50 / 71
四十九話目 ランクアップ試験
しおりを挟む
ギルド併設の訓練場に案内されると、一組の冒険者パーティを紹介された。彼らは若くしてCランクの冒険者になったそうで、ランクアップ試験の試験官を任される程度にはギルドの評価も高いらしい。
「ご紹介します。疾風の牙のブルックさんです」
「疾風の牙?」
「あっ、パーティの呼び名ですね。有名になると、得意とする戦法に合わせて周りから呼ばれるようになるのです」
「そうなんですね。よろしくお願いしますブルックさん。僕はレックスです」
「こちらこそ。今日登録したばかりの新人さんと伺いました。私たちでみなさんの実力を測れるかわかりませんが、よろしくお願いします」
意外にも礼儀正しいパーティなようでホッとした。Cランクの冒険者なら、彼らと際どい勝負をして見せればDランクぐらいにはしてもらえるかもしれない。みんなを見ると任せろと言わんばかりに頷いている。ちゃんとわかっているようだ。上手く手を抜いてもらいたい。
「それでは、各々一体一にて対戦してもらいます。武器は模擬用を使い、魔法による直接攻撃は無しとします」
僕の対戦相手はリーダーのブルックさんらしい。アイミーには前衛タイプのがっちり体型の戦士、レムちゃんには魔法使いの青年、シュナちゃんの相手は剣士だ。
「それでは、はじめ!」
「うー、にゃー!」
「ふぐおぉっ!?」
秒で、アイミーのパンチが盾持ちの戦士を吹き飛ばし気絶させていた。
「ちょっ、アイミー!?」
「さぁ、まだやってみるか?」
「ま、ま、参りました」
レムちゃんが大量の魔力エネルギー弾を対戦相手に囲うように放出してみせ、いきなり脅しをかけている……。魔法の直接攻撃は禁止だよ、いや、撃ってはいないけどさ……。
「お主の剣は軽い。私を女と思って甘く見たか?」
その横では、シュナちゃんが剣士の模擬刀を宙に弾きながら、カッコいい捨て台詞を吐いていた。
いや、あなた達、やり過ぎだからね……。
「し、信じられません。ほ、本当に新人なんですか?」
「い、一応、そうです。では、僕たちもやりましょうか」
ブルックさんを変に警戒させてしまったかな。それでも、他の三人の動きを見る限りCランク程度なら大丈夫だろう。僕だけでも少しは苦戦してるようにみせたい。ウサ吉、もう一度頼むね。
「身体強化!」
「身体強化!」
!? どうやら、ブルックさんも身体強化魔法の使い手のようだ。疾風の牙、なるほどパーティ名は彼の攻撃から名付けられたのか。双剣の模擬刀をクロスするように構えている姿は牙を剥いて草原を駆けるウルフに見えないこともない。
「つ、強いですね……」
「いえ、まだ何もしてませんけど」
「身体強化魔法を使えるからこそ、その凄さがわかります。私とは雲泥の差です」
まさか、同じ身体強化魔法の使い手だとはね……。ブルックさんの身体強化魔法は、僕の使い始めの頃のような粗いまとい方をしている。これがアイミーや僕クラスになると、必要な箇所、必要に応じた魔力を覆って無駄がなくなる。力の入れどころもしっかり押さえているので、瞬発力とかパワーに大きな差が出てくるのだ。
「試験なので、受けに徹しようと思いましたが、こちらから全力で攻めさせてもらいます」
「あ、あの、ブルックさん!?」
目を疑うかのように、受付のお姉さんがブルックさんを振り返る。
これは、ちゃんと相手をしてあげないと、手を抜いてるとバレそうだ。もう、アイミーとかレムちゃんが、めちゃくちゃやってるし、少しぐらいなら構わないだろう。
身体強化魔法を駆使して、僕の後ろに回り込むブルックさん。近づいては離れるを繰り返しながら、僕の隙を窺っている。こういう時の勝負は一瞬でつく。
「ウインドカッター!」
僕の横から魔法の風がやってくるが、狙いは僕ではなく、地面にぶつけることにあるようだ。
地面を抉る音と巻上がる砂ぼこり。まるでブルックさんを見失ったかのように演じる。右前方から気配を察知するが、これはダミー。砂ぼこりを抜けて剣が飛んでくるのを半歩横にズレて躱す。
本命は、左後方から地面スレスレを猛スピードで突っ込んでくるブルックさん。
右足、左手に溜め、下方から突き上げてくる模擬刀に向け強引にカウンターを合わせる。砂ぼこりで受付のお姉さんにはよく見えてないはず。そのまま、力任せに武器を破壊してしまう。
「ぐはっ!」
手首を押えるようにしてうずくまるブルックさんの首もとに、僕の剣が置かれている。
「そ、そこまでです。こ、これは、レックスさんの勝利ということですね……」
「は、はい。私の完敗です。少なくとも、みなさんにCランク以上の能力があることを認めます」
「そ、そのようですね。新人冒険者としては異例ではありますが、レックスさんのパーティ全員をCランク冒険者として登録させて頂きます」
「い、いきなりCランクになれるんですね……。あ、ありがとうございます」
初日にCランクになってしまったけど、まだ本気を出しているわけでもないので、このぐらいに留めておけばいいのかな。みんなにも話をして、誰かに見られている時は無茶苦茶をしないように注意しておこう。もう少し自重してもらわないと目立ってしまう。
「ご紹介します。疾風の牙のブルックさんです」
「疾風の牙?」
「あっ、パーティの呼び名ですね。有名になると、得意とする戦法に合わせて周りから呼ばれるようになるのです」
「そうなんですね。よろしくお願いしますブルックさん。僕はレックスです」
「こちらこそ。今日登録したばかりの新人さんと伺いました。私たちでみなさんの実力を測れるかわかりませんが、よろしくお願いします」
意外にも礼儀正しいパーティなようでホッとした。Cランクの冒険者なら、彼らと際どい勝負をして見せればDランクぐらいにはしてもらえるかもしれない。みんなを見ると任せろと言わんばかりに頷いている。ちゃんとわかっているようだ。上手く手を抜いてもらいたい。
「それでは、各々一体一にて対戦してもらいます。武器は模擬用を使い、魔法による直接攻撃は無しとします」
僕の対戦相手はリーダーのブルックさんらしい。アイミーには前衛タイプのがっちり体型の戦士、レムちゃんには魔法使いの青年、シュナちゃんの相手は剣士だ。
「それでは、はじめ!」
「うー、にゃー!」
「ふぐおぉっ!?」
秒で、アイミーのパンチが盾持ちの戦士を吹き飛ばし気絶させていた。
「ちょっ、アイミー!?」
「さぁ、まだやってみるか?」
「ま、ま、参りました」
レムちゃんが大量の魔力エネルギー弾を対戦相手に囲うように放出してみせ、いきなり脅しをかけている……。魔法の直接攻撃は禁止だよ、いや、撃ってはいないけどさ……。
「お主の剣は軽い。私を女と思って甘く見たか?」
その横では、シュナちゃんが剣士の模擬刀を宙に弾きながら、カッコいい捨て台詞を吐いていた。
いや、あなた達、やり過ぎだからね……。
「し、信じられません。ほ、本当に新人なんですか?」
「い、一応、そうです。では、僕たちもやりましょうか」
ブルックさんを変に警戒させてしまったかな。それでも、他の三人の動きを見る限りCランク程度なら大丈夫だろう。僕だけでも少しは苦戦してるようにみせたい。ウサ吉、もう一度頼むね。
「身体強化!」
「身体強化!」
!? どうやら、ブルックさんも身体強化魔法の使い手のようだ。疾風の牙、なるほどパーティ名は彼の攻撃から名付けられたのか。双剣の模擬刀をクロスするように構えている姿は牙を剥いて草原を駆けるウルフに見えないこともない。
「つ、強いですね……」
「いえ、まだ何もしてませんけど」
「身体強化魔法を使えるからこそ、その凄さがわかります。私とは雲泥の差です」
まさか、同じ身体強化魔法の使い手だとはね……。ブルックさんの身体強化魔法は、僕の使い始めの頃のような粗いまとい方をしている。これがアイミーや僕クラスになると、必要な箇所、必要に応じた魔力を覆って無駄がなくなる。力の入れどころもしっかり押さえているので、瞬発力とかパワーに大きな差が出てくるのだ。
「試験なので、受けに徹しようと思いましたが、こちらから全力で攻めさせてもらいます」
「あ、あの、ブルックさん!?」
目を疑うかのように、受付のお姉さんがブルックさんを振り返る。
これは、ちゃんと相手をしてあげないと、手を抜いてるとバレそうだ。もう、アイミーとかレムちゃんが、めちゃくちゃやってるし、少しぐらいなら構わないだろう。
身体強化魔法を駆使して、僕の後ろに回り込むブルックさん。近づいては離れるを繰り返しながら、僕の隙を窺っている。こういう時の勝負は一瞬でつく。
「ウインドカッター!」
僕の横から魔法の風がやってくるが、狙いは僕ではなく、地面にぶつけることにあるようだ。
地面を抉る音と巻上がる砂ぼこり。まるでブルックさんを見失ったかのように演じる。右前方から気配を察知するが、これはダミー。砂ぼこりを抜けて剣が飛んでくるのを半歩横にズレて躱す。
本命は、左後方から地面スレスレを猛スピードで突っ込んでくるブルックさん。
右足、左手に溜め、下方から突き上げてくる模擬刀に向け強引にカウンターを合わせる。砂ぼこりで受付のお姉さんにはよく見えてないはず。そのまま、力任せに武器を破壊してしまう。
「ぐはっ!」
手首を押えるようにしてうずくまるブルックさんの首もとに、僕の剣が置かれている。
「そ、そこまでです。こ、これは、レックスさんの勝利ということですね……」
「は、はい。私の完敗です。少なくとも、みなさんにCランク以上の能力があることを認めます」
「そ、そのようですね。新人冒険者としては異例ではありますが、レックスさんのパーティ全員をCランク冒険者として登録させて頂きます」
「い、いきなりCランクになれるんですね……。あ、ありがとうございます」
初日にCランクになってしまったけど、まだ本気を出しているわけでもないので、このぐらいに留めておけばいいのかな。みんなにも話をして、誰かに見られている時は無茶苦茶をしないように注意しておこう。もう少し自重してもらわないと目立ってしまう。
0
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。
星ふくろう
ファンタジー
紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。
彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。
新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。
大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。
まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。
しかし!!!!
その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥
あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。
それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。
この王国を貰おう。
これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。
小説家になろうでも掲載しております。
その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜
みおな
ファンタジー
かつて、稀代の魔術師と呼ばれた魔女がいた。
魔王をも単独で滅ぼせるほどの力を持った彼女は、周囲に畏怖され、罠にかけて殺されてしまう。
目覚めたら、三歳の幼子に生まれ変わっていた?
国のため、民のために魔法を使っていた彼女は、今度の生は自分のために生きることを決意する。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。
全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。
そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。
人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。
1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。
異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります!
【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる