ残ってもいいかなぁ、と思い始めたところにとんだ試練が。
『前世の罪』と『マヨマヨ』という奇妙な存在が、大切な日常を壊しやがった。
毛玉スライム飼ったらこうなる
一樹
ファンタジー
ダイエットのため、散歩が出来るペットを飼うことに決めた主人公は、ある日友達の提案で里親募集の張り紙をホームセンターに見に行く。
他のスーパーなどの休憩スペースにも提示されていることを知り、友達と一緒にハシゴをすることに。
その矢先、とある建物の前でぴょんぴょん跳ねている毛玉を見つけ、保護するのだった。
※小説家になろうでも投稿しています。
貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる