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84 その頃、王都では2
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■■■冒険者ギルド長 バルトロメオ視点
「どうなっているのじゃ、バルトロメオ」
「も、申し訳ございません」
「お前の謝罪を聞いているのではない。何がどうなっているのだと聞いているのだ」
あれから王都中を探し回って、ラウラの森も多くの冒険者やギルド職員を使って探させたが痕跡も何も見つからなかった。
そうこうしている間に慰労会の開催時間になってしまったのだ。
「昨日までの報告内容と随分違うではないか」
「大変申し訳ございません。部下からは問題ないと聞いていたのですが……」
「言い訳など聞きたくない。で、どうするのじゃ? 王都に住む多くの者に慰労会の発表をしているにも関わらず二度も延期させ、しかも異世界人が現在何処にいるかもわかない」
どうしてこうなった。昨日までは何も問題なかったはずだ……。
「……お前はもうクビだな」
「そ、それだけは、どうかお許しください! ど、どうか、私に挽回のチャンスをいただけませんか」
「二度も失敗しておいてよく言う」
「次こそは、次こそは必ず、必ず役に立ってみせます!」
「ふむ、お前のことは信用していないが、冒険者ギルドの力は信じている。騎士団でアルジーラ帝国方面を捜索させる。冒険者ギルドは全力で聖イルミナ共和国の国境付近までの道のりを捜索させよ」
「か、かしこまりました」
「お前の失態については、いったんおいておく。まずは異世界人を捕らえてからだ。少しでも役に立つという所を見せてもらいたいものだな」
「はっ!」
くそっ、くそっ、くそっ、何で俺がこんな目に合わなきゃならねぇんだ。
現状でAランク冒険者はアローヘッドとキャットアイの二人、続いてBランクが五人にCランクが三十ぐらいか。
全員を緊急招集してのクエストは一日でいくらかかる。俺がこっそり隠していた金が消えていくじゃねえか……。しかし、もう失敗は許されねぇ。もしも、騎士団が先にニールを捕まえようものなら俺はクビだ。
聖イルミナ共和国へ向かったと祈るしかねぇ。頼むから帝国には向かってくれるなよ。
「緊急クエストだ! Cランク以上の連中は全員強制招集だ!」
「ギルド長、ほとんどの冒険者はクエストに出ています。今、ギルド内にいるのはアローヘッドと、他数名のみです」
時間は昼を過ぎたところ。普通に考えて冒険者が戻って来るのは夕方以降になる。それからクエストを出して準備していたら出発は明日の朝になっちまう。
あいつらが出たのは昨日の午後。一日半も無駄にしちまうのか。
「大量の飯と馬を準備させろ。それからニールを捕まえた奴には白金貨一枚渡すと伝えろ!」
「し、白金貨一枚ですか!? か、彼の罪状は?」
「国家反逆の疑いとでも言っておけ」
「おいおい、大丈夫なのか? バルトロメオ」
「おお、アローヘッドか。キャットアイは見てないのか?」
「ああ、いないね」
「お前だけでも今からニールを捕まえに行ってくれねぇか」
「構わないけど、契約外のことは前金で頼むよ」
「わ、わかってる。金貨五枚を先に渡しておく。これで少しでも早く出てくれ」
「で、どっちへ行くんだい?」
「聖イルミナ共和国だ」
「ふーん、わかった。すぐに出よう。最悪はニールだけでも連れてくればいいんだよね?」
「ああ、それで構わない」
「怪我をしていても」
「構わない」
その確認をするとアローヘッドはすぐに冒険者ギルドを出ていった。
奴らがいなくなってからもう約一日が経つ。追いつけるのか。いや、追いつかなければならない。見つけられなかったら、俺の人生は終了するんだ。
「頼んだぞ……アローヘッド」
ギルドで何が起きたのかと、帰ってきた冒険者たちが情報を集めている姿がある。
担当の受付からはCランク以上の冒険者に向けて緊急クエストが伝えられていく。
「ああ!? ふざけるな。仲間を売れっていうのか。俺たちは横の繋がりを何より大事にしているんだ。うちのパーティはこの緊急クエストを受けない」
「冒険者ギルドからの緊急クエストを受けなければ、スコアがかなり減点されますよ」
「結構だ。こんな依頼をする冒険者ギルドとはもう一緒にやってられない。勝手に減点でもなんでもすればいい」
ちっ、こんな時に揉めてんじゃねーよ。
「おいおい、言い方に気をつけろよ。あいつらには国家反逆の疑いがかけられている。そんな奴らを庇うというのなら、お前らもあやしいと判断せざるをえないな」
「な、何だと。ふざけるのもいい加減にしろ!」
「クエストを受けないなら、お前らも騎士団へ突き出す。それが嫌なら行動で示してくれ。自分たちが国家反逆など企んでいないとな」
「こんな奴がギルド長なのかよ」
「他の冒険者にも見張らせる。適当な行動してやがったら二度と冒険者ギルドで働けなくしてやるからな」
「リーダー、やめといた方がいいよ」
「くっ、何なんだよ」
「捕まえてくれば白金貨一枚くれてやるって言ってるんだ。わかったらさっさとあいつらを探しにいけ! 今すぐにだ!」
金を出すって言ってるのに動かねぇとか、何なんだこいつら。本当に使えねぇヤツばっかだな。
「どうなっているのじゃ、バルトロメオ」
「も、申し訳ございません」
「お前の謝罪を聞いているのではない。何がどうなっているのだと聞いているのだ」
あれから王都中を探し回って、ラウラの森も多くの冒険者やギルド職員を使って探させたが痕跡も何も見つからなかった。
そうこうしている間に慰労会の開催時間になってしまったのだ。
「昨日までの報告内容と随分違うではないか」
「大変申し訳ございません。部下からは問題ないと聞いていたのですが……」
「言い訳など聞きたくない。で、どうするのじゃ? 王都に住む多くの者に慰労会の発表をしているにも関わらず二度も延期させ、しかも異世界人が現在何処にいるかもわかない」
どうしてこうなった。昨日までは何も問題なかったはずだ……。
「……お前はもうクビだな」
「そ、それだけは、どうかお許しください! ど、どうか、私に挽回のチャンスをいただけませんか」
「二度も失敗しておいてよく言う」
「次こそは、次こそは必ず、必ず役に立ってみせます!」
「ふむ、お前のことは信用していないが、冒険者ギルドの力は信じている。騎士団でアルジーラ帝国方面を捜索させる。冒険者ギルドは全力で聖イルミナ共和国の国境付近までの道のりを捜索させよ」
「か、かしこまりました」
「お前の失態については、いったんおいておく。まずは異世界人を捕らえてからだ。少しでも役に立つという所を見せてもらいたいものだな」
「はっ!」
くそっ、くそっ、くそっ、何で俺がこんな目に合わなきゃならねぇんだ。
現状でAランク冒険者はアローヘッドとキャットアイの二人、続いてBランクが五人にCランクが三十ぐらいか。
全員を緊急招集してのクエストは一日でいくらかかる。俺がこっそり隠していた金が消えていくじゃねえか……。しかし、もう失敗は許されねぇ。もしも、騎士団が先にニールを捕まえようものなら俺はクビだ。
聖イルミナ共和国へ向かったと祈るしかねぇ。頼むから帝国には向かってくれるなよ。
「緊急クエストだ! Cランク以上の連中は全員強制招集だ!」
「ギルド長、ほとんどの冒険者はクエストに出ています。今、ギルド内にいるのはアローヘッドと、他数名のみです」
時間は昼を過ぎたところ。普通に考えて冒険者が戻って来るのは夕方以降になる。それからクエストを出して準備していたら出発は明日の朝になっちまう。
あいつらが出たのは昨日の午後。一日半も無駄にしちまうのか。
「大量の飯と馬を準備させろ。それからニールを捕まえた奴には白金貨一枚渡すと伝えろ!」
「し、白金貨一枚ですか!? か、彼の罪状は?」
「国家反逆の疑いとでも言っておけ」
「おいおい、大丈夫なのか? バルトロメオ」
「おお、アローヘッドか。キャットアイは見てないのか?」
「ああ、いないね」
「お前だけでも今からニールを捕まえに行ってくれねぇか」
「構わないけど、契約外のことは前金で頼むよ」
「わ、わかってる。金貨五枚を先に渡しておく。これで少しでも早く出てくれ」
「で、どっちへ行くんだい?」
「聖イルミナ共和国だ」
「ふーん、わかった。すぐに出よう。最悪はニールだけでも連れてくればいいんだよね?」
「ああ、それで構わない」
「怪我をしていても」
「構わない」
その確認をするとアローヘッドはすぐに冒険者ギルドを出ていった。
奴らがいなくなってからもう約一日が経つ。追いつけるのか。いや、追いつかなければならない。見つけられなかったら、俺の人生は終了するんだ。
「頼んだぞ……アローヘッド」
ギルドで何が起きたのかと、帰ってきた冒険者たちが情報を集めている姿がある。
担当の受付からはCランク以上の冒険者に向けて緊急クエストが伝えられていく。
「ああ!? ふざけるな。仲間を売れっていうのか。俺たちは横の繋がりを何より大事にしているんだ。うちのパーティはこの緊急クエストを受けない」
「冒険者ギルドからの緊急クエストを受けなければ、スコアがかなり減点されますよ」
「結構だ。こんな依頼をする冒険者ギルドとはもう一緒にやってられない。勝手に減点でもなんでもすればいい」
ちっ、こんな時に揉めてんじゃねーよ。
「おいおい、言い方に気をつけろよ。あいつらには国家反逆の疑いがかけられている。そんな奴らを庇うというのなら、お前らもあやしいと判断せざるをえないな」
「な、何だと。ふざけるのもいい加減にしろ!」
「クエストを受けないなら、お前らも騎士団へ突き出す。それが嫌なら行動で示してくれ。自分たちが国家反逆など企んでいないとな」
「こんな奴がギルド長なのかよ」
「他の冒険者にも見張らせる。適当な行動してやがったら二度と冒険者ギルドで働けなくしてやるからな」
「リーダー、やめといた方がいいよ」
「くっ、何なんだよ」
「捕まえてくれば白金貨一枚くれてやるって言ってるんだ。わかったらさっさとあいつらを探しにいけ! 今すぐにだ!」
金を出すって言ってるのに動かねぇとか、何なんだこいつら。本当に使えねぇヤツばっかだな。
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