スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ

文字の大きさ
上 下
150 / 151

148 大猿ハヌマーン2

しおりを挟む
 後ろは振り返らずにとにかく走る。

 ドッシーンという大きな音が聞こえているのでハヌマーンが倒れたのは間違いない。

 ドランクモンキーも僕が置いていったマヌルー玉の方へ集まっているようで、追ってくる数はそこまで多くない。

 これなら、何とか逃げ切れるだろうか。

「油断するな」

 近寄ってくるドランクモンキーを斬り伏せてつつ走っていくジョーカーさん。

「は、はい」

「ドランクモンキーは無理に相手をしなくてもいい」

「了解、ですっ!」

 そう返事をしながらも追ってくるドランクモンキー目掛けてマヌルー玉を投げる。

「それでもしつこい奴は足を潰せ」

 ジョーカーさんは落葉斬りでドランクモンキーの攻撃を躱していきながら、スピードを落とさずに機動力を奪うカウンター攻撃で斬り伏せていく。

 その動きは僕も真似していこうと思う。スピードを緩めずに、来る攻撃に対しては落葉斬りでパリイしていき、隙を見せたドランクモンキーの足を狙ってダメージを与えていく。

 うん。問題ない。ずっとドランクモンキーを相手にしてきただけあって、僕自身、ドランクモンキーの動きや攻撃の狙いは手にとるようにわかる。

「ちっ、来やがった!」

 言わないでもわかる。この地響きとマヌルグの木をなぎ倒すようにやってくる激しい足音はハヌマーンだ。大量に置いていったマヌルー玉には見向きもせず、何で僕たちを追いかけてくるのか。

 ひょっとして、転ばされたのを根に持っていたりするのだろうか。好きなだけマヌルー成分をプレゼントするので止まってほしい。

「ぬわぁ!」

 しばらくすると、ビュンッという音とともにマヌルグの木が飛んてくる。何なら近くにいたドランクモンキーまでもがこちらに投げ込まれてくる。

 足音はかなり近くまで来ているように感じるし、このままだと間違いなく追いつかれてしまう。

 怖くて見れなかったのだけど、意を決して振り返ってみたもののそこには何もいない。すると、すぐ隣から木をなぎ倒す音が聞こえた。

「ひ、ひぃ!」

 ハヌマーンは僕と並走するようにして走っており、その紅い目は間違いなく僕を捉えている。何で、僕!? まさか、僕の身体にマヌルー成分でも染みついてしまってるのだろうか。

「そ、そんなに欲しいならあげてやる」

 走りながらもマヌルグの木をインベントリに入れてすぐに粉を周辺にばら撒いていく。

 その攻撃にドランクモンキーは耐えきれずに悶えていくのに、ハヌマーンは益々僕を追いかけようとしてくる。

「ニール、ハヌマーンはお前を手に入れようとしている」

「えっ、どういうことですか?」

「ニールが入ればいつでもその粉が手に入るだろう」

 つまり、捕まったら最後。ハヌマーンに死ぬまで粉をつくり続けるマシーンにされてしまうということか……。

「い、いやだー!」

 僕のその叫び声と合わせるように、ハヌマーンの手が伸びてくる。

「お、落葉斬りぃ」

 必死にパリイするものの、勢いを殺せずに吹き飛ばされていく。

 更に追い詰めようと近づいてくるハヌマーンを止めようと間にジョーカーさんが立ちふさがるものの、その目は僕しか見ていない。

 体は動く。逃げようにもまだ森を抜けるにはかなりの距離がある。ここで、僕だけ先に逃げたとしても、きっとすぐに追いつかれてしまう。

 ならばここはジョーカーさんとの共闘でさっきみたいに時間を稼ぐのがいい。

 大地割りは一度見せているから避けられる可能性が高い。でも、狙いはやはり足だ。ハヌマーンから少しでも機動力を奪えれば、それだけ助かる可能性は高くなる。

 ジョーカーさんは周辺の木々を利用してハヌマーンの頭に狙いを定めて攻撃を繰り出している。僕に合図を送るその仕草からは、隙をつくるから足を狙えと言っている。

 僕は木に隠れるようにしながら、その瞬間を逃さぬようにハヌマーンとの距離を詰めていく。

 ジョーカーさんが僕に最終アタックを任せる判断をしたのには理由があって、それは大地割り以外にも初見殺しの必殺技がもう一つあるからだ。

 ハヌマーンは顔の周りで動き回るジョーカーさんに苛々とした表情をみせている。ジョーカーさん、致命打を与えることはできないが、しっかり足止めしつつハヌマーンの隙を生み出そうとしているのはさすがだ。

 そして、そのタイミングはすぐにやってきた。

「光玉!」

 通常攻撃で使用する魔法ではないものの、急に目の前が光り輝いては視力を奪われる。それがハヌマーンのような巨体だったら、その目も大きいので効果は覿面。

 目を覆うようにして腕を上げて立ち尽くしているハヌマーン。足下はこれでもかと完全にさらけ出されている。

「飛突」

 身体をひねりながら全身を突き出すように伸ばす突き。この突きにはマジカルソードを持った僕には更に剣が伸び斬れ味が増すことで、えげつない必殺技へと昇華する。

「改、魔突!」
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...