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一章

35 ルミナス村の守り神

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 聖女とリタが村に戻ってくると大歓声が上がった。どうやらこの三人組は王都ではそれなりに有名な犯罪者らしく、それを無力化した神獣様の活躍に観光客から驚きの声があがっているのだ。

 聖女におんぶされているピースについては一部嫉妬の怒号が飛んでいるものの、本人は寝ているので起きてからいじられるのは確定だろう。ジャスティンさんも安心したのか泣きながら聖女にお礼を言っている。

「神獣様は本当にルミナス村を守ってくださる。周辺のモンスターだけでなく、今回は村人まで救ってくださった」

 多分だけど半信半疑だった人たちからしたら、今回の一件で少しは信用を得られたのではないだろうか。

「みなさん、ご心配お掛けしましたが誘拐された村人はこの通り全員無事です。聖女と神獣様がいるルミナス村で悪事を働くとは頭の悪い犯罪者ですね」

 これはルミナス村が安全だという聖女なりのアピールなのだろう。こういう発言は村人としてもありがたい。僕の隣にいる村長の奥様とかすぐに拍手を送っている。

 聖女は手を振って歓声に応えているし、それを真似るようにして手を振るホーリータラテクト姿の神獣様リタにも感謝の声が飛んでいる。

 ちなみに勇者と三人組は神官さん達が回収をしており、そのまま教会に運び入れるようだ。ぐっすり眠っており三人組とか引き摺られてきたにもかかわらず起きる気配もない。

 やはり魔力を練り過ぎてしまったらしい。レティが絡むと力が入ってしまうのは僕の反省点だ。

「レティちゃんもピースもよかったわねぇ」

「襲われたと聞いた時は生きた心地がしませんでしたけど、無事に戻ってきてくれて本当に良かったです」

 村長の奥様が心配してくれたようで声をかけてくれた。小さい頃からレティを可愛がってくれていたので我が子のように思うところもあるのだろう。

 村の人たちや観光客も事件があっという間に解決したことで、治安を不安に思うよりも聖女と神獣様がいる安心感が勝っている感じなのだと思う。

「観光地になると治安が悪くなるとも聞くが、ルミナス村には神獣様がいるから何の問題もねぇな」
「ああ、これなら安心して気軽に温泉に来れるってもんよ」

 多分だけど聖女と一緒にA級犯罪者を倒したということに意味があるのだろう。いくら神殿が神獣様認定したところで、リタはあくまでもテイムモンスターだ。

 それでも聖女と共に戦って、殺さずに無力化したという事実がより神獣様の評価を高めている。聖女と共闘するぐらいには知能も高く、A級犯罪者を傷一つ付けずに縛り上げているのだ。

 冒険者ギルドでこの三人組に関してのクエストは生死問わずの討伐依頼という扱いになっているそうだ。つまり生きたまま捕まえるのが難しいという判断をしていることになる。

「聖女様にも会えるし、温泉も気持ちがいい。出てくる野菜料理も絶品だし言うことねぇな」
「しかも神獣様がいるから村は安全ときた」
「王都近郊にこんな観光地があるなら申し分ねぇ」

 レティが誘拐されたと報告があった時はどうしたものかと少し慌ててしまったが、終わってみれば万事上手くいってしまった。

 最近の僕はついている。絶望から抜け出し始めているといっても過言では無いかもしれない。

 ちなみにA級犯罪者の三人組と勇者アシュレイは共に明日の馬車で王都へお帰りいただくことになった。というのも聴取などは王都の神殿で行われるようだ。

 聖女とリタに関してはそのままルミナス村に残ることが決まっている。観光地ルミナス村としては、ミルフィリッタ教会の目玉でもある二人が居ないというわけにはいかない。代わりに全ての事情を把握してもらった神官さんと大司教様が一緒に戻ることとなった。

 事情が事情だけに、王宮とは距離を置いて神殿にて聴取するということらしい。完全に王宮が神殿を敵に回した形になっている。

 勇者の血を欲するがあまり、神殿肝入りの観光事業に味噌をつけたのだ。大司教様もスライムのように体を揺らしてプンプンに怒っている。

 もちろん、僕もこのままにしておくつもりはない。ダークネスインビジブルを掛けたスライムを潜りませて事情は全て聞かせてもらうつもりだ。

 しばらく様子は見るとしても、王宮と闇ギルドについては情報を収集しつつ、今後レティの安全をどう確保するかを考えよう。勇者のせいで飛んだとばっちりだ。

 とにかく、僕の妹に手を出したことは絶対に後悔させてやる。首謀者は全て残らず抹殺してやろう。

「ほらっ、怖い顔してないで早くレティちゃんの所へ行ってあげなさい」

「は、はい。そうですね」

 神獣の姿のリタからレティを受けとり、傷一つ無かったことに少し気持ちが落ち着いた。

 レティをこんな風に抱っこするのは随分と久し振りのことだ。知らない間に大きく成長したものだなと改めて思う。

 どうも小さい頃のイメージが強く、病気になる度に心配して看病していた過去を思い出してしまう。今は食生活も改善されているし、これからもっと美しく成長していくのだろう。
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