141 / 151
140 マヌルー玉
しおりを挟む
トルマクル大森林から街道の方へ向かって川が流れているのは来る途中で見ていたので知っている。
「確かあっちの方角だったと思うんだよね」
ドランクモンキーを五頭倒したあと、すぐに離脱した僕はマヌルー玉を作るために水場を探すことにした。
少しなら水袋があるし、拠点に行けばもちろん水はあるんだけど、一応食料扱いだしそんなことのために戻るのもなーと思ったのだ。
ドランクモンキー相手にならかなり使える代物だとわかった以上、いっぱい作っておいた方がいい。
あれがあれば群れに囲まれても離脱可能になる。あと、マヌルー玉一つで五頭ぐらいなら何とか倒せそうだしね。
「少し魔力の消費があるけど、魔力探知で探そう」
ここは割り切って初日はマヌルー玉作りに時間を費やそう。そのためにも早く水場を発見したい。
魔力探知はアドリーシャの特訓で学んだ技術で、自分の魔力を薄く延ばして周辺の情報を得るものだ。
僕も練習をすることで広範囲とはまではいかないものの、二百メートル程度先ぐらいまでなら何となく何があるかを調べられるようになった。
魔力の扱いがもっと上達すればもっと距離を延ばすことも詳細に何があるかを探ることも可能だろう。
「よしっ、見つけた」
水場は予想通りの方角に、少し大きめの池のようなものを発見した。
それはトルマクル大森林からの湧き水が溜まって出来たものらしく、これが街道へ続く川へと繫がっているようだ。
「その前に手頃なサイズのマヌルグの木をインベントリに入れてと」
マヌルーの粉以外を全てゴミ箱に捨てる。角材も手に入るけど、今は特に必要としていない。
「マヌルー玉はいちいち捏ねる作業が面倒なんだよね。水場だし魔物がやってくる可能性だってあるからな……」
マヌルー玉は少量の水で混ぜ合わせるとすぐに固まるので、捏ねる作業がそこまで面倒というわけではない。
問題は僕が数百個単位で作りたいと思っている点だろう。さっきの戦闘で早速二個使用したことを考えると、一日で数十個使用するのは目に見えている。
マヌルーには対ドランクモンキー相手には有効な戦略アイテムといっていい。たとえ、今日ここで半日を費やしたとしても構わないだろう。
水場のそばに粉を捏ねる平たい大きな石があるのを見つけ、そこで作ることにした。
水は湧き水だけあって透明に透き通っている。インベントリに入れたところ塵のようなゴミ箱行きの成分も少なかった。温度も冷たいし、きっと飲んでも美味しいお水だろう。
「さて、どんどん作っていこうか」
マヌルーの粉を平らな石の上に出して、少しづつ水を加えていきながら混ぜ合わせていく。
この作業だけを見るならば、うどんでも作っているかのように見えなくもない。
ひょっとして食べられるのではないだろうか……。いや、やめておいた方がいいか。これは狂暴なドランクモンキーがうっとりしちゃう粉なのだ。
一つの玉のサイズはテニスボールぐらいの大きさにした。ちょっと大きすぎる気がしないでもない。
これは単純に投げやすいというのと、ドランクモンキーが囓った際に割れてこぼれ落ちることで他のドランクモンキーを集める効果を期待してのことだ。
ゴルフボールサイズだと投げづらいし、一口で飲み込まれてしまう可能性もあるからね。
そういうことなので、マヌルー玉はある程度の衝撃で割れやすい程度に硬めにつくる。水分は少なめで、かと言って、投げるだけで割れるほど粘りがなくても困る。
やはり目指すのは固めのうどん。ある程度のこしとねばりがありつつ、衝撃で割れる弱さだ。
「こんなもんかな。どんどんインベントリに入れていこう」
完成したマヌルー玉はどんどんインベントリに入れていく。インベントリの項目にはそのままマヌルー玉の表記が。その名前でよかったのか?
●マヌルー玉×10
マヌルー玉の項目を見るといつもと違うところに気がついた。文字が青いのだ。通常はブラック背景に白文字がベース。インベントリの容量が限界に近づくとオレンジになりいっぱいになると赤になる。
このブルーの文字ははじめて見る。
「こ、これは……」
どうやらインベントリの新しい機能を発見したようだ。『マヌルー玉』という物が完成品として認識されインベントリに入ったことで、それを構成する成分がインベントリにある場合に発生するのかもしれない。
インベントリの新機能、アイテム合成か。
ブルーの『マヌルー玉』をタップすると、インベントリ内のアイテムを使って合成しますか? と出てくるではないか。
アイテム『マヌルーの粉』、『水』でマヌルー玉を合成しますか?
→はい
→いいえ
もちろん、『はい』を選択する。
次の瞬間、インベントリのマヌルー玉の合計数量が一気に百個に増えていた。
「もう、捏ねなくていいのか……」
その後、何回かの合成を繰り返してマヌルー玉の数は千個になった。
材料はそこら中にいっぱいあるし、適度に減ったらまた水のある場所で合成すればいい。
これは便利な新機能を発見してしまった。
「確かあっちの方角だったと思うんだよね」
ドランクモンキーを五頭倒したあと、すぐに離脱した僕はマヌルー玉を作るために水場を探すことにした。
少しなら水袋があるし、拠点に行けばもちろん水はあるんだけど、一応食料扱いだしそんなことのために戻るのもなーと思ったのだ。
ドランクモンキー相手にならかなり使える代物だとわかった以上、いっぱい作っておいた方がいい。
あれがあれば群れに囲まれても離脱可能になる。あと、マヌルー玉一つで五頭ぐらいなら何とか倒せそうだしね。
「少し魔力の消費があるけど、魔力探知で探そう」
ここは割り切って初日はマヌルー玉作りに時間を費やそう。そのためにも早く水場を発見したい。
魔力探知はアドリーシャの特訓で学んだ技術で、自分の魔力を薄く延ばして周辺の情報を得るものだ。
僕も練習をすることで広範囲とはまではいかないものの、二百メートル程度先ぐらいまでなら何となく何があるかを調べられるようになった。
魔力の扱いがもっと上達すればもっと距離を延ばすことも詳細に何があるかを探ることも可能だろう。
「よしっ、見つけた」
水場は予想通りの方角に、少し大きめの池のようなものを発見した。
それはトルマクル大森林からの湧き水が溜まって出来たものらしく、これが街道へ続く川へと繫がっているようだ。
「その前に手頃なサイズのマヌルグの木をインベントリに入れてと」
マヌルーの粉以外を全てゴミ箱に捨てる。角材も手に入るけど、今は特に必要としていない。
「マヌルー玉はいちいち捏ねる作業が面倒なんだよね。水場だし魔物がやってくる可能性だってあるからな……」
マヌルー玉は少量の水で混ぜ合わせるとすぐに固まるので、捏ねる作業がそこまで面倒というわけではない。
問題は僕が数百個単位で作りたいと思っている点だろう。さっきの戦闘で早速二個使用したことを考えると、一日で数十個使用するのは目に見えている。
マヌルーには対ドランクモンキー相手には有効な戦略アイテムといっていい。たとえ、今日ここで半日を費やしたとしても構わないだろう。
水場のそばに粉を捏ねる平たい大きな石があるのを見つけ、そこで作ることにした。
水は湧き水だけあって透明に透き通っている。インベントリに入れたところ塵のようなゴミ箱行きの成分も少なかった。温度も冷たいし、きっと飲んでも美味しいお水だろう。
「さて、どんどん作っていこうか」
マヌルーの粉を平らな石の上に出して、少しづつ水を加えていきながら混ぜ合わせていく。
この作業だけを見るならば、うどんでも作っているかのように見えなくもない。
ひょっとして食べられるのではないだろうか……。いや、やめておいた方がいいか。これは狂暴なドランクモンキーがうっとりしちゃう粉なのだ。
一つの玉のサイズはテニスボールぐらいの大きさにした。ちょっと大きすぎる気がしないでもない。
これは単純に投げやすいというのと、ドランクモンキーが囓った際に割れてこぼれ落ちることで他のドランクモンキーを集める効果を期待してのことだ。
ゴルフボールサイズだと投げづらいし、一口で飲み込まれてしまう可能性もあるからね。
そういうことなので、マヌルー玉はある程度の衝撃で割れやすい程度に硬めにつくる。水分は少なめで、かと言って、投げるだけで割れるほど粘りがなくても困る。
やはり目指すのは固めのうどん。ある程度のこしとねばりがありつつ、衝撃で割れる弱さだ。
「こんなもんかな。どんどんインベントリに入れていこう」
完成したマヌルー玉はどんどんインベントリに入れていく。インベントリの項目にはそのままマヌルー玉の表記が。その名前でよかったのか?
●マヌルー玉×10
マヌルー玉の項目を見るといつもと違うところに気がついた。文字が青いのだ。通常はブラック背景に白文字がベース。インベントリの容量が限界に近づくとオレンジになりいっぱいになると赤になる。
このブルーの文字ははじめて見る。
「こ、これは……」
どうやらインベントリの新しい機能を発見したようだ。『マヌルー玉』という物が完成品として認識されインベントリに入ったことで、それを構成する成分がインベントリにある場合に発生するのかもしれない。
インベントリの新機能、アイテム合成か。
ブルーの『マヌルー玉』をタップすると、インベントリ内のアイテムを使って合成しますか? と出てくるではないか。
アイテム『マヌルーの粉』、『水』でマヌルー玉を合成しますか?
→はい
→いいえ
もちろん、『はい』を選択する。
次の瞬間、インベントリのマヌルー玉の合計数量が一気に百個に増えていた。
「もう、捏ねなくていいのか……」
その後、何回かの合成を繰り返してマヌルー玉の数は千個になった。
材料はそこら中にいっぱいあるし、適度に減ったらまた水のある場所で合成すればいい。
これは便利な新機能を発見してしまった。
12
お気に入りに追加
1,813
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』
来夢
ファンタジー
『あらすじ』
心臓病を患っている、主人公である鈴也(レイヤ)は、幼少の時から見た夢を脚色しながら物語にして、ライトノベルの作品として投稿しようと書き始めた。
そんなある日…鈴也は小説を書き始めたのが切っ掛けなのか、10年振りに夢の続きを見る。
すると、今まで見た夢の中の男の子と女の子は、青年の姿に成長していて、自分の書いている物語の主人公でもあるヴェルは、理由は分からないが呪いの攻撃を受けて横たわっていた。
ジュリエッタというヒロインの聖女は「ホーリーライト!デスペル!!」と、仲間の静止を聞かず、涙を流しながら呪いを解く魔法を掛け続けるが、ついには力尽きて死んでしまった。
「へっ?そんな馬鹿な!主人公が死んだら物語の続きはどうするんだ!」
そんな後味の悪い夢から覚め、風呂に入ると心臓発作で鈴也は死んでしまう。
その後、直ぐに世界が暗転。神様に会うようなセレモニーも無く、チートスキルを授かる事もなく、ただ日本にいた記憶を残したまま赤ん坊になって、自分の書いた小説の中の世界へと転生をする。
”自分の書いた小説に抗える事が出来るのか?いや、抗わないと周りの人達が不幸になる。書いた以上責任もあるし、物語が進めば転生をしてしまった自分も青年になると死んでしまう
そう思い、自分の書いた物語に抗う事を決意する。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
幻想美男子蒐集鑑~夢幻月華の書~
紗吽猫
ファンタジー
ーー さぁ、世界を繋ぐ旅を綴ろう ーー
自称美男子愛好家の主人公オルメカと共に旅する好青年のソロモン。旅の目的はオルメカコレクションー夢幻月下の書に美男子達との召喚契約をすること。美男子の噂を聞きつけてはどんな街でも、時には異世界だって旅して回っている。でもどうやらこの旅、ただの逆ハーレムな旅とはいかないようでー…?
美男子を見付けることのみに特化した心眼を持つ自称美男子愛好家は出逢う美男子達を取り巻く事件を解決し、無事に魔導書を完成させることは出来るのか…!?
時に出逢い、時に闘い、時に事件を解決し…
旅の中で出逢う様々な美男子と取り巻く仲間達との複数世界を旅する物語。
※この作品はエブリスタでも連載中です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる