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15 冒険者ギルドの反応
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■■■冒険者ギルド長 バルトロメオ視点
俺は王都の冒険者ギルドでギルド長をしているバルトロメオという。
元々冒険者としてAランクまで登りつめたんだが、古傷の足の怪我で引退せざるをえなかったところ冒険者ギルドにスカウトされた。
何だかんだで、もう十年近くここで働いているが、最近、王様から珍しい調査依頼が入った。何でも異世界から召喚された者だという。
その調査依頼の異世界人は、騎士団長の勧めもあってか、すぐに冒険者ギルドへ登録にやってきた。
いたって普通のステータス。聞いたところによるとスキルはポーション精製とのこと。こんな奴をわざわざ調べる必要があるのかとも思ったが、ひょっとしたらそれなりの価値はあるかもしれない。
まあ、王様からたっぷり報酬はいただいているから問題はないんだけどな。定期的な報告義務はあるが、この依頼はできるだけ長く引き受けておきたいところだ。
「ニール・ゼニガタ……ね。で、何かおかしな所はなかったのか? キャットアイ」
「昨日は薬草採取をしていたにゃ。今日はアルベロがいるから、あまり近寄れなかったにゃ」
ニールという異世界人だが、すぐにルイーズとアルベロという最近注目を集めている中堅パーティに加わり、彼女らの今までの買取り額レコードをあっさり更新してみせた。
「おいおいおい、Aランクのお前にわざわざ依頼してるんだ。頼むぜ」
「わかってるにゃ」
王都にはSランクの冒険者が一人いるが、今は遠征に出ているため、現状で一番ランクの高い冒険者はAランクのキャットアイになる。こいつは遠出するのが面倒なのか、働くのが嫌なのか大抵の場合、冒険者ギルドで寝ている。
そういうこともあって、冒険者ギルドからの訳ありクエストや高難度クエストを指名依頼するケースが多い。
おそらくキャットアイも、その方が割に合うということを理解している。
働かなければお金は入らない。だが、極力働きたくない。それなら高額で訳ありのクエストで効率よく稼ごうといったとこなのだろう。
訳ありの依頼を積極的に受けてくれるキャットアイには冒険者ギルドも助かっている。そういう意味では持ちつ持たれつの関係といえるだろう。
「アルベロがいても、ちゃんと調査できるんだろうな?」
「できないことはないにゃ。ただ、準備にお金がかかるにゃ」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねーぞ」
「ふざけてるのはそっちにゃ。こっちはアルベロとルイーズが一緒にいるなんて聞いてなかったにゃ。金貨三枚追加で手を打つにゃ」
「ちっ、三枚はとりすぎだ。二枚までだ」
「毎度ありにゃ」
ラウラの森の奥に入っての調査となると、さすがにキャットアイ以外に頼める奴はいない。そもそも金貨五十枚で受けている依頼だ。キャットアイにも少しぐらい分けてやってもいいだろう。
アルベロもルイーズも感知能力はそれなりに高い冒険者だ。多少の出費は仕方ないか。
それにしても、あれだけパーティに男が加わるのを嫌がっていた二人があっさりニールの加入を決めちまったのは意外だった。
まあ、まだお試し期間のようなものだろうけどな。二人からしたら他からの勧誘避けに使っているのかもしれねぇな。
「二人とも力はあったとはいえ、思い切った行動をとったものだな」
「三人の関係は対等だったにゃ。分け前はきっちり三等分にゃ。つまり、ニールにもちゃんと役割があるはずにゃ」
「役割って、荷物持ちだろ。中古の荷車を購入したんだろ?」
「あと、大盾を買い与えていたにゃ」
「並のステータスで荷物運びに盾役かよ。しかも、いきなりあれだけの量を運ばされてきつくねぇのか?」
「とっても疲れていたにゃ。でも、どこか楽しそうだったにゃ」
三等分にしたならそれなりの金をもらったことになる。それはこの世界でもやっていける目処が立ったということになる。そりゃ、少しは気持ちに余裕も出るか。
「それで、あいつらは明日も湖に行くのか?」
「そんなの知らないにゃ。でも、稼げるようになった狩り場は稼げなくなるまで通うものにゃ」
「だろうな。すぐに他の冒険者からもチェックされるだろうしな」
急に稼ぎがよくなった冒険者がいれば、その情報はすぐにまわる。この稼ぎが続くようなら追いかける奴らも出てくるだろう。
特殊な狩り方をしているのか、それとも荷車の性能がいいのか。穴場を見つけたのか。
まあ、あの辺りに穴場も何もあったもんじゃねぇ。湖からジャイアントトードを引っ張ってくるだけだからな。
「他の冒険者が探りに来てくれた方が動きやすくなるにゃ」
「それもそうだな。頼むぜ、キャットアイ」
「任せるにゃ」
おそらくはルイーズとアルベロは一段階上のレベルに上がろうとしているんだろう。レストランの掛け持ちをせずに、冒険者としての稼ぎだけで歩き始めようとしている。
そんな二人の新しいパーティメンバーとして何故、異世界人のニールが加わったのか不思議でならない。やはり、特殊な能力を持っていた可能性は否めないか。キャットアイからの調査結果が楽しみになってきたぜ。
俺は王都の冒険者ギルドでギルド長をしているバルトロメオという。
元々冒険者としてAランクまで登りつめたんだが、古傷の足の怪我で引退せざるをえなかったところ冒険者ギルドにスカウトされた。
何だかんだで、もう十年近くここで働いているが、最近、王様から珍しい調査依頼が入った。何でも異世界から召喚された者だという。
その調査依頼の異世界人は、騎士団長の勧めもあってか、すぐに冒険者ギルドへ登録にやってきた。
いたって普通のステータス。聞いたところによるとスキルはポーション精製とのこと。こんな奴をわざわざ調べる必要があるのかとも思ったが、ひょっとしたらそれなりの価値はあるかもしれない。
まあ、王様からたっぷり報酬はいただいているから問題はないんだけどな。定期的な報告義務はあるが、この依頼はできるだけ長く引き受けておきたいところだ。
「ニール・ゼニガタ……ね。で、何かおかしな所はなかったのか? キャットアイ」
「昨日は薬草採取をしていたにゃ。今日はアルベロがいるから、あまり近寄れなかったにゃ」
ニールという異世界人だが、すぐにルイーズとアルベロという最近注目を集めている中堅パーティに加わり、彼女らの今までの買取り額レコードをあっさり更新してみせた。
「おいおいおい、Aランクのお前にわざわざ依頼してるんだ。頼むぜ」
「わかってるにゃ」
王都にはSランクの冒険者が一人いるが、今は遠征に出ているため、現状で一番ランクの高い冒険者はAランクのキャットアイになる。こいつは遠出するのが面倒なのか、働くのが嫌なのか大抵の場合、冒険者ギルドで寝ている。
そういうこともあって、冒険者ギルドからの訳ありクエストや高難度クエストを指名依頼するケースが多い。
おそらくキャットアイも、その方が割に合うということを理解している。
働かなければお金は入らない。だが、極力働きたくない。それなら高額で訳ありのクエストで効率よく稼ごうといったとこなのだろう。
訳ありの依頼を積極的に受けてくれるキャットアイには冒険者ギルドも助かっている。そういう意味では持ちつ持たれつの関係といえるだろう。
「アルベロがいても、ちゃんと調査できるんだろうな?」
「できないことはないにゃ。ただ、準備にお金がかかるにゃ」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねーぞ」
「ふざけてるのはそっちにゃ。こっちはアルベロとルイーズが一緒にいるなんて聞いてなかったにゃ。金貨三枚追加で手を打つにゃ」
「ちっ、三枚はとりすぎだ。二枚までだ」
「毎度ありにゃ」
ラウラの森の奥に入っての調査となると、さすがにキャットアイ以外に頼める奴はいない。そもそも金貨五十枚で受けている依頼だ。キャットアイにも少しぐらい分けてやってもいいだろう。
アルベロもルイーズも感知能力はそれなりに高い冒険者だ。多少の出費は仕方ないか。
それにしても、あれだけパーティに男が加わるのを嫌がっていた二人があっさりニールの加入を決めちまったのは意外だった。
まあ、まだお試し期間のようなものだろうけどな。二人からしたら他からの勧誘避けに使っているのかもしれねぇな。
「二人とも力はあったとはいえ、思い切った行動をとったものだな」
「三人の関係は対等だったにゃ。分け前はきっちり三等分にゃ。つまり、ニールにもちゃんと役割があるはずにゃ」
「役割って、荷物持ちだろ。中古の荷車を購入したんだろ?」
「あと、大盾を買い与えていたにゃ」
「並のステータスで荷物運びに盾役かよ。しかも、いきなりあれだけの量を運ばされてきつくねぇのか?」
「とっても疲れていたにゃ。でも、どこか楽しそうだったにゃ」
三等分にしたならそれなりの金をもらったことになる。それはこの世界でもやっていける目処が立ったということになる。そりゃ、少しは気持ちに余裕も出るか。
「それで、あいつらは明日も湖に行くのか?」
「そんなの知らないにゃ。でも、稼げるようになった狩り場は稼げなくなるまで通うものにゃ」
「だろうな。すぐに他の冒険者からもチェックされるだろうしな」
急に稼ぎがよくなった冒険者がいれば、その情報はすぐにまわる。この稼ぎが続くようなら追いかける奴らも出てくるだろう。
特殊な狩り方をしているのか、それとも荷車の性能がいいのか。穴場を見つけたのか。
まあ、あの辺りに穴場も何もあったもんじゃねぇ。湖からジャイアントトードを引っ張ってくるだけだからな。
「他の冒険者が探りに来てくれた方が動きやすくなるにゃ」
「それもそうだな。頼むぜ、キャットアイ」
「任せるにゃ」
おそらくはルイーズとアルベロは一段階上のレベルに上がろうとしているんだろう。レストランの掛け持ちをせずに、冒険者としての稼ぎだけで歩き始めようとしている。
そんな二人の新しいパーティメンバーとして何故、異世界人のニールが加わったのか不思議でならない。やはり、特殊な能力を持っていた可能性は否めないか。キャットアイからの調査結果が楽しみになってきたぜ。
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