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91 国境の街
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今回は準備をしていたから勝てた。冒険者は普通に国境を越えてくる。ある意味でAランク冒険者を敵に回さずに済んだのならありなのではないか。
ルリカラのブレスの影響がどれ程の期間効果が期待できるかは不明だけど、頼れるAランク冒険者が王都で睨みを効かせてくれているのはこちらとしても頼もしい。
「じゃあ、元気でにゃ」
「三日後ぐらいには助けが来てくれると思うわ」
「しっかり仕事するんだよー」
「はい。みなさん、行ってらっしゃいませっ!」
最後に見たアローヘッドの顔はとても清々しく晴れやかな笑顔だった。
結果的に聖なるブレスは正解だったのかもしれない。
国を出るといってもAランク冒険者に恨みを持たれている状況というのは芳しくない。
アローヘッドがしっかり準備し、仲間を集めて僕たちの目の前に突然現れたとしたら……。
普通に考えて勝てる見込みはゼロだ。
今回は圧勝したように見えるけど、それはこちらが何度もシミュレーションをして準備をしてきたからだ。
しかもアローヘッドはこちらの戦力をかなり低く見積っていた。これが二度目の対戦ともなると、そのあたりもまるっと対策されてしまう。
あくまでも初見だから勝てた戦いであることを忘れてはならない。
まあ、だからこそ庇護を期待できる聖イルミナ共和国なんだけどね。
「さすがにちょっと疲れたわね」
短時間で終わったとはいえ、Aランク冒険者との戦闘なんて心がかなり擦り減る。僕なんて、拠点を造りながらも少し足が震えていたからね。
「出来れば久し振りに宿屋のベッドでゆっくりしたいんだけどなー」
「この街を出るまで油断したらだめにゃ」
シュメールの話を信じるのであれば、もう追手が来ることはない。アローヘッドも大人しく堀の下で救助を待っているだろう。
しかしながら、白金貨一枚は人を動かすには十分な費用なだけに気をつけなければならない。
あれから、徒歩で一時間ほど歩いて国境の街に入った。ここは商業都市として栄えていて、リメリア王国と聖イルミナ共和国の貿易で賑わっていて冒険者よりも商人が多いそうだ。
ということで、僕たちはこの街にもあるカルメロ商会にやってきた。本当にどこにでもあるなカルメロ商会。
「ご無沙汰してるにゃ」
「キャットアイ様、お久し振りでございます。みな様のこともカルメロ会長から話はうかがっております。お怪我は……されてらっしゃいませんね」
「はい。運が良かったようです」
どうやら僕たちが追われている情報もこちらに入っていたようだ。
カルメロ商会に立ち寄った理由は三つ。一つはアローヘッドのことを書いた手紙を二日後に冒険者ギルドへ届けてもらうため。
もう一つは、お金を引き出すため。
聖イルミナ共和国に国籍を変更する手続きやお布施がそれなりに必要になるからだ。
聖イルミナ共和国に入ってからでもいいのだけど、国籍の変更手続きやらがすぐ完了するかわからないし、念の為にここでお金を引き出すことにした。
「では、白金貨五枚を手配いたします。みなさんは、それまでこちらのミスリル宝石をご覧ください」
三つ目はこのミスリル宝石だ。
「うわー、きれー」
これらの宝石はビビアンさんの工房で造られた属性付与の効果が入れられる宝石。こちらは無料で一人一ついただけることになっている。
「付与はここで出来るの?」
「付与はここではできません。専門のお店でお願いします。あっ、聖イルミナ教会でも水と光属性はお安く受けられているそうですよ」
「水と光かー。悩むねー」
「僕は短槍と大盾だから、パワー系がいいのかな」
「それなら火と風ね」
パワー系なら土属性なのかと思ったら、火と風属性の組み合わせになるらしい。短槍から炎が出たりするのだろうか。
「火は出ないわよ」
何故かアルベロに心を読まれてしまった。
「出ないんだ」
「付与といってもそこまで強い効果は出ないわよ」
「そうそう。ニールのガチャガチャで出る武器が異常なんだからねー」
「でも、このミスリル宝石も結構なお値段がするから付与する武器は選んだほうがいいわ」
二人はガチャから出た武器に付与するらしい。そうなると、僕は悩ましい。短槍はまだほとんど使用したことがないし、大盾も貴重な武器かと問われると微妙なのだ。
「キャットアイは?」
「もちろん、このプジョーブーツにゃ」
そうだった。猫さんにもガチャの装備があったんだった。
「ニールは少し待った方がいいかもしれないわね」
「うんうん。凄いガチャ武器が出るかもしれないからねー」
確かにそうかもしれない。みんなだけ楽しそうに宝石を選んでいるのはずるいけど、僕にも頼りになる武器が現れたらその時に考えた方がいいのかもしれない。うーん。
「一応確認なんですけど、このマジックリングに宝石をくっつけることは?」
「小さすぎるので無理ですね」
「で、ですよねー」
致し方ない。いい武器を手にするその時まで気長に待とうではないか。僕にだって、きっとかっこいい武器が手に入る……よね?
ルリカラのブレスの影響がどれ程の期間効果が期待できるかは不明だけど、頼れるAランク冒険者が王都で睨みを効かせてくれているのはこちらとしても頼もしい。
「じゃあ、元気でにゃ」
「三日後ぐらいには助けが来てくれると思うわ」
「しっかり仕事するんだよー」
「はい。みなさん、行ってらっしゃいませっ!」
最後に見たアローヘッドの顔はとても清々しく晴れやかな笑顔だった。
結果的に聖なるブレスは正解だったのかもしれない。
国を出るといってもAランク冒険者に恨みを持たれている状況というのは芳しくない。
アローヘッドがしっかり準備し、仲間を集めて僕たちの目の前に突然現れたとしたら……。
普通に考えて勝てる見込みはゼロだ。
今回は圧勝したように見えるけど、それはこちらが何度もシミュレーションをして準備をしてきたからだ。
しかもアローヘッドはこちらの戦力をかなり低く見積っていた。これが二度目の対戦ともなると、そのあたりもまるっと対策されてしまう。
あくまでも初見だから勝てた戦いであることを忘れてはならない。
まあ、だからこそ庇護を期待できる聖イルミナ共和国なんだけどね。
「さすがにちょっと疲れたわね」
短時間で終わったとはいえ、Aランク冒険者との戦闘なんて心がかなり擦り減る。僕なんて、拠点を造りながらも少し足が震えていたからね。
「出来れば久し振りに宿屋のベッドでゆっくりしたいんだけどなー」
「この街を出るまで油断したらだめにゃ」
シュメールの話を信じるのであれば、もう追手が来ることはない。アローヘッドも大人しく堀の下で救助を待っているだろう。
しかしながら、白金貨一枚は人を動かすには十分な費用なだけに気をつけなければならない。
あれから、徒歩で一時間ほど歩いて国境の街に入った。ここは商業都市として栄えていて、リメリア王国と聖イルミナ共和国の貿易で賑わっていて冒険者よりも商人が多いそうだ。
ということで、僕たちはこの街にもあるカルメロ商会にやってきた。本当にどこにでもあるなカルメロ商会。
「ご無沙汰してるにゃ」
「キャットアイ様、お久し振りでございます。みな様のこともカルメロ会長から話はうかがっております。お怪我は……されてらっしゃいませんね」
「はい。運が良かったようです」
どうやら僕たちが追われている情報もこちらに入っていたようだ。
カルメロ商会に立ち寄った理由は三つ。一つはアローヘッドのことを書いた手紙を二日後に冒険者ギルドへ届けてもらうため。
もう一つは、お金を引き出すため。
聖イルミナ共和国に国籍を変更する手続きやお布施がそれなりに必要になるからだ。
聖イルミナ共和国に入ってからでもいいのだけど、国籍の変更手続きやらがすぐ完了するかわからないし、念の為にここでお金を引き出すことにした。
「では、白金貨五枚を手配いたします。みなさんは、それまでこちらのミスリル宝石をご覧ください」
三つ目はこのミスリル宝石だ。
「うわー、きれー」
これらの宝石はビビアンさんの工房で造られた属性付与の効果が入れられる宝石。こちらは無料で一人一ついただけることになっている。
「付与はここで出来るの?」
「付与はここではできません。専門のお店でお願いします。あっ、聖イルミナ教会でも水と光属性はお安く受けられているそうですよ」
「水と光かー。悩むねー」
「僕は短槍と大盾だから、パワー系がいいのかな」
「それなら火と風ね」
パワー系なら土属性なのかと思ったら、火と風属性の組み合わせになるらしい。短槍から炎が出たりするのだろうか。
「火は出ないわよ」
何故かアルベロに心を読まれてしまった。
「出ないんだ」
「付与といってもそこまで強い効果は出ないわよ」
「そうそう。ニールのガチャガチャで出る武器が異常なんだからねー」
「でも、このミスリル宝石も結構なお値段がするから付与する武器は選んだほうがいいわ」
二人はガチャから出た武器に付与するらしい。そうなると、僕は悩ましい。短槍はまだほとんど使用したことがないし、大盾も貴重な武器かと問われると微妙なのだ。
「キャットアイは?」
「もちろん、このプジョーブーツにゃ」
そうだった。猫さんにもガチャの装備があったんだった。
「ニールは少し待った方がいいかもしれないわね」
「うんうん。凄いガチャ武器が出るかもしれないからねー」
確かにそうかもしれない。みんなだけ楽しそうに宝石を選んでいるのはずるいけど、僕にも頼りになる武器が現れたらその時に考えた方がいいのかもしれない。うーん。
「一応確認なんですけど、このマジックリングに宝石をくっつけることは?」
「小さすぎるので無理ですね」
「で、ですよねー」
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