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146 特訓、そして特訓
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「すまなかった。事前に調査した時にはドランクモンキーしかいなかったんだが……」
「とりあえずは何とかなりましたので。それに、すぐに来ていただいたのはそれなりに気配を察知頂いていたのだとわかりましたし」
料理と型の訓練に夜番だけではないと思っていたけど、ちゃんと僕の危険を察知してここへ来てくれたことはありがたい。
ちょっと間に合わなかったけど、聖なるブレスがなかったとしても、僕の命の危機が訪れる前にはきっと何とかしてくれたはずだ。
「今日のところは念のため同行する。少し周辺も調べてみようと思う」
「了解です」
いったん拠点まで戻ってしっかり土の塊で壁をして食料を隠してから新しく発見した池の場所までやってきた。
「やっぱり湧き水で綺麗だからなのか、マギカ草が群生していますね」
「ドランクモンキーの数が多すぎて不毛の地と捉えられていたが、これだけマギカ草があるなら状況は変わってくるかもな」
僕は心の中でガッツポーズをしている。これでかなりの量のマジックポーションを合成できる。
マジックリングのストックが無くなってしまったので、魔力を消費するマジカルソードの出番が増えると思うので助かる。
そもそもこの特訓ではマジカルソードの扱いを少しでも上達させたいのだ。
ジョーカーさんはというと、この場所を地図にメモを書き入れていて、あとで冒険者ギルドに情報提供するのかもしれない。いや、売るのかな?
トルマクル大森林の外縁はドランクモンキーに支配されていて、群れでの攻撃を受けることから、Cランク以上のパーティでないと討伐に来れない。
ただ、Cランク以上のパーティがわざわざランクDのドランクモンキーを倒しに来るかというとうまみが少ない。
ドランクモンキーも数が増えてもこの森から出て人里に来るなんてことはないので冒険者ギルドとしても優先順位が低かったはずだ。
マギカ草の群生情報でどのように変わってくるのかわからないけど、多少なりここに来る冒険者が増えてくれたらと思う。
マヌルグの木があるから森から出ないといっても、増えすぎたドランクモンキーを従えようとする進化個体や上位種。また、ドランクモンキー自体も強い個体が生き残っていくことになるはずなので環境としてはあまりよくない。
「もう、終わったのか?」
「はい、合成は自動でインベントリが処理してくれますので楽ちんなんです」
「それで、マジックポーションの数は?」
「昨日の分と合わせて七百本ぐらいですね」
「とんでもねぇな」
マジックポーションは普通のポーションと比べても高額なので小銀貨三枚、つまり三千円もする。三千円が七百本なので、僕はこの二日間で二百十万円を荒稼ぎしたことになる。まあ、売らないけども。
普通の冒険者はマギカ草の採取になるのでもう少し稼ぎは減るだろうけど、それでも以前と比べれば格段に美味しいクエストになることは間違いないだろう。
人気のなかったこのエリアに多くの冒険者が訪れることを祈りたい。
さて、あっと言う間に半日が経過。
その後の討伐ではドラムコングは現れず、ただひたすらドランクモンキー退治となった。
僕の討伐のやり方を見てジョーカーさんは何とも言えない表情をしていたけど、少頭数の際には極力マジカルソードを使用しているのを見て自分なりによしとしたようだ。
マヌルー玉がチートアイテムとは言え、インベントリの落とし穴にマヌルー玉で集めて、土の塊で押し潰す行為はやり過ぎだったのかもしれない。
「これで魔力量がそれなりに多かったら上位ランクも目指しやすいんだけどな」
確かに魔力量は全然ない。戦う度にマジックポーションを飲んでるし、戦っている最中にも飲んでいるし、何なら今も飲んでいる。
僕の水分補給はもうマジックポーションでいいのかもしれない。
一度の戦闘でマジカルソードの斬れ味を四回増すか、斬れ味プラス三十センチ伸ばすと二回まで。インベントリにあるマジックポーションを大量に使用する燃費の悪い戦い方だ。
ジョーカーさんの言う通り、僕に無限の魔力があるのならマジカルソードは更にその長さが伸びるだろうし、斬れ味はもっとエグいことになる。
そうなれば上位ランクを目指せるというのも理解できる。
ただ、現状では今ある能力でやり繰りするしかないので、剣での動き方や立ち回りをもっと身体に身につけていく他ない。
今日は夕方頃には討伐を終了して、新しい拠点に移動した。
全部でドラムコング一頭、ドランクモンキー百頭程度。かなり奥に進むことができた。
今は、ジョーカーさんの指導のもと型の訓練をしている。一般的な型をしっかり学んだ上で、長さや斬れ味を変化させるだけでもかなりチートだと思う。
今はマジカルソードに頼らないフェイントなどの動きを勉強しているけど、自分でもこれらを組み合わせたら相当厄介になると思ってる。
さて、ということでその後もいろいろあったものの、予定していた工程の約三ヶ月。特訓はようやく最終日を迎えることとなった。
いきなりだと思うかもしれないけど、特訓というのは何度も同じことを繰り返すことだったり、その中でゆっくりと成長していくものである。別に特段話すことがないからとかではない。
剣の型もそれなりに見られるものになってきていると思う。後半は割とジョーカーさんと普通に打ち合えるようにもなってきた。
ステータスが上がった影響もあってか、ドランクモンキー十頭相手でもマジカルソードのみで倒すこともできるようになった。僕自身もそろそろかなとは思っていたところだ。
ちなみに最終日とは言ったけど、それは今日中にトルマクル大森林を出れたらの話である。
「最後は追いかける俺から森の外まで無事に逃げ切れたら終わりにする」
大森林の結構深くまで来たものの、まっすぐに森の外に向かえば一日もあれば十分。
問題は本気のジョーカーさんがどのぐらいのレベルなのかが、いまいち分かっていないことだろう。手合わせした限りではまだ彼の本気は見ていない。
「捕まったらどうなりますか?」
「ボコボコにして、スタート位置に連れ戻す」
どうやらクリアするまで帰れないみたいだ……。
「とりあえずは何とかなりましたので。それに、すぐに来ていただいたのはそれなりに気配を察知頂いていたのだとわかりましたし」
料理と型の訓練に夜番だけではないと思っていたけど、ちゃんと僕の危険を察知してここへ来てくれたことはありがたい。
ちょっと間に合わなかったけど、聖なるブレスがなかったとしても、僕の命の危機が訪れる前にはきっと何とかしてくれたはずだ。
「今日のところは念のため同行する。少し周辺も調べてみようと思う」
「了解です」
いったん拠点まで戻ってしっかり土の塊で壁をして食料を隠してから新しく発見した池の場所までやってきた。
「やっぱり湧き水で綺麗だからなのか、マギカ草が群生していますね」
「ドランクモンキーの数が多すぎて不毛の地と捉えられていたが、これだけマギカ草があるなら状況は変わってくるかもな」
僕は心の中でガッツポーズをしている。これでかなりの量のマジックポーションを合成できる。
マジックリングのストックが無くなってしまったので、魔力を消費するマジカルソードの出番が増えると思うので助かる。
そもそもこの特訓ではマジカルソードの扱いを少しでも上達させたいのだ。
ジョーカーさんはというと、この場所を地図にメモを書き入れていて、あとで冒険者ギルドに情報提供するのかもしれない。いや、売るのかな?
トルマクル大森林の外縁はドランクモンキーに支配されていて、群れでの攻撃を受けることから、Cランク以上のパーティでないと討伐に来れない。
ただ、Cランク以上のパーティがわざわざランクDのドランクモンキーを倒しに来るかというとうまみが少ない。
ドランクモンキーも数が増えてもこの森から出て人里に来るなんてことはないので冒険者ギルドとしても優先順位が低かったはずだ。
マギカ草の群生情報でどのように変わってくるのかわからないけど、多少なりここに来る冒険者が増えてくれたらと思う。
マヌルグの木があるから森から出ないといっても、増えすぎたドランクモンキーを従えようとする進化個体や上位種。また、ドランクモンキー自体も強い個体が生き残っていくことになるはずなので環境としてはあまりよくない。
「もう、終わったのか?」
「はい、合成は自動でインベントリが処理してくれますので楽ちんなんです」
「それで、マジックポーションの数は?」
「昨日の分と合わせて七百本ぐらいですね」
「とんでもねぇな」
マジックポーションは普通のポーションと比べても高額なので小銀貨三枚、つまり三千円もする。三千円が七百本なので、僕はこの二日間で二百十万円を荒稼ぎしたことになる。まあ、売らないけども。
普通の冒険者はマギカ草の採取になるのでもう少し稼ぎは減るだろうけど、それでも以前と比べれば格段に美味しいクエストになることは間違いないだろう。
人気のなかったこのエリアに多くの冒険者が訪れることを祈りたい。
さて、あっと言う間に半日が経過。
その後の討伐ではドラムコングは現れず、ただひたすらドランクモンキー退治となった。
僕の討伐のやり方を見てジョーカーさんは何とも言えない表情をしていたけど、少頭数の際には極力マジカルソードを使用しているのを見て自分なりによしとしたようだ。
マヌルー玉がチートアイテムとは言え、インベントリの落とし穴にマヌルー玉で集めて、土の塊で押し潰す行為はやり過ぎだったのかもしれない。
「これで魔力量がそれなりに多かったら上位ランクも目指しやすいんだけどな」
確かに魔力量は全然ない。戦う度にマジックポーションを飲んでるし、戦っている最中にも飲んでいるし、何なら今も飲んでいる。
僕の水分補給はもうマジックポーションでいいのかもしれない。
一度の戦闘でマジカルソードの斬れ味を四回増すか、斬れ味プラス三十センチ伸ばすと二回まで。インベントリにあるマジックポーションを大量に使用する燃費の悪い戦い方だ。
ジョーカーさんの言う通り、僕に無限の魔力があるのならマジカルソードは更にその長さが伸びるだろうし、斬れ味はもっとエグいことになる。
そうなれば上位ランクを目指せるというのも理解できる。
ただ、現状では今ある能力でやり繰りするしかないので、剣での動き方や立ち回りをもっと身体に身につけていく他ない。
今日は夕方頃には討伐を終了して、新しい拠点に移動した。
全部でドラムコング一頭、ドランクモンキー百頭程度。かなり奥に進むことができた。
今は、ジョーカーさんの指導のもと型の訓練をしている。一般的な型をしっかり学んだ上で、長さや斬れ味を変化させるだけでもかなりチートだと思う。
今はマジカルソードに頼らないフェイントなどの動きを勉強しているけど、自分でもこれらを組み合わせたら相当厄介になると思ってる。
さて、ということでその後もいろいろあったものの、予定していた工程の約三ヶ月。特訓はようやく最終日を迎えることとなった。
いきなりだと思うかもしれないけど、特訓というのは何度も同じことを繰り返すことだったり、その中でゆっくりと成長していくものである。別に特段話すことがないからとかではない。
剣の型もそれなりに見られるものになってきていると思う。後半は割とジョーカーさんと普通に打ち合えるようにもなってきた。
ステータスが上がった影響もあってか、ドランクモンキー十頭相手でもマジカルソードのみで倒すこともできるようになった。僕自身もそろそろかなとは思っていたところだ。
ちなみに最終日とは言ったけど、それは今日中にトルマクル大森林を出れたらの話である。
「最後は追いかける俺から森の外まで無事に逃げ切れたら終わりにする」
大森林の結構深くまで来たものの、まっすぐに森の外に向かえば一日もあれば十分。
問題は本気のジョーカーさんがどのぐらいのレベルなのかが、いまいち分かっていないことだろう。手合わせした限りではまだ彼の本気は見ていない。
「捕まったらどうなりますか?」
「ボコボコにして、スタート位置に連れ戻す」
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