上 下
53 / 151

52 超格上討伐ガチャ1

しおりを挟む
「スープ温めてもらったわ。って、何かちょっと元気になってる?」

「いや、まだ微妙なんだけどさ。それより、今回Aランクの魔物を倒したからガチャがどうなってるかと想像したらね」

「格上討伐ガチャ、壊れない矢が出るのね!」

「それが出るかはわからないけどね」

「それで、格上討伐ガチャ。出でるの?」

「まだ呼び出してないからわからない」

「もーう、うるさいとニールが起きちゃうでしょーって、あれっ、ニールが起きてる。おはよー」

 もう昼過ぎだけどね。寝ていたルイーズを逆に僕たちが起こしてしまった。僕の看病であまり寝てなかったのだろう。ちょっと申し訳ない。

「うん。おはよう、ルイーズ」

「それで、何をそんなに騒いでいるの?」

「今回Aランクのシーデーモンを倒したから、ガチャにまた格上討伐ガチャが現れるのかなーって」

「か、格上討伐ガチャ! 疾風のレイピアが出たあの伝説のガチャをまた回せるの? あー、でも今回、私は一緒に倒してなーい!」

 やはり格上討伐ガチャの信頼度はとても高いようだ。こんなにハズレのないガチャはない。

 短弓ハジャーダ、疾風のレイピア、聖獣ホワイトドラゴン。確かに大当たりしか出ていないからルイーズが残念がるのもわかる気がする。

「あれっ、そうなるとキャットアイさんの分も出る可能性があるのかな」

「えー、同じパーティメンバーだけに限定してくれないかなー」

「それで、ガチャはどうなの? ニール!」

 アルベロはもう待てないみたいだ。いつもクールなアルベロがとても前のめりである。

「ちょっと待って、今呼び出してみるから」

 心の中でスキルガチャを起動する。

 荘厳な銅鑼の音が響き渡ると、黄金の象がパオーンと鼻を上げ下げしている。いや、これは象ではなくガチャガチャだ。

 ボディは全て金色に輝き、いつものイルミネーションの代わりに踊り子のお姉さんがガチャガチャの周りを踊っている。

「えっ、お姉さん!?」

「な、何?」
「格上討伐ガチャなの!」

「えーっとね。ちょっと待って」

 ガチャガチャのボディには金貨一枚の文字と超格上討伐ガチャの文言。

「……格上」

「えっ? 聞こえないよー」
「やっぱり、格上なのね!」

「違うんだ」

「ち、違うの?」

「今回のは、超格上討伐ガチャなんだ」

「超格上討伐ガチャ!?」

「このガチャは一回、金貨一枚」

「き、き、金貨ー!!!」
「金貨って、あ、あの、金貨よね」

「ど、ど、どうしよう」

「落ち着いて。どちらにしても回すしかないじゃない。それで、何回ガチャを回せるの? 私の矢は出るの?」

「お、落ち着いて、アルベロ。今回も三回……みたいだね」

 インドの神様のような出で立ちの象は、色とりどりの宝石で飾りつけされていて、おでこのあたりに数字の三がピカピカと光っている。

「ニール、ま、回しましょう」

「アルベロ、僕、金貨持ってないんだけど……」

「……私も持ってないわ。ルイーズは?」

「えっ、最近、金貨を見たことないかもー」

 そりゃそうだ。普通に生活している駆け出し冒険者が金貨なんて持っているわけがないし、持ち歩いていたらそれはそれで危険。

「金貨ってどこで手に入れられるの。両替とかできるの?」

「お店でも持ってないと思うから、冒険者ギルドに行くしかないかも。あー、さっきまで冒険者ギルドにいたのに!」

「大丈夫、多分時間制限とかじゃないと思うから」

 そ、そうだよね。超格上討伐ガチャ。

 踊り子のお姉さんは、いつまで踊らせるのよと言いたげな表情で僕を見てくる。

 いや、休んでもいいんだよ。

「じゃあ、私、冒険者ギルドに行ってくる」

「う、うん。ごめんね、アルベロ」

 アルベロは急いで部屋を出ていってしまった。ちゃんと両替用の銀貨を持っているだろうか。

 それとも、ひょっとしたら報奨金の前借りとか可能なのかな。金貨三枚とかもらえるとは思えないけど、いや、Aランクの魔物だけに可能性はあるのか!?

 すると、あまりの騒がしさに、ぐっすり眠っていたルリカラも何事かと起きてしまった。

「ごめんね、ルリカラ」

 ルリカラはガチャの方を見て「あれは何なの?」と僕に問いかけてくる。

「ルリカラにもガチャが見えるの?」

「ピュイ」

「えー、そうなのー。いいなー私もガチャしてみたいのにー」

 ルリカラは僕に向かってうなずくとガチャの周りを踊るお姉さんに合わせて翼をパタパタさせている。

 さすが聖獣。ひょっとしてこの金色の象さんともお友達なのだろうか?

 そんな奇抜な奴は友達じゃない。と僕の頭の中にルリカラのメッセージがすぐさま届いた。

 奇抜な象か、確かにガチャガチャボディで金色の象とか不思議生物でしかない。

 ガチャって何? ルリカラにそう聞かれても、何て答えたものか。このガチャで君が出てきたんだよとか言ったら驚くだろうか。

 いや、まあ、ショックを受けるかもしれない。

 ルリカラは自分を偉大な聖獣と自負しているだけに、こんなよくわからない機械から現れたと聞いたら困惑するだろう。ここは内緒にしておこうか。

「このガチャはお金を入れると武器とか魔道具が出てくるんだよ」

 ふーん。よくわからないけど、この音楽は楽しい。そんな気持ちとともに翼だけでなく頭を上下させてのりのりなルリカラだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...