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テスト勉強編

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宏太は家を出て、とりあえず学校に向かった。
だが、段ボールの移動がしんどいので兄からもらった20万円から出して、台車を買った。
「でも、荷物置くところが必要だよな。」
と、考えたのでホテルにチェックインして、昼間に荷物を置いておくことにした。
どうせ、実家の最寄り駅にはもう来ないので、学校の最寄り駅に近いホテルに置いておくことにした。
登校まで時間があるので、荷物をホテルに置いたまま、必要な荷物だけ段ボールから出してリュックに詰めた。
そのあとに、少しだけゆったりと寝転んでから登校した。
学校では、いつも通りの様子で振舞っていた。
と、言ってもクラスメイトとはしゃべらないので変わらないのだが。
一番つらいのは、部活だ。
結構、他の三人は変化に敏感なので、気づかれないように振舞うのは簡単ではない。
だが、部活までは心臓がバクバクしながらも、なんとかバレなかった。
「じゃあ、唯のお家行こっか。」と、忍が言った。
もちろんテスト勉強ウィークの勉強のためだ。
途中で、ホテルによることも考えた。
だが、ここでよるとバレそうなので、やめておくという結論に達した。
そんなこんなで、いつも通り会話をしながら唯の家に向かった。
唯の家に着くと、いつも通り唯と勝太郎の勉強会が始まる。
宏太は聞かれたことに答えるだけだ。
「ここどうやって解くん?」と、唯が質問するたびに、
「ここはこの公式使って、こうやってこう!」と解説する。
忍と宏太はこれを数時間続けるだけだ。
宏太は唯の専属。忍は勝太郎の専属で教える。
今日も結局3時間やっていた。
「いや~疲れたなぁ。」と、唯が伸びをしながら言う。
「お疲れ様。」
「あれ?今日は頭ポンポンせぇへんねんな。」
「うるさい。」唯の頭を軽く小突く。
が、宏太はこの会話で気が緩んでしまい、少し下を見てしまった。
これは、宏太が悩んだときにやってしまう癖だ。
「おん?なんか困ったことでもあんの?」唯はそれすらも見逃してくれなかった。
「まあ、ちょっとね。」上手く濁せてるかは分からないがなんとか濁そうとする。
「そういや、なんか段ボールもってホテルに入って行ってたけどあれなんだったの?」
忍はどうやら宏太がホテルに入るのを見ていたみたいだ。
「まあ、そこまでバレてるならいってもいいか。」
宏太はそう言って、一呼吸おいてあったことを話し始めた。
唯も勝太郎も忍もみんな真剣な眼差しで話を聞いている。
「…っていうことがあってさ。追い出されちゃった。」
「まじか...やべぇ親だな...」勝太郎がボソッと思いを漏らす。
「なぁ!宏太!ならしばらくうち泊まりぃや。大丈夫やで。」
唯はこういうところでも優しさが出ている。
だが、宏太は流石に女の子の友達の家に泊めてもらうわけにはいかないと考えた。
「ありがとう。でも、流石に泊めてもらうのは...」と、宏太が言おうとしたが唯は遮るように言い放った。
違うちゃう!そんなん言うてる場合ちゃうやろ!生活がかかってんねやろ!?お兄さんが頑張って貯めた20万円で生活すんねやろ!?そんなん気にしてる場合ちゃうやろ!」
唯が大真面目に怒鳴っている姿を見るのは全員初めてなので、3人は目を真ん丸にしていた。
「な?やから、そんなん気にせんとしばらくうち泊まり?」
「分かった。」宏太は唯の勢いに負けて、泊まることを決めた。
その後、勝太郎と忍と宏太は電車に乗り込んだ。
勝太郎と忍は自宅へ。宏太はホテルに、荷物を取りに帰った。
宏太は荷物を取りに行っている最中、ずっと緊張していた。
女の人の家に泊めてもらうのは初めてだからだ。
ドキドキしているが、そもそも唯が宏太に好意が無いのは分かっているので、いたって無駄なことである。
宏太はもう一度、電車に乗って唯の家に向かう。
段ボールの乗った台車を押して、唯の家に着いた。
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