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一章
3 レティ
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レティも小さい頃の病弱な体から回復し、今ではすっかり元気に育っている。まだ子供ではあるけどその容姿は可愛らしく、村でも評判の美人さんになるのではと噂されている。お兄ちゃんとしてもとても鼻が高い。
同年代の子と比べて肌は白くきめ細やかでストロベリーブロンドの髪はツヤがあって美しい。
これは僕にも言えることでもあるんだけど基本的に外見的な美しさ清潔感というのはスライムのおかげである。
一般的に農家の子であれば畑の手伝いで一日中炎天下の中作業することが多い。そうなると日焼けもするし髪だって傷みやすい。同い年の村の子供たちは元気ではあるけど泥だらけで汚いし、髪もボサボサで肌は真っ黒に日焼けしてしまっている。
ところが、わが家には出来たスライムがいる。
夜寝る時は枕のようにして一緒に布団に入り、肌の角質除去や髪のトリートメントからボディエステまで行って身体を整えてくれる。最近では香りの良い野草を吸収したスライムがやって来てフローラルな香りまでつけてくれるようになった。
全く出来たスライムだ。こんなことなら魔王時代にもテイムしておけばよかったと後悔しているほどだ。
僕がテイムしたスライムなのにレティに対する優先度が高くなっている気がするが、保護対象として手厚く面倒をみているのだろう。まあ、僕のレティへの親愛の情を感じて行動に移しているのだろう。きっとそうだと思いたい……。
「うーん! パスタ美味しい。また野菜の質が良くなったのかな」
「スライムたちがしっかり畑の手入れをしてくれてるからね。最近はコツを掴んできたみたいで作物ごとに水分量や肥料を調節してるらしいよ」
「えらいのね。他の人もスライムをテイムすればいいのに。こーんなに可愛いのにね」
そう言って膝の上に乗っかっているスライムを抱きしめるレティ。レティにとってスライムは友達であり仲間であり、今はクッションだ。
家の中で一人でいてもさみしくないし、自分の仕事を手伝ってくれる。いつも一緒なので、その連携もいつの間にやらかなり高度になってきている。
洗濯した服は生地を傷めないように適度に脱水してくれるし、掃除をして集めたゴミは全部吸収してくれる。最近は掃除をしすぎて、天井裏までホコリ一つない農家の家とか我が家ぐらいのものだろう。
「普通のスライムだとここまで便利ではないからね」
「そっかー、そうだよね。何でお兄ちゃんのテイムするスライムはこんなに賢いのかな」
「何でだろうね。スライムと相性がいいのかな」
村長さんも黒いスライムは見たことも聞いたこともないと言っていた。確かにこのブラックメタルスライム種は魔族領でもかなり珍しいく、どうやって進化していくのか長年不明とされていた。
それが、普通のスライムをダークネステイムするだけで進化するとは夢にも思わなかったよ。
他に要因があるのかはわからないけど、僕の魔王レベルの魔力濃度が関係している可能性も否定出来ない。そもそも最弱のスライムをわざわざテイムする者など魔族にはいなかったのだけどね。
「そういえば、さっき村長の奥さまが来てね、お兄ちゃんにお願いしたいことがあるんだって」
「へぇー村長の奥さまが、何かあったのかな。お昼休憩が終わったら行ってくるよ」
ルミナス村の実質的なナンバー2といってもいい村長の奥さま。村の女衆のまとめ役であり、彼女の意見が村長を動かすこともあるので注意が必要である。
とはいっても、基本的に優しくて頼りがいのある方だ。貧乏だった頃の我が家を助けてくれていたこともあって、レティも母親のように慕っている。
というわけで、レティの料理を堪能した僕は村長の家へとやってきた。
「すみません、レンです。奥さまはいらっしゃいますか?」
「ああ、来たかレン。呼んだのは私なんだよ。さあさあ入りなさい」
村長の家に入ると奥さまがすぐに冷たいお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「いいのよ。レティちゃんの分は後で包んでおいてあげるから、それはレン君が食べなさい」
レティは甘いものが好きなので、外でもらったお菓子は僕が食べずにお土産にすることを知ってのことだろう。
「なんだか、すみません……」
にこにこ顔の奥さまは、いいのよーと言いながら席を外していった。
「レン、実はなルミナス村に大きな教会が建立されることになったんだ」
「それは凄いですね」
「最近この地が幸運の村と呼ばれているのは知っているな?」
「は、はい。王都でそのような噂話があるのは聞いております」
ルミナス村周辺はスライムたちが狩りをすることで、まるで祝福でも受けたかのようにモンスターが一切寄りつかないという噂が立ってしまったらしい。
「勇者様による魔王討伐から五年。神殿はこの地を魔王討伐の象徴として観光地として整備することを決めたそうだ」
「ええぇぇー!」
「神殿の大司教扱いとして聖女様が来ることになった」
魔王ゼイオンを倒した勇者パーティの聖女がルミナス村にやってくるとは……。
バレたら絶対殺される。魔王のままなら何とでもできただろうが、今の僕はただの村人で農家のレン。太刀打ちなどできるわけがない。
「せ、聖女が……」
絶対に僕が魔王だと見つかるわけにはいかない。せっかく安住の地にやってきたというのにこんな絶望があってたまるものか。
「こらっ、様をつけなさい。聖女ミルフィーヌ様と」
「す、すみません」
「気をつけなさい。それでな、神殿としても理由はどうあれ幸運の村の名前を利用した観光地として期待をしているらしくな。ルミナス村としても一大観光産業を立ち上げることになった」
「はぁ」
「村の農家は全員が畑を放棄して土産物屋や名物料理を提供する飲食店、大型の宿屋に転職することを決めた。何もしなくても人がやってくるのだからな。大変な農作業はみんな辞めると言っている」
「せっかく良い作物が育つ畑になったというのに……」
「そうなんだ。だが、最近畑が良くなったのはレンとスライムのおかげだろう。そこで、畑に関しては全てをレンな任せることにしたのだ」
「えっ、いいんですか?」
「よい。村の者もそうしたいと言っている。みんなレンのスライムのおかげで裕福になったのだからな」
「そういうことでしたら畑と作物は僕にお任せください。飲食店が増えるのなら美味しい作物も必要でしょう」
「うむ、頼むぞ。それから、来週にも村の下見に勇者パーティがルミナス村に来ることなっているから失礼のないようにな」
「は、はい……」
聖女だけでなく勇者パーティが揃ってやってくるとは……。しばらく大人しくしてなければならない。あと暗黒魔法は絶対使わないようにしとこう。聖女とか賢者に勘づかれたら面倒だ。
同年代の子と比べて肌は白くきめ細やかでストロベリーブロンドの髪はツヤがあって美しい。
これは僕にも言えることでもあるんだけど基本的に外見的な美しさ清潔感というのはスライムのおかげである。
一般的に農家の子であれば畑の手伝いで一日中炎天下の中作業することが多い。そうなると日焼けもするし髪だって傷みやすい。同い年の村の子供たちは元気ではあるけど泥だらけで汚いし、髪もボサボサで肌は真っ黒に日焼けしてしまっている。
ところが、わが家には出来たスライムがいる。
夜寝る時は枕のようにして一緒に布団に入り、肌の角質除去や髪のトリートメントからボディエステまで行って身体を整えてくれる。最近では香りの良い野草を吸収したスライムがやって来てフローラルな香りまでつけてくれるようになった。
全く出来たスライムだ。こんなことなら魔王時代にもテイムしておけばよかったと後悔しているほどだ。
僕がテイムしたスライムなのにレティに対する優先度が高くなっている気がするが、保護対象として手厚く面倒をみているのだろう。まあ、僕のレティへの親愛の情を感じて行動に移しているのだろう。きっとそうだと思いたい……。
「うーん! パスタ美味しい。また野菜の質が良くなったのかな」
「スライムたちがしっかり畑の手入れをしてくれてるからね。最近はコツを掴んできたみたいで作物ごとに水分量や肥料を調節してるらしいよ」
「えらいのね。他の人もスライムをテイムすればいいのに。こーんなに可愛いのにね」
そう言って膝の上に乗っかっているスライムを抱きしめるレティ。レティにとってスライムは友達であり仲間であり、今はクッションだ。
家の中で一人でいてもさみしくないし、自分の仕事を手伝ってくれる。いつも一緒なので、その連携もいつの間にやらかなり高度になってきている。
洗濯した服は生地を傷めないように適度に脱水してくれるし、掃除をして集めたゴミは全部吸収してくれる。最近は掃除をしすぎて、天井裏までホコリ一つない農家の家とか我が家ぐらいのものだろう。
「普通のスライムだとここまで便利ではないからね」
「そっかー、そうだよね。何でお兄ちゃんのテイムするスライムはこんなに賢いのかな」
「何でだろうね。スライムと相性がいいのかな」
村長さんも黒いスライムは見たことも聞いたこともないと言っていた。確かにこのブラックメタルスライム種は魔族領でもかなり珍しいく、どうやって進化していくのか長年不明とされていた。
それが、普通のスライムをダークネステイムするだけで進化するとは夢にも思わなかったよ。
他に要因があるのかはわからないけど、僕の魔王レベルの魔力濃度が関係している可能性も否定出来ない。そもそも最弱のスライムをわざわざテイムする者など魔族にはいなかったのだけどね。
「そういえば、さっき村長の奥さまが来てね、お兄ちゃんにお願いしたいことがあるんだって」
「へぇー村長の奥さまが、何かあったのかな。お昼休憩が終わったら行ってくるよ」
ルミナス村の実質的なナンバー2といってもいい村長の奥さま。村の女衆のまとめ役であり、彼女の意見が村長を動かすこともあるので注意が必要である。
とはいっても、基本的に優しくて頼りがいのある方だ。貧乏だった頃の我が家を助けてくれていたこともあって、レティも母親のように慕っている。
というわけで、レティの料理を堪能した僕は村長の家へとやってきた。
「すみません、レンです。奥さまはいらっしゃいますか?」
「ああ、来たかレン。呼んだのは私なんだよ。さあさあ入りなさい」
村長の家に入ると奥さまがすぐに冷たいお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「いいのよ。レティちゃんの分は後で包んでおいてあげるから、それはレン君が食べなさい」
レティは甘いものが好きなので、外でもらったお菓子は僕が食べずにお土産にすることを知ってのことだろう。
「なんだか、すみません……」
にこにこ顔の奥さまは、いいのよーと言いながら席を外していった。
「レン、実はなルミナス村に大きな教会が建立されることになったんだ」
「それは凄いですね」
「最近この地が幸運の村と呼ばれているのは知っているな?」
「は、はい。王都でそのような噂話があるのは聞いております」
ルミナス村周辺はスライムたちが狩りをすることで、まるで祝福でも受けたかのようにモンスターが一切寄りつかないという噂が立ってしまったらしい。
「勇者様による魔王討伐から五年。神殿はこの地を魔王討伐の象徴として観光地として整備することを決めたそうだ」
「ええぇぇー!」
「神殿の大司教扱いとして聖女様が来ることになった」
魔王ゼイオンを倒した勇者パーティの聖女がルミナス村にやってくるとは……。
バレたら絶対殺される。魔王のままなら何とでもできただろうが、今の僕はただの村人で農家のレン。太刀打ちなどできるわけがない。
「せ、聖女が……」
絶対に僕が魔王だと見つかるわけにはいかない。せっかく安住の地にやってきたというのにこんな絶望があってたまるものか。
「こらっ、様をつけなさい。聖女ミルフィーヌ様と」
「す、すみません」
「気をつけなさい。それでな、神殿としても理由はどうあれ幸運の村の名前を利用した観光地として期待をしているらしくな。ルミナス村としても一大観光産業を立ち上げることになった」
「はぁ」
「村の農家は全員が畑を放棄して土産物屋や名物料理を提供する飲食店、大型の宿屋に転職することを決めた。何もしなくても人がやってくるのだからな。大変な農作業はみんな辞めると言っている」
「せっかく良い作物が育つ畑になったというのに……」
「そうなんだ。だが、最近畑が良くなったのはレンとスライムのおかげだろう。そこで、畑に関しては全てをレンな任せることにしたのだ」
「えっ、いいんですか?」
「よい。村の者もそうしたいと言っている。みんなレンのスライムのおかげで裕福になったのだからな」
「そういうことでしたら畑と作物は僕にお任せください。飲食店が増えるのなら美味しい作物も必要でしょう」
「うむ、頼むぞ。それから、来週にも村の下見に勇者パーティがルミナス村に来ることなっているから失礼のないようにな」
「は、はい……」
聖女だけでなく勇者パーティが揃ってやってくるとは……。しばらく大人しくしてなければならない。あと暗黒魔法は絶対使わないようにしとこう。聖女とか賢者に勘づかれたら面倒だ。
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