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―楽園編―
定番の朝食
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「朝ご飯、買ってきましたよ」
朝早くから、市場まで朝食の調達をしに行っていたと思われる藍里が、大きな紙袋を抱えて戻ってきたようだ。
紙袋の中身は、パンとリンゴと、瓶詰めのジャムのようなもの、それと、大きめの瓶に入ったミルク。それらをサイドテーブルに並べる――が、ちょっと狭い。
「あ、ちょっと待ってくださいね」
そう言って、藍里は部屋を出て行った。
――藍里はすぐに戻ってきて、サイドテーブルの上に木のジョッキを3つ並べる。テーブルの上はさらに狭くなった。
「酒場で借りてきました! でも、この世界、すごいですよね。ちゃんと、私たちの言葉が通じちゃうんですもん」
藍里がこの世界について深く関心を示している。
「確かに……彼らは自らの意思で選択し、行動しているってことなのかな? どんな原理なんだろう」
僕には、この世界の人々が“魂“のようなものを持っているとは到底思えなかった。そもそも、魂という概念すら、本来は曖昧なものだろう。
「ミコ的には、この世界、単なるコードの羅列に過ぎないのだと考えています。ユキネが言っていたのですけど、『命の欠片も存在しない、そんな無機質な世界と、私の脳は、不思議な能力によって繋がった。その脳内データベースを基に深層学習が行われて構築された世界。その過程で高度なAIシステムも一緒に導入されたんじゃないかな~?』だそうです。なので、ここの住人は、“if”と“else”のようなもので動いているだけ、なのかも――らしいです」
「ミコちゃん、全然、分かりません!」
藍里はミィコに突っ込んだ。
「多分、ユキネが言いたいのは、この世界の住人は、とてもとても、ものすごい人工知能で、条件選択を繰り返して、時と場合によって最適な選択をしながら動いている――ということなのだと思います」
「なるほど」
僕は納得した。
「なるほど~! 人間と同じように、たくさんの選択肢の中から、最適なものを自ら選んで行動しているわけですね!」
藍里も納得した……が、残念ながら、理解はしていないのだろう。だが、条件選択を繰り返しているのは人間も同じ、なのかもしれない。逆に、藍里の解釈が正しければ、人間もこの世界の住人も、さほど変わりはなく、人間の選択は時として、ただ、非効率なだけ、ということになる。
まあ、深く考えても仕方がない、この世界は雪音さんの脳内レベルに合わせて作られた仮想空間、いわば電脳世界なのだろう。
そうだ、ミィコにも聞いてみよう。
「ということは、この世界の住人は皆、雪音さんみたいな思考をしているということ? ちょっと意地悪なところがあるとか? 理屈っぽくてめんどくさい、とか?」
――そんな僕の言葉に、二人はちょっと考える仕草をしている。
「ミコも、そんな気がします」
「うんうん、確かにそんな感じします」
なるほど、まさに、雪音ワールド。
それでも、雪音さんのイメージから作られる住人ということは、住人や獣、モンスター、それぞれが雪音さんの理想を具現化させたような存在となって動いているのだろう。雪音さんの思う、『こうあるべき』存在が形になっているような気がする――多分。
二人と冗談交じりにそんな会話をしていたが、正直に言えば、この世界の住人は個性豊かで、雪音さんただ一人の人格で形成されているとは到底思えない。
まさか雪音さん、現実世界に“hack“して、人格データを抜き取ってきている? もし、そうだとすれば、僕の人格を持った住人も、この世界のどこかに存在しているのかもしれない――
「さ、朝食を食べてからお買い物に行きましょう!」
藍里の言うとおりだ。今日中にネームドモンスターとやらを倒さなければ。
――僕らは朝食を平らげた後、早速、街に繰り出した。
市場は賑わい、街は活気にあふれている。場の雰囲気に圧倒されそうになりながらも、僕らは市場の中を進んだ。
まずは武器屋。武器屋の隣には鍛冶屋もあり、そこで傷んだ武器の修理等をしてもらえるようだ。
武器屋の品揃えは驚くほどに豊富で、用途不明の武器なども多数存在していた。
「ミコはこれがいいです」
「えっと、それは……」
僕は驚きを隠せない……なぜなら、ミィコは鋼の刃が無数に埋め込まれた鞭を手に持っているからだ。
「ミコちゃん、ちょっとそれは危ないかな~……」
「サトリがサボっていたら、鞭打って働かせるのに丁度いい武器だと思ったのですが……」
「ミィコ、怖い」
マジで怖い、と思う反面、まあ、そうなるだろうな、とも、僕は思った。
「ミコちゃん、これなんてどうかな!?」
藍里が手に持っているのは、十字架の形をした大きな鈍器だ。手ごろな重さでミィコにはいいのかもしれない。
しかも、無駄に装飾が付いている。
「鈍器、ですか――悪くはないですね。十字架に煌びやかな装飾、見た目もゴージャスですし……ミコ、これ、ちょっと気に入りました。これならば、予算的にも問題なさそうです。アイリ、さすがです」
「うん、うん! ミコちゃんにピッタリだよ!」
二人が楽しそうに武器を選んでいる間に、僕は『ニンジャソード』とやらを探した。『ニンジャソード』にも種類がいくつかある。
この刀、日本刀とは違い、共通して反りのない直刀のようだ。
――なるほど、だからこそ、『ソード』のスキルでも扱えるということだろう。『クモガクレ』、『オニキリ』、『ミズナギ』、『コガラシ』――どれも、それっぽい名前が付けられている。
しかし、武器の性能や、特殊能力については、ミィコに聞いてみないと分からない。
「なあ、ミィコ、『ニンジャソード』って、どれがいいんだろう?」
朝早くから、市場まで朝食の調達をしに行っていたと思われる藍里が、大きな紙袋を抱えて戻ってきたようだ。
紙袋の中身は、パンとリンゴと、瓶詰めのジャムのようなもの、それと、大きめの瓶に入ったミルク。それらをサイドテーブルに並べる――が、ちょっと狭い。
「あ、ちょっと待ってくださいね」
そう言って、藍里は部屋を出て行った。
――藍里はすぐに戻ってきて、サイドテーブルの上に木のジョッキを3つ並べる。テーブルの上はさらに狭くなった。
「酒場で借りてきました! でも、この世界、すごいですよね。ちゃんと、私たちの言葉が通じちゃうんですもん」
藍里がこの世界について深く関心を示している。
「確かに……彼らは自らの意思で選択し、行動しているってことなのかな? どんな原理なんだろう」
僕には、この世界の人々が“魂“のようなものを持っているとは到底思えなかった。そもそも、魂という概念すら、本来は曖昧なものだろう。
「ミコ的には、この世界、単なるコードの羅列に過ぎないのだと考えています。ユキネが言っていたのですけど、『命の欠片も存在しない、そんな無機質な世界と、私の脳は、不思議な能力によって繋がった。その脳内データベースを基に深層学習が行われて構築された世界。その過程で高度なAIシステムも一緒に導入されたんじゃないかな~?』だそうです。なので、ここの住人は、“if”と“else”のようなもので動いているだけ、なのかも――らしいです」
「ミコちゃん、全然、分かりません!」
藍里はミィコに突っ込んだ。
「多分、ユキネが言いたいのは、この世界の住人は、とてもとても、ものすごい人工知能で、条件選択を繰り返して、時と場合によって最適な選択をしながら動いている――ということなのだと思います」
「なるほど」
僕は納得した。
「なるほど~! 人間と同じように、たくさんの選択肢の中から、最適なものを自ら選んで行動しているわけですね!」
藍里も納得した……が、残念ながら、理解はしていないのだろう。だが、条件選択を繰り返しているのは人間も同じ、なのかもしれない。逆に、藍里の解釈が正しければ、人間もこの世界の住人も、さほど変わりはなく、人間の選択は時として、ただ、非効率なだけ、ということになる。
まあ、深く考えても仕方がない、この世界は雪音さんの脳内レベルに合わせて作られた仮想空間、いわば電脳世界なのだろう。
そうだ、ミィコにも聞いてみよう。
「ということは、この世界の住人は皆、雪音さんみたいな思考をしているということ? ちょっと意地悪なところがあるとか? 理屈っぽくてめんどくさい、とか?」
――そんな僕の言葉に、二人はちょっと考える仕草をしている。
「ミコも、そんな気がします」
「うんうん、確かにそんな感じします」
なるほど、まさに、雪音ワールド。
それでも、雪音さんのイメージから作られる住人ということは、住人や獣、モンスター、それぞれが雪音さんの理想を具現化させたような存在となって動いているのだろう。雪音さんの思う、『こうあるべき』存在が形になっているような気がする――多分。
二人と冗談交じりにそんな会話をしていたが、正直に言えば、この世界の住人は個性豊かで、雪音さんただ一人の人格で形成されているとは到底思えない。
まさか雪音さん、現実世界に“hack“して、人格データを抜き取ってきている? もし、そうだとすれば、僕の人格を持った住人も、この世界のどこかに存在しているのかもしれない――
「さ、朝食を食べてからお買い物に行きましょう!」
藍里の言うとおりだ。今日中にネームドモンスターとやらを倒さなければ。
――僕らは朝食を平らげた後、早速、街に繰り出した。
市場は賑わい、街は活気にあふれている。場の雰囲気に圧倒されそうになりながらも、僕らは市場の中を進んだ。
まずは武器屋。武器屋の隣には鍛冶屋もあり、そこで傷んだ武器の修理等をしてもらえるようだ。
武器屋の品揃えは驚くほどに豊富で、用途不明の武器なども多数存在していた。
「ミコはこれがいいです」
「えっと、それは……」
僕は驚きを隠せない……なぜなら、ミィコは鋼の刃が無数に埋め込まれた鞭を手に持っているからだ。
「ミコちゃん、ちょっとそれは危ないかな~……」
「サトリがサボっていたら、鞭打って働かせるのに丁度いい武器だと思ったのですが……」
「ミィコ、怖い」
マジで怖い、と思う反面、まあ、そうなるだろうな、とも、僕は思った。
「ミコちゃん、これなんてどうかな!?」
藍里が手に持っているのは、十字架の形をした大きな鈍器だ。手ごろな重さでミィコにはいいのかもしれない。
しかも、無駄に装飾が付いている。
「鈍器、ですか――悪くはないですね。十字架に煌びやかな装飾、見た目もゴージャスですし……ミコ、これ、ちょっと気に入りました。これならば、予算的にも問題なさそうです。アイリ、さすがです」
「うん、うん! ミコちゃんにピッタリだよ!」
二人が楽しそうに武器を選んでいる間に、僕は『ニンジャソード』とやらを探した。『ニンジャソード』にも種類がいくつかある。
この刀、日本刀とは違い、共通して反りのない直刀のようだ。
――なるほど、だからこそ、『ソード』のスキルでも扱えるということだろう。『クモガクレ』、『オニキリ』、『ミズナギ』、『コガラシ』――どれも、それっぽい名前が付けられている。
しかし、武器の性能や、特殊能力については、ミィコに聞いてみないと分からない。
「なあ、ミィコ、『ニンジャソード』って、どれがいいんだろう?」
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