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―楽園編―
やったか!?からの第二形態
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土気色だったドラゴンの鱗は、漆黒に染まり、禍々しいオーラを放ち始めた――嘘だろ……? その光景に、僕は絶望を感じるしかなかった。
「さとりくん、これを!」
藍里はまた怪しげなポーションを投げ渡してきた。
マジか!? ――だが、迷っている暇はない、躊躇うことなく僕は藍里から受け取ったその小瓶の中身をすべて飲み干した。
すると、ボロボロだった僕の体は見る見るうちに回復し、ベストコンディションの状態へと変化した!
「こ、これは……なんという神がかり的な薬、なんだ!」
僕は驚きをそのまま藍里に伝えた。
「えーと、『襟草』とかいう秘薬です! めちゃくちゃお高いです!」
え、襟草……?
「アイリ、それ、『エリクサー』です」
「それです!」
これには、さすが藍里、としか言いようがない。
「サトリ、一度『エリクサー』の恩恵を受けてしまうと、しばらくの間は『エリクサー』を再度使用することができなくなるので気を付けてください! つまり、次はないです」
「マジか……」
僕だったらそんな高価なアイテムは使えない、絶対に。それがラスボス戦であっても、だ。
そうこうしているうちに、漆黒のドラゴンは第二形態へと完全移行し、すでに戦闘態勢に入っていた。
「サトリ、『エリクサー』の恩恵で現実世界とのシンクロ率が急上昇しています! 今ならサトリの能力をフルパワーで使用可能なはずです!」
ミィコが助言をくれた。そうか、今なら僕の能力を意のままに操れるのか。これはまさに、“潜在能力開放”、といったところだろう。
「OK! やってみる!」
僕は意気込んだ!
神経を研ぎ澄ませ、能力を発動――僕は『光の片翼』を展開した!
「さとりくん! 光の翼に……その眼、キラメってます!」
でた、藍里の“キラメ”っている表現!
「うん、今なら、やれる気がするんだ……いくぞ――唯我独尊!」
光の片翼が神々しく輝き、僕の全身は光のオーラで包まれた! どんな攻撃をも受け付けない、無敵の翼。
漆黒のドラゴンは、僕の周りに重力場を作り、それを圧縮させ、一気に開放することで、空間爆発を引き起こす!
僕は、その爆発に合わせて光の片翼を大きく広げ、漆黒のドラゴンからの攻撃をすべて防いだ。
しかし、このドラゴンは重力を操り、空間を捻じ曲げてくる。
この捻じ曲げられた空間によって、爆発の衝撃が唯我独尊《インビンシブルヴァニティ》を貫通する。
そして、漆黒のドラゴンは、容赦なく僕の周りに無数の重力場を展開してくる!
これが爆発すれば、間違いなく回避不能の攻撃となるだろう。
だが、今の僕はキラメっている! その程度のことに動じたりはしない!
唯我独尊を二重に展開し、片翼を二枚にして貫通する衝撃を防ぐ。
――漆黒のドラゴンが放った無数の重力場が、一斉に空間爆発を起こす。
だが、今の僕にそのような攻撃は通用しない!
二枚の片翼で発動された唯我独尊によって、漆黒のドラゴンが展開した重力場による空間爆発は、僕の能力により完全に打ち消されたのだ!
――その輝く翼は、傲慢であり、至高でもある。その絶対的な自信は何よりも気高く、目の前に立ちはだかる敵は、すべて跡形もなく消し去る。
我が前に、敵はない。我は――全能なり。
今の僕は、今までの僕と別人のように、自信に満ち溢れていた。
そして、ドラゴンの正面に立ち、それをあざ笑うように仁王立ちした僕は、折れた魔剣を両手で強く握りしめた。
「愚鈍なる者よ、己の弱さを憎め。己の罪をしれ。そして、我が力をもって、その弱さと罪穢れを断ち斬る!」
――これで、終わりだ!!!
「光輝魔剣!」
僕の握りしめた折れた魔剣の鍔の部分から光り輝く巨大な刃が出現する。
その巨大な光の刃を構えた僕を見つめる漆黒のドラゴンは、紛れもなく恐怖におののいていた。
僕は、怯んでいる漆黒のドラゴンの首目掛け、容赦なくその巨大な光の刃を振り下ろす。
僕が振り下ろした巨大な剣は、見事その漆黒のドラゴンの首に食い込んでいた。
そして、僕は躊躇うことなく、そのまま漆黒のドラゴンの首を一刀両断に斬り落とした――
「断罪完了……」
そして、そんなよく分からないセリフを僕は吐いていた。
少し離れた場所から、その戦いの行方を見守ってくれていた藍里とミィコが手を振っている――
「さとりくん、すごい! すごいです! めちゃくちゃカッコいいです!」
「サ、サトリ! ミコ、驚きました。まさか、サトリの能力がこれほどまでだなんて――」
「正直言うと、僕も、この能力には驚いた――」
二人に持ち上げられすぎて、僕は今まさに顔が綻んでしまっていることだろう。
正直、ここまでやれるなんて思っていなかった。
きっと、ループする世界の中で、何度も何度もドラゴンと戦い、こうして倒すことを繰り返していたに違いない――だが、なぜか、あの漆黒のドラゴンの攻撃、対処法、そんなのを僕は別の経験から理解していたような、そんな気がする――あの漆黒のドラゴンとは比べ物にならないほどの絶望的な力によって。
何故だろう? 何か、空間が歪み始めている――
「あれ? これ、ダメです! サトリ、今すぐ、そこを、離れてください!!」
「え?」
僕はミィコに言われて気が付いたが、首を落とされた漆黒のドラゴンが周辺に大きな重力場を作り始めていた。
てっきり、藍里の薬の副作用なのかと思っていたが、そうではなかった。藍里、ごめん。
そんな悠長なことを考えている暇はなかった! 振り返ると、黒い空間が僕に迫ってきている。
僕は漆黒のドラゴンから出来るだけ離れようと全力疾走する、が――徐々に体の自由がきかなくなってくるのが感じられる。
――あれは、ブラックホールなのか? ダメだ、体が……動かない。
「ミィコ、これ、動けない」
僕は半ばあきらめ気味にそう言った。
「さとりくん!」
重力場は徐々に広がり、空間の歪みが僕の足元付近まで迫ってきた。
このままだと僕だけでなく、少し離れている二人もいずれ道連れになってしまうだろう――
すると、ミィコが両手を天に掲げ――
「サトリ! 恨まないでください!」
「え? ミィコ、それ、どういう――」
僕がそう問いかけるも、ミィコは僕の言葉を待たずして――
「『夜空に輝く数多の星々よ――我が願いを聞き届けたまえ――我に仇なす愚鈍なる者へ――天の裁きを』――隕石超落下《メテオフォール》!」
ミィコが神々しい光に包まれながら謎の詠唱を終えると、地面が揺らぎ、空気が震え、上空から凄まじい轟音が鳴り響く……!
「さとりくん、これを!」
藍里はまた怪しげなポーションを投げ渡してきた。
マジか!? ――だが、迷っている暇はない、躊躇うことなく僕は藍里から受け取ったその小瓶の中身をすべて飲み干した。
すると、ボロボロだった僕の体は見る見るうちに回復し、ベストコンディションの状態へと変化した!
「こ、これは……なんという神がかり的な薬、なんだ!」
僕は驚きをそのまま藍里に伝えた。
「えーと、『襟草』とかいう秘薬です! めちゃくちゃお高いです!」
え、襟草……?
「アイリ、それ、『エリクサー』です」
「それです!」
これには、さすが藍里、としか言いようがない。
「サトリ、一度『エリクサー』の恩恵を受けてしまうと、しばらくの間は『エリクサー』を再度使用することができなくなるので気を付けてください! つまり、次はないです」
「マジか……」
僕だったらそんな高価なアイテムは使えない、絶対に。それがラスボス戦であっても、だ。
そうこうしているうちに、漆黒のドラゴンは第二形態へと完全移行し、すでに戦闘態勢に入っていた。
「サトリ、『エリクサー』の恩恵で現実世界とのシンクロ率が急上昇しています! 今ならサトリの能力をフルパワーで使用可能なはずです!」
ミィコが助言をくれた。そうか、今なら僕の能力を意のままに操れるのか。これはまさに、“潜在能力開放”、といったところだろう。
「OK! やってみる!」
僕は意気込んだ!
神経を研ぎ澄ませ、能力を発動――僕は『光の片翼』を展開した!
「さとりくん! 光の翼に……その眼、キラメってます!」
でた、藍里の“キラメ”っている表現!
「うん、今なら、やれる気がするんだ……いくぞ――唯我独尊!」
光の片翼が神々しく輝き、僕の全身は光のオーラで包まれた! どんな攻撃をも受け付けない、無敵の翼。
漆黒のドラゴンは、僕の周りに重力場を作り、それを圧縮させ、一気に開放することで、空間爆発を引き起こす!
僕は、その爆発に合わせて光の片翼を大きく広げ、漆黒のドラゴンからの攻撃をすべて防いだ。
しかし、このドラゴンは重力を操り、空間を捻じ曲げてくる。
この捻じ曲げられた空間によって、爆発の衝撃が唯我独尊《インビンシブルヴァニティ》を貫通する。
そして、漆黒のドラゴンは、容赦なく僕の周りに無数の重力場を展開してくる!
これが爆発すれば、間違いなく回避不能の攻撃となるだろう。
だが、今の僕はキラメっている! その程度のことに動じたりはしない!
唯我独尊を二重に展開し、片翼を二枚にして貫通する衝撃を防ぐ。
――漆黒のドラゴンが放った無数の重力場が、一斉に空間爆発を起こす。
だが、今の僕にそのような攻撃は通用しない!
二枚の片翼で発動された唯我独尊によって、漆黒のドラゴンが展開した重力場による空間爆発は、僕の能力により完全に打ち消されたのだ!
――その輝く翼は、傲慢であり、至高でもある。その絶対的な自信は何よりも気高く、目の前に立ちはだかる敵は、すべて跡形もなく消し去る。
我が前に、敵はない。我は――全能なり。
今の僕は、今までの僕と別人のように、自信に満ち溢れていた。
そして、ドラゴンの正面に立ち、それをあざ笑うように仁王立ちした僕は、折れた魔剣を両手で強く握りしめた。
「愚鈍なる者よ、己の弱さを憎め。己の罪をしれ。そして、我が力をもって、その弱さと罪穢れを断ち斬る!」
――これで、終わりだ!!!
「光輝魔剣!」
僕の握りしめた折れた魔剣の鍔の部分から光り輝く巨大な刃が出現する。
その巨大な光の刃を構えた僕を見つめる漆黒のドラゴンは、紛れもなく恐怖におののいていた。
僕は、怯んでいる漆黒のドラゴンの首目掛け、容赦なくその巨大な光の刃を振り下ろす。
僕が振り下ろした巨大な剣は、見事その漆黒のドラゴンの首に食い込んでいた。
そして、僕は躊躇うことなく、そのまま漆黒のドラゴンの首を一刀両断に斬り落とした――
「断罪完了……」
そして、そんなよく分からないセリフを僕は吐いていた。
少し離れた場所から、その戦いの行方を見守ってくれていた藍里とミィコが手を振っている――
「さとりくん、すごい! すごいです! めちゃくちゃカッコいいです!」
「サ、サトリ! ミコ、驚きました。まさか、サトリの能力がこれほどまでだなんて――」
「正直言うと、僕も、この能力には驚いた――」
二人に持ち上げられすぎて、僕は今まさに顔が綻んでしまっていることだろう。
正直、ここまでやれるなんて思っていなかった。
きっと、ループする世界の中で、何度も何度もドラゴンと戦い、こうして倒すことを繰り返していたに違いない――だが、なぜか、あの漆黒のドラゴンの攻撃、対処法、そんなのを僕は別の経験から理解していたような、そんな気がする――あの漆黒のドラゴンとは比べ物にならないほどの絶望的な力によって。
何故だろう? 何か、空間が歪み始めている――
「あれ? これ、ダメです! サトリ、今すぐ、そこを、離れてください!!」
「え?」
僕はミィコに言われて気が付いたが、首を落とされた漆黒のドラゴンが周辺に大きな重力場を作り始めていた。
てっきり、藍里の薬の副作用なのかと思っていたが、そうではなかった。藍里、ごめん。
そんな悠長なことを考えている暇はなかった! 振り返ると、黒い空間が僕に迫ってきている。
僕は漆黒のドラゴンから出来るだけ離れようと全力疾走する、が――徐々に体の自由がきかなくなってくるのが感じられる。
――あれは、ブラックホールなのか? ダメだ、体が……動かない。
「ミィコ、これ、動けない」
僕は半ばあきらめ気味にそう言った。
「さとりくん!」
重力場は徐々に広がり、空間の歪みが僕の足元付近まで迫ってきた。
このままだと僕だけでなく、少し離れている二人もいずれ道連れになってしまうだろう――
すると、ミィコが両手を天に掲げ――
「サトリ! 恨まないでください!」
「え? ミィコ、それ、どういう――」
僕がそう問いかけるも、ミィコは僕の言葉を待たずして――
「『夜空に輝く数多の星々よ――我が願いを聞き届けたまえ――我に仇なす愚鈍なる者へ――天の裁きを』――隕石超落下《メテオフォール》!」
ミィコが神々しい光に包まれながら謎の詠唱を終えると、地面が揺らぎ、空気が震え、上空から凄まじい轟音が鳴り響く……!
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