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67 キャットアイの告白
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その後の話し合いで、キャットアイさんのパーティ参加が仮ではあるものの決定した。
何故この猫さんはこのパーティに、僕に興味を持ったのだろう。
「本来なら僕が一緒に行ければよかったんですけど、引退してからかなり経ちますからね。きっとアンナの方が役に立つでしょう」
そう話してくれたのはカルメロさんだ。その日の夜に帰ってきた所を紹介してもらった。伝説の鉱夫と呼ばれていた面影はなく、恰幅のいい姿に変貌を遂げていた。「昔は痩せていたのよ」とビビアンさんが言っていた。
「アンナは戦闘はまるでダメだけど、アダマンタイトの鉱脈がある場所を知ってるにゃ」
「はい、キャットアイ様。私の鼻がアダマンタイトを覚えております」
今はお手伝いさんをしているけど、アンナさんは嗅覚がとても鋭く、採掘場で活躍していたとのこと。
カルメロさんが言うには、崩落の危険のある場所だけに短時間集中で採掘作業を終わらせた方がいいとのことだ。
「アンナさん、よろしくお願いします」
「はいです」
「ところで、こちらがお墓になりますか」
「そうにゃ」
僕たちの目の前にはこじんまりとしたお墓がある。周辺は清掃が行き届いているようでとてもきれいに保たれている。
おそらくはアンナさん達が守っているのだろう。
「ここに眠っているのは、昔組んでいたパーティメンバーのレオンにゃ」
「ビビアンさんのお父さんですね」
「とても頼りになる戦士だったにゃ。冒険者仲間として長い時間を過ごしたにゃ。解散してからは、もうパーティを組むことは無いと思ってたにゃ」
そんなキャットアイさんが再びパーティを組みたいと思ったのは何故なのか興味がある。
キャットアイさんは持ってきたお花を供え、目を瞑って手を合わせている。僕たちもそれにならうようにして手を合わせる。
「レオンは魔物から自分とカルメロを守って死んだのにゃ」
「えっ? カルメロさんもパーティメンバー!?」
「こう見えて昔は痩せていたんですよ」
それはビビアンさんから聞きました。
ちょっと頭が混乱してきた。
その昔、キャットアイさんはレオンさんとカルメロさんとパーティを組んでいたそうだ。当時Cランクで将来有望な冒険者として注目されていた。
「私はタンクとして前衛の盾持ちをしていまして、レオンは戦士。キャットアイは遊撃担当でした」
後衛のいないパーティだったけど、前衛がしっかり機能したよいパーティだからこそ、遊撃のキャットアイさんの攻撃も効果的に活きたそうだ。
ところが、間もなくBランクに上がると思われていた頃にその悲劇は起きてしまった。
レオンさんはミストマウンテン出身で、冒険者ギルドの登録はバブルラグーンだった。カルメロさんやキャットアイさんともそこで知り合いパーティを組んだそうだ。
「あの時もシーデーモンが現れたのにゃ」
「シーデーモンですか」
バブルラグーンで実績を積み重ね、成長していったそうだが、ある日、海から大量のマーマンとキングマーマンの群れが侵攻をはじめた。僕たちが経験したのと全く同じようなことが起きたのだろう。
しかしながら、以前は対策も何もなかったので、浜辺に柵を建てるようなこともしていなかった。ただ、大量に溢れたマーマンを個別に対処するのでいっぱいいっぱいだったそうだ。
「遠くにいたシーデーモンに気づいたのはレオンだったにゃ」
ランクAの魔物シーデーモン。その当時ランクAに対処できるとしたらキャットアイさんのパーティだけだった。
「私がソードフィッシュ用の船をすぐに持ってきて三人ですぐに海に出たんです」
「でも、海の上ではシーデーモンが圧倒的に有利だったにゃ」
すぐに船はひっくり返されて、裏返った船にしがみつくようにしてシーデーモンからの攻撃に耐えていたそうだけど、周辺にはマーマンも多くいるわけであきらかに戦況はじり貧だった。
シーデーモンから一方的な攻撃を受け、海中からもマーマンの鋭い爪や牙でダメージを負い続ける。それは僕も思い出すだけで恐ろしい。
「その状況を見て、レオンは捨て身の必殺技を使ったんです」
「その必殺技はいくつもの竜巻を剣をで作り上げて高い攻撃力を生み出す技にゃ。発動後三十秒近く自身もその竜巻に巻き込まれ、身動きがとれなくなる未完成の技にゃ」
「いくつもの竜巻を制御しながら、そのうちの一つを海水ごと巻き上げて僕たちを浜辺へと押し返し、残り全てをまとめ上げるようにシーデーモンに向けて撃ち放ちました」
「自らもその竜巻に巻き込まれるようにしてにゃ」
「最後に何も話をできず終わってしまいました。あの時、もう少し僕に力があったらと思うと今でも悔しいです……」
「レオンはこれしか方法がないと思って助けようとしてくれたけにゃ……。でも、たとえ苦しくても、どうしょうもなくて全滅したとしても、あの場に残って戦いたかったにゃ。本当にバカにゃ」
あの時、再びシーデーモンを前にしてキャットアイさんは何を思っていたのだろうか。そして、さっき墓前で何を報告したのだろうか。
何故この猫さんはこのパーティに、僕に興味を持ったのだろう。
「本来なら僕が一緒に行ければよかったんですけど、引退してからかなり経ちますからね。きっとアンナの方が役に立つでしょう」
そう話してくれたのはカルメロさんだ。その日の夜に帰ってきた所を紹介してもらった。伝説の鉱夫と呼ばれていた面影はなく、恰幅のいい姿に変貌を遂げていた。「昔は痩せていたのよ」とビビアンさんが言っていた。
「アンナは戦闘はまるでダメだけど、アダマンタイトの鉱脈がある場所を知ってるにゃ」
「はい、キャットアイ様。私の鼻がアダマンタイトを覚えております」
今はお手伝いさんをしているけど、アンナさんは嗅覚がとても鋭く、採掘場で活躍していたとのこと。
カルメロさんが言うには、崩落の危険のある場所だけに短時間集中で採掘作業を終わらせた方がいいとのことだ。
「アンナさん、よろしくお願いします」
「はいです」
「ところで、こちらがお墓になりますか」
「そうにゃ」
僕たちの目の前にはこじんまりとしたお墓がある。周辺は清掃が行き届いているようでとてもきれいに保たれている。
おそらくはアンナさん達が守っているのだろう。
「ここに眠っているのは、昔組んでいたパーティメンバーのレオンにゃ」
「ビビアンさんのお父さんですね」
「とても頼りになる戦士だったにゃ。冒険者仲間として長い時間を過ごしたにゃ。解散してからは、もうパーティを組むことは無いと思ってたにゃ」
そんなキャットアイさんが再びパーティを組みたいと思ったのは何故なのか興味がある。
キャットアイさんは持ってきたお花を供え、目を瞑って手を合わせている。僕たちもそれにならうようにして手を合わせる。
「レオンは魔物から自分とカルメロを守って死んだのにゃ」
「えっ? カルメロさんもパーティメンバー!?」
「こう見えて昔は痩せていたんですよ」
それはビビアンさんから聞きました。
ちょっと頭が混乱してきた。
その昔、キャットアイさんはレオンさんとカルメロさんとパーティを組んでいたそうだ。当時Cランクで将来有望な冒険者として注目されていた。
「私はタンクとして前衛の盾持ちをしていまして、レオンは戦士。キャットアイは遊撃担当でした」
後衛のいないパーティだったけど、前衛がしっかり機能したよいパーティだからこそ、遊撃のキャットアイさんの攻撃も効果的に活きたそうだ。
ところが、間もなくBランクに上がると思われていた頃にその悲劇は起きてしまった。
レオンさんはミストマウンテン出身で、冒険者ギルドの登録はバブルラグーンだった。カルメロさんやキャットアイさんともそこで知り合いパーティを組んだそうだ。
「あの時もシーデーモンが現れたのにゃ」
「シーデーモンですか」
バブルラグーンで実績を積み重ね、成長していったそうだが、ある日、海から大量のマーマンとキングマーマンの群れが侵攻をはじめた。僕たちが経験したのと全く同じようなことが起きたのだろう。
しかしながら、以前は対策も何もなかったので、浜辺に柵を建てるようなこともしていなかった。ただ、大量に溢れたマーマンを個別に対処するのでいっぱいいっぱいだったそうだ。
「遠くにいたシーデーモンに気づいたのはレオンだったにゃ」
ランクAの魔物シーデーモン。その当時ランクAに対処できるとしたらキャットアイさんのパーティだけだった。
「私がソードフィッシュ用の船をすぐに持ってきて三人ですぐに海に出たんです」
「でも、海の上ではシーデーモンが圧倒的に有利だったにゃ」
すぐに船はひっくり返されて、裏返った船にしがみつくようにしてシーデーモンからの攻撃に耐えていたそうだけど、周辺にはマーマンも多くいるわけであきらかに戦況はじり貧だった。
シーデーモンから一方的な攻撃を受け、海中からもマーマンの鋭い爪や牙でダメージを負い続ける。それは僕も思い出すだけで恐ろしい。
「その状況を見て、レオンは捨て身の必殺技を使ったんです」
「その必殺技はいくつもの竜巻を剣をで作り上げて高い攻撃力を生み出す技にゃ。発動後三十秒近く自身もその竜巻に巻き込まれ、身動きがとれなくなる未完成の技にゃ」
「いくつもの竜巻を制御しながら、そのうちの一つを海水ごと巻き上げて僕たちを浜辺へと押し返し、残り全てをまとめ上げるようにシーデーモンに向けて撃ち放ちました」
「自らもその竜巻に巻き込まれるようにしてにゃ」
「最後に何も話をできず終わってしまいました。あの時、もう少し僕に力があったらと思うと今でも悔しいです……」
「レオンはこれしか方法がないと思って助けようとしてくれたけにゃ……。でも、たとえ苦しくても、どうしょうもなくて全滅したとしても、あの場に残って戦いたかったにゃ。本当にバカにゃ」
あの時、再びシーデーモンを前にしてキャットアイさんは何を思っていたのだろうか。そして、さっき墓前で何を報告したのだろうか。
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