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27 シュリンプパーティー
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時間になって食堂のある一階に降りると、奥のテーブルがルイーズによってキープされていた。
僕の姿を見たアルベロとおかみさんが、次々に料理を運んでくる。
「はい、はい、どんどん料理持っていくわよー」
「おおー、待ってましたー」
ルイーズご所望のガーリックシュリンプから殻ごと香草で焼き上げたもの、チーズ焼きに蒸した小海老のサラダなどなど。
まさしく海老のフルコースだ。
「あと、これは宵の月亭からのサービスだよ」
テーブルの上に乗せられたのは、小ぶりながらもアルベロが推していたガーリックソースの赤身肉ステーキ。
「サービスって……。いいんですか、おかみさん?」
「三人ともうちのお得意様だからね。ここでお祝いしてくれるならサービスもするさ」
「わーい。おかみさん大好きー」
遠慮せずにおかみさんに抱き着くルイーズ。頭をなでられてまるで娘のように可愛がられている。
「はいはい、追加のサービスでエール酒も持ってくるよ。飲むんだろ、アルベロ?」
「はい、よろしくお願いします」
一応、確認したところこの世界では十六歳からアルコールはオッケーとのことだった。なので、僕もルイーズも十七歳なので問題なし。
あれっ、アルベロは……何歳なんだっけ?
「ニール、レディに失礼な質問をするつもりじゃないでしょうね」
「い、いえ、しません」
「心配しなくてもエール酒が飲める年齢だから大丈夫よ」
「そ、そうだよね」
エルフの年齢とか見た目じゃわからないけど、外見は僕やルイーズと変わらないので同年代以上であることは間違いないと思う。
それ以上踏み込んだ質問はひかえるようにしよう。きっともう少し仲良くなったら教えてもらえるのかもしれない。
「それじゃあ、ニールのEランクの昇進をお祝いして」
「乾杯」
「かんぱーい」
何となく流れでエール酒を飲むことになっちゃったけど、苦い印象のあったビールはどこかフルーティーで喉越しもよくゴクゴクと入っていった。
「おおー、ニールはいける口ですなー。おかみさん、おかわり二つー」
それを見ていたルイーズが、一気に飲み干して僕の分も合わせてオーダーしてくれた。
「はじめて飲んだけど、美味しいね」
アルベロはゆっくりとワインでも楽しむかのようにコクコクと飲んでいる。
どうやら喉越しを楽しむ派は僕とルイーズだけらしい。
「エールもいいけど、お肉は温かいうちに食べた方が美味しいわよ」
「そうだね」
アルベロが言っているのはおかみさんがサービスしてくれたステーキのことだろう。ナイフとフォークで小さく切り分けてはパクリと口に放り込んでいる。
その所作はとても美しく、僕やルイーズと比べると雲泥の差がある。何と言うか、アルベロの所だけテーブルの上が綺麗なままなのだ。
性格なのかなーと思いつつ、僕もステーキを切り分けて一口食べる。
「うわぁ、美味しい」
口の中に入るとすぐに溶けてなくなってしまうやわらかさ。焼き加減も抜群だ。
「でしょー。でもね、このエビも美味しいから早く食べてみて」
そう言ってルイーズが食べているのは同じくニンニクで味付けされたがガーリックシュリンプ。どうやらルイーズの好物らしく、こればっかり食べている。
それにしても、エビのサイズがまた大きい。炒めて丸くなっているものの、僕の握りこぶしぐらいのビッグサイズ。これが普通なのか、それとも特別なのか。
「うーん、弾力があって最高だね!」
「だよねー。このぷりぷりがたまらないのー」
「エビは女性人気が高いのだけど、ニールは好きなのね」
「うん。海の近くで育ったから海産物は身近だったんだ」
「海ね……。行ってみる?」
何気ないアルベロのその言葉に反応したのはエビを頬張るルイーズだった。
「えっ! 本当にアルベロ!?」
「だって、しばらくはラウラの森の奥には入れないでしょ。あと、冒険者に追いかけられるのもうんざりだし」
「そ、それは確かにそうかも」
「ニールはどう?」
「僕も行きたいな。魚とか貝とか食べたいものがいっぱいだよ」
「じゃあ、決定ね」
王都から乗り合い馬車で二日。バブルラグーンという海に面した街にたどり着くそうだ。
王都を拠点にしている冒険者もさすがに遠くに行く僕たちについてくることはないだろう。
「あら、なら頼み事をお願いしてもいいかしら?」
話に加わってきたのは宵の月亭のおかみさん。二人はここで働かせてもらってるし、僕も部屋を借りている以上、おかみさんに相談しなければならない。
「最近は塩の値段がかなり高騰してるんだよ。だから、少しでも安く仕入れたくてね。バブルラグーンに行くなら、ついでに買ってきてもらえないかい?」
僕の方をちらりと見たアルベロがいい案を思いついたとばかりにおかみさんと話はじめた。
「では、こんな提案はいかがでしょうか」
アルベロとおかみさんの話合いは、あれよあれよという間に進んでいって、あっという間に決まってしまった。
ルイーズは「こういうのはアルベロが慣れているの」といいながらガーリックシュリンプを美味しそうに食べているし「新鮮なエビがまた食べられるかなー」と、気分はすでにバブルラグーンだった。
ということで、宵の月亭の部屋はいったん精算して、帰ってくるタイミングに合わせて再び予約をしておくことになった。
僕としても海は気になるし、ホーンラビット以上の魔物を少しでも多く倒してDランクに近づきたいという気持ちもあるので新しい場所への旅は楽しみだ。
それに海ならハリトの練習するのにもちょうどいいもんね。
僕の姿を見たアルベロとおかみさんが、次々に料理を運んでくる。
「はい、はい、どんどん料理持っていくわよー」
「おおー、待ってましたー」
ルイーズご所望のガーリックシュリンプから殻ごと香草で焼き上げたもの、チーズ焼きに蒸した小海老のサラダなどなど。
まさしく海老のフルコースだ。
「あと、これは宵の月亭からのサービスだよ」
テーブルの上に乗せられたのは、小ぶりながらもアルベロが推していたガーリックソースの赤身肉ステーキ。
「サービスって……。いいんですか、おかみさん?」
「三人ともうちのお得意様だからね。ここでお祝いしてくれるならサービスもするさ」
「わーい。おかみさん大好きー」
遠慮せずにおかみさんに抱き着くルイーズ。頭をなでられてまるで娘のように可愛がられている。
「はいはい、追加のサービスでエール酒も持ってくるよ。飲むんだろ、アルベロ?」
「はい、よろしくお願いします」
一応、確認したところこの世界では十六歳からアルコールはオッケーとのことだった。なので、僕もルイーズも十七歳なので問題なし。
あれっ、アルベロは……何歳なんだっけ?
「ニール、レディに失礼な質問をするつもりじゃないでしょうね」
「い、いえ、しません」
「心配しなくてもエール酒が飲める年齢だから大丈夫よ」
「そ、そうだよね」
エルフの年齢とか見た目じゃわからないけど、外見は僕やルイーズと変わらないので同年代以上であることは間違いないと思う。
それ以上踏み込んだ質問はひかえるようにしよう。きっともう少し仲良くなったら教えてもらえるのかもしれない。
「それじゃあ、ニールのEランクの昇進をお祝いして」
「乾杯」
「かんぱーい」
何となく流れでエール酒を飲むことになっちゃったけど、苦い印象のあったビールはどこかフルーティーで喉越しもよくゴクゴクと入っていった。
「おおー、ニールはいける口ですなー。おかみさん、おかわり二つー」
それを見ていたルイーズが、一気に飲み干して僕の分も合わせてオーダーしてくれた。
「はじめて飲んだけど、美味しいね」
アルベロはゆっくりとワインでも楽しむかのようにコクコクと飲んでいる。
どうやら喉越しを楽しむ派は僕とルイーズだけらしい。
「エールもいいけど、お肉は温かいうちに食べた方が美味しいわよ」
「そうだね」
アルベロが言っているのはおかみさんがサービスしてくれたステーキのことだろう。ナイフとフォークで小さく切り分けてはパクリと口に放り込んでいる。
その所作はとても美しく、僕やルイーズと比べると雲泥の差がある。何と言うか、アルベロの所だけテーブルの上が綺麗なままなのだ。
性格なのかなーと思いつつ、僕もステーキを切り分けて一口食べる。
「うわぁ、美味しい」
口の中に入るとすぐに溶けてなくなってしまうやわらかさ。焼き加減も抜群だ。
「でしょー。でもね、このエビも美味しいから早く食べてみて」
そう言ってルイーズが食べているのは同じくニンニクで味付けされたがガーリックシュリンプ。どうやらルイーズの好物らしく、こればっかり食べている。
それにしても、エビのサイズがまた大きい。炒めて丸くなっているものの、僕の握りこぶしぐらいのビッグサイズ。これが普通なのか、それとも特別なのか。
「うーん、弾力があって最高だね!」
「だよねー。このぷりぷりがたまらないのー」
「エビは女性人気が高いのだけど、ニールは好きなのね」
「うん。海の近くで育ったから海産物は身近だったんだ」
「海ね……。行ってみる?」
何気ないアルベロのその言葉に反応したのはエビを頬張るルイーズだった。
「えっ! 本当にアルベロ!?」
「だって、しばらくはラウラの森の奥には入れないでしょ。あと、冒険者に追いかけられるのもうんざりだし」
「そ、それは確かにそうかも」
「ニールはどう?」
「僕も行きたいな。魚とか貝とか食べたいものがいっぱいだよ」
「じゃあ、決定ね」
王都から乗り合い馬車で二日。バブルラグーンという海に面した街にたどり着くそうだ。
王都を拠点にしている冒険者もさすがに遠くに行く僕たちについてくることはないだろう。
「あら、なら頼み事をお願いしてもいいかしら?」
話に加わってきたのは宵の月亭のおかみさん。二人はここで働かせてもらってるし、僕も部屋を借りている以上、おかみさんに相談しなければならない。
「最近は塩の値段がかなり高騰してるんだよ。だから、少しでも安く仕入れたくてね。バブルラグーンに行くなら、ついでに買ってきてもらえないかい?」
僕の方をちらりと見たアルベロがいい案を思いついたとばかりにおかみさんと話はじめた。
「では、こんな提案はいかがでしょうか」
アルベロとおかみさんの話合いは、あれよあれよという間に進んでいって、あっという間に決まってしまった。
ルイーズは「こういうのはアルベロが慣れているの」といいながらガーリックシュリンプを美味しそうに食べているし「新鮮なエビがまた食べられるかなー」と、気分はすでにバブルラグーンだった。
ということで、宵の月亭の部屋はいったん精算して、帰ってくるタイミングに合わせて再び予約をしておくことになった。
僕としても海は気になるし、ホーンラビット以上の魔物を少しでも多く倒してDランクに近づきたいという気持ちもあるので新しい場所への旅は楽しみだ。
それに海ならハリトの練習するのにもちょうどいいもんね。
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