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第三章 焚き火を囲んで
第20話 魔界の雨
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四人は洞窟を出た。
そこには観たことのない光景が広がっていた。
草木は枯れ、赤紫色の大地が果てしなく続いている。
魔物達が蠢き、魔物達による弱肉強食の世界がそこにはあった。
早速小型の魔物達が獲物を見つけ襲いくるが、シノンが弓でそれらを撃ち落とす。
「ここから先は戦い続けるしかないぜ」
シノンはニヤリと笑っているが、その笑みには不安の色が見える。
「このまま突き進むぞ!」
絶え間なく魔物達は襲いくるが、アッパレー達は蹴散らしながら赤紫色の大地を突き進む。
すると突然空からとてつもない量の赤い雨が降り出した。
「赤い雨、、、これ浴びても大丈夫なのでしょうか?」
ハッカイの白色の僧衣が一瞬で赤く染まってしまった。
「大丈夫だ、おらはこの雨を知っている」
アッパレーは父を亡くしたあの日を思い出していた。
川が氾濫したあの日、赤い雨が激しく降っていた。
村人達は神様の怒りだのなんだのと叫んでいて、幼いアッパレーもそれを信じていたが、今になってそれは間違いだと知った。
100m先に杖を構える魔物の姿が見える。
その魔物の前方にはブラックホールのようなものが出現し、辺りの魔物を吸い込んでいた。
そして吸い込むのと同時にブラックホールから大量の赤い水が吹き出し、雨となって辺りを赤く染めているようだ。
「これは、、、魔物の血なのか?」
バツフォイは赤い液体を吸ったローブの匂いを嗅いだ。
「ああ、これは魔物の血の匂いだ、間違いない」
シノンは確信をもって答える。
杖を持った魔物は辺りの魔物達を全てブラックホールに吸い込み終えると、杖で魔法陣を書き出した。
赤紫色の地面に黒い魔法陣が描かれていく。
「何が始まるのでしょうか、攻撃を仕掛けた方が良いのでしょうか」
「いや、近付かない方が良いだろう」
心配そうに呟くハッカイに対し、バツフォイが冷静に答えた。
「ちょいと放ってみるか。遠距離なら問題ないさ」
シノンは慣れた手つきで弓を引いた。
杖を持つ魔物に向かって、矢が真っ直ぐに飛んでいく。
突き刺さると思われたその時、その魔法陣から見覚えるのある魔物が出現した。
鋼鉄で出来ているその姿にバツフォイの顔が強張る。
「鋼鉄のトロール、、、、」
「あのデカブツはお前の知り合いか?どうやらあの魔法使いの魔物が召喚したらしいな」
シノンは笑いながら話しかけるがバツフォイに笑う余裕はない。
「バツフォイ、あの呪文はもう使うな。両目を失うことになるぞ」
アッパレーはバツフォイに忠告した。
「ああ、、、だが倒せるのだろうか」
「今はシノンとハッカイもいる、それにバツフォイもおらもあの時より強くなってる。絶対に倒せる!!あの魔法使いはおらに任せてくれ、父ちゃんの仇を討つ」
アッパレーはいつになく真剣な眼差しで答え、駆け出した。
同時に鋼鉄のトロールも地響きをたてながら歩き出す。
アッパレーは飛び上がって斧をフルスイングした。
鋼鉄のトロールの顔面に命中し、トロールは仰向けに倒れ込んだ。
アッパレーはそのまま杖を持つ魔物の元へと走る。
「ふん、確かに貴様は強くなった、流石の馬鹿力だ。俺様もやれる、、、怯むな、アッパレーの後に続くぞ!!」
バツフォイは自らを鼓舞し、走り出す。
「あいつの弱点は口の中のみだ!それ以外の攻撃は効かないと思え!」
「その口に猛毒をぶち込んでやるか」
シノンは毒を弓矢に仕込み、口が開くその時を待っていた。
バツフォイは口を狙って連続で魔法をくり出したがその口が開くことはなかった。
鋼鉄のトロールはバツフォイに向けて突進した。
バツフォイはどうにか飛び退き、回避する。
「おいおい、こいつ全然口を開かないぜ」
シノンは機を狙っているが鋼鉄のトロールは無傷のまま暴れている。
「誰かが餌になるしかないな」
バツフォイはボクマーツでアッパレーが食べられそうになったことを思い出した。
鋼鉄のトロールは人間を食べる、その時は必ず口を開く。
すると、ハッカイがトロールの前へと飛び出した。
「私が餌になります」
ハッカイは真っ直ぐにトロールを見つめた。
トロールはヨダレを垂らしながらハッカイを掴んだ。
「頼んだぞ、失敗は許されない」
バツフォイはシノンに言った。
シノンはニヤリと笑い、呟く。
「このシノン様が失敗するわけねぇだろ」
トロールが大口を開けたその時、シノンが矢を放つ。
猛毒が仕込まれた矢は綺麗にトロールの口の中へと入り、トロールはハッカイを放り投げた。
口を押さえ出し、苦しそうにもがいている。
「いっちょあがり!!」
シノンは弓をクルクルと回し、背中に背負った。
「はぁ!、、死ぬかと思いました!、、、、」
ハッカイは解放されて安堵している。
しかし、鋼鉄のトロールはまだ死んでいなかった。
最後の力を振り絞り、ハッカイへと突進をしかける。
「ハッカイ!後ろだ!」
シノンは慌てて弓を構えるが、口は開いていない。
杖を手に立ち上がったハッカイは動けずにいた。
ハッカイはまたも捕えられ、食べられそうになる。
シノンは矢を放った、しかし鋼鉄のトロールは矢が口に入らないように手でガードした。
「あのバケモノめ、知能もあるのか!」
シノンは死角を探して迂回するも時間が足りない。
その時、口の中に放り込まれかけたハッカイの目の前にバツフォイが現れた。
「最大火力、ボンバンバン!!」
バツフォイはトロールの口の中へと最大火力の爆発魔法を放った。
鋼鉄のトロールは口から煙を吐き、ゆっくりと仰向けに倒れた。
「闇魔法なんて使わなくても倒したぞ、ハマオニー」
血の雨の中、バツフォイは小さく、誰にも聞こえないように呟いた。
そこには観たことのない光景が広がっていた。
草木は枯れ、赤紫色の大地が果てしなく続いている。
魔物達が蠢き、魔物達による弱肉強食の世界がそこにはあった。
早速小型の魔物達が獲物を見つけ襲いくるが、シノンが弓でそれらを撃ち落とす。
「ここから先は戦い続けるしかないぜ」
シノンはニヤリと笑っているが、その笑みには不安の色が見える。
「このまま突き進むぞ!」
絶え間なく魔物達は襲いくるが、アッパレー達は蹴散らしながら赤紫色の大地を突き進む。
すると突然空からとてつもない量の赤い雨が降り出した。
「赤い雨、、、これ浴びても大丈夫なのでしょうか?」
ハッカイの白色の僧衣が一瞬で赤く染まってしまった。
「大丈夫だ、おらはこの雨を知っている」
アッパレーは父を亡くしたあの日を思い出していた。
川が氾濫したあの日、赤い雨が激しく降っていた。
村人達は神様の怒りだのなんだのと叫んでいて、幼いアッパレーもそれを信じていたが、今になってそれは間違いだと知った。
100m先に杖を構える魔物の姿が見える。
その魔物の前方にはブラックホールのようなものが出現し、辺りの魔物を吸い込んでいた。
そして吸い込むのと同時にブラックホールから大量の赤い水が吹き出し、雨となって辺りを赤く染めているようだ。
「これは、、、魔物の血なのか?」
バツフォイは赤い液体を吸ったローブの匂いを嗅いだ。
「ああ、これは魔物の血の匂いだ、間違いない」
シノンは確信をもって答える。
杖を持った魔物は辺りの魔物達を全てブラックホールに吸い込み終えると、杖で魔法陣を書き出した。
赤紫色の地面に黒い魔法陣が描かれていく。
「何が始まるのでしょうか、攻撃を仕掛けた方が良いのでしょうか」
「いや、近付かない方が良いだろう」
心配そうに呟くハッカイに対し、バツフォイが冷静に答えた。
「ちょいと放ってみるか。遠距離なら問題ないさ」
シノンは慣れた手つきで弓を引いた。
杖を持つ魔物に向かって、矢が真っ直ぐに飛んでいく。
突き刺さると思われたその時、その魔法陣から見覚えるのある魔物が出現した。
鋼鉄で出来ているその姿にバツフォイの顔が強張る。
「鋼鉄のトロール、、、、」
「あのデカブツはお前の知り合いか?どうやらあの魔法使いの魔物が召喚したらしいな」
シノンは笑いながら話しかけるがバツフォイに笑う余裕はない。
「バツフォイ、あの呪文はもう使うな。両目を失うことになるぞ」
アッパレーはバツフォイに忠告した。
「ああ、、、だが倒せるのだろうか」
「今はシノンとハッカイもいる、それにバツフォイもおらもあの時より強くなってる。絶対に倒せる!!あの魔法使いはおらに任せてくれ、父ちゃんの仇を討つ」
アッパレーはいつになく真剣な眼差しで答え、駆け出した。
同時に鋼鉄のトロールも地響きをたてながら歩き出す。
アッパレーは飛び上がって斧をフルスイングした。
鋼鉄のトロールの顔面に命中し、トロールは仰向けに倒れ込んだ。
アッパレーはそのまま杖を持つ魔物の元へと走る。
「ふん、確かに貴様は強くなった、流石の馬鹿力だ。俺様もやれる、、、怯むな、アッパレーの後に続くぞ!!」
バツフォイは自らを鼓舞し、走り出す。
「あいつの弱点は口の中のみだ!それ以外の攻撃は効かないと思え!」
「その口に猛毒をぶち込んでやるか」
シノンは毒を弓矢に仕込み、口が開くその時を待っていた。
バツフォイは口を狙って連続で魔法をくり出したがその口が開くことはなかった。
鋼鉄のトロールはバツフォイに向けて突進した。
バツフォイはどうにか飛び退き、回避する。
「おいおい、こいつ全然口を開かないぜ」
シノンは機を狙っているが鋼鉄のトロールは無傷のまま暴れている。
「誰かが餌になるしかないな」
バツフォイはボクマーツでアッパレーが食べられそうになったことを思い出した。
鋼鉄のトロールは人間を食べる、その時は必ず口を開く。
すると、ハッカイがトロールの前へと飛び出した。
「私が餌になります」
ハッカイは真っ直ぐにトロールを見つめた。
トロールはヨダレを垂らしながらハッカイを掴んだ。
「頼んだぞ、失敗は許されない」
バツフォイはシノンに言った。
シノンはニヤリと笑い、呟く。
「このシノン様が失敗するわけねぇだろ」
トロールが大口を開けたその時、シノンが矢を放つ。
猛毒が仕込まれた矢は綺麗にトロールの口の中へと入り、トロールはハッカイを放り投げた。
口を押さえ出し、苦しそうにもがいている。
「いっちょあがり!!」
シノンは弓をクルクルと回し、背中に背負った。
「はぁ!、、死ぬかと思いました!、、、、」
ハッカイは解放されて安堵している。
しかし、鋼鉄のトロールはまだ死んでいなかった。
最後の力を振り絞り、ハッカイへと突進をしかける。
「ハッカイ!後ろだ!」
シノンは慌てて弓を構えるが、口は開いていない。
杖を手に立ち上がったハッカイは動けずにいた。
ハッカイはまたも捕えられ、食べられそうになる。
シノンは矢を放った、しかし鋼鉄のトロールは矢が口に入らないように手でガードした。
「あのバケモノめ、知能もあるのか!」
シノンは死角を探して迂回するも時間が足りない。
その時、口の中に放り込まれかけたハッカイの目の前にバツフォイが現れた。
「最大火力、ボンバンバン!!」
バツフォイはトロールの口の中へと最大火力の爆発魔法を放った。
鋼鉄のトロールは口から煙を吐き、ゆっくりと仰向けに倒れた。
「闇魔法なんて使わなくても倒したぞ、ハマオニー」
血の雨の中、バツフォイは小さく、誰にも聞こえないように呟いた。
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