上 下
200 / 229
決戦のグレイス城編

第200話 ダイスの樹海

しおりを挟む
ダイス「何が起こった!?」

ダイスはどこかのジャングルにいた。

肌寒いはずのグレイス城ではなく、湿気で甘ったるい空気の中、草木に囲まれていた。

もう既にじんわりと汗をかいている。

ダイス「あいつはどこに行った!?」

戦っていたはずのリョーガの姿は見当たらない。

ダイスはとあることに気がついた。
生えている草木はヘイスレイブの樹海のものとグレイスの森林のものが混ざり合っていたのだ。

ダイス「これ現実世界じゃねぇな」

リョーガの魔法の中なのだろうか?

どこからあの光線が飛んでくるか分からない、ダイスは警戒を強めた。

ダイスがキョロキョロと辺りを見回すと地面からいくつかの蕾がニョキニョキと生え、一定方向に向かって花を咲かせた。

ダイス「え!、、、はぁ!?」

これはグレイスに咲くセンサク花と呼ばれる花である。
蕾の期間に嗅がせた匂いを忘れず、その匂いに向かって花を咲かすと言われている。

ダイスの意思に応えるかのように早送りの速度で成長を遂げたセンサク花を見て、ダイスは絶句した。

この花はリョーガに向かって咲いているのだろうか?

そんなわけがない、そもそもこんな短時間で花が咲くわけがない。
これは何か敵の術中にハマっているに違いない。

そう思って目をパチパチとしてみたが何も変わらない。

ダイス「ん?、、、おいおい、嘘だろ!!」

花が咲いた方向を見ると、メラメラと炎が昇っていた。

炎はすぐに燃え広がり、ダイスの目の前までやってきた。

ダイスはすぐに姿勢を低くし、口を腕で塞いだ。

次の瞬間、炎を消すように唐突な大雨に襲われた。

ダイス「、、、、助かった」

炎は徐々に鎮火し、辺りには水溜まりが出来ていた。

鎮火を終えると雨は止んだ。

流石に出来過ぎている状況にダイスの考えが固まっていく。

ダイス「もしかして、これ俺の魔法か!?」

ダイスが手を伸ばすと木々から薔薇の蔦が伸びる。

ダイス「この空間では俺は最強ってことだろ?何だか分かんねぇけど、やってやろうじゃねぇか!!」

ダイスは魔法を駆使して罠を仕掛けた。

センサク花は変わらずに一定方向に首を向けている。

その方向に向けてダイスは叫んだ。

ダイス「どこに行ったぁあーーー!!!攻撃隊長のくせに攻撃を仕掛けて来ないとは、この臆病者ーー!!!!」

数秒後、センサク花が向く方向から一本の光線が飛んできた。

ダイス「あっぶね!!」

ダイスはギリギリのところでそれを避けた。

光線は木々を焼きながら通り過ぎて行った。

あの光線は生きているわけではない、ただの矢なのだ。
先程はリョーガの技量によって生きているかのように追尾してきたが、今通り過ぎて行ったということはまだ正確な位置はバレていないということだ。

ダイス「よし、かかってこい!反撃開始だ」

ダイスは一本の太い木によじ登り、リョーガが来るのを待っていた。

リョーガ「自空間を使うとは、、、意外にもやり手の魔術師だったのですね」

そこへリョーガが足を踏み入れた、その表情にはまだ余裕の色が見える。

ダイス「さぁ、ショータイムだ!!」

ダイスの合図により、地中から木々が足を捕え、蔦が手を縛った。

薔薇の蔦が全身に巻き付く前に、リョーガはアルテミスを空間に放り投げ、剣と槍を引き抜いた。

華麗な身のこなしで包囲する草木を切り刻んでいく。

ダイス「まだだ!!」

大きな人喰い草達が上から一斉にリョーガへと飛びつく。

リョーガはそれらも簡単に薙ぎ倒したが、飛び散る分泌液によって皮膚が溶けていく。

ダイス「この植物はオリジナルだ!!人喰い草とデスフラワーのブレンドだぜ!!ここは俺の最強の樹海だぁ!!」

勢いをそのままに、現実世界には存在しない様々な樹海の草木達がリョーガに覆い被さる。

ダイスは空へと一本の矢を放った。

それは空で巨大化し、大きな杭となってリョーガへと落下する。

ダイス「よし!!俺の勝ちだ!!」

しかし、リョーガを中心に大きな竜巻が巻き起こる。

ダイスの草木達と巨大な杭は空へと舞い上がった。

リョーガの手には杖が握られている。

リョーガ「、、、はぁ、、はぁ、、、徹底的に殺してやりますよ!!」

リョーガはボロボロの鎧と爛れた肌を露わにした。

その目つきは先程とは違い、殺意に満ちている。

リョーガ「攻撃隊長マーリンの杖、その力を解放せよ!!」

古びた杖が虹色に輝き、リョーガの足元から大量の水が渦潮となって湧き出てきた。

水はそのうち水位を上げ、ダイスの樹海が浸水し出した。

リョーガ「自空間は術者による解除、魔力切れによってその空間は消滅する。だがもう一つ消滅させる方法がある、それは質量の超過である」

ダイス「おいおい、ここは俺の樹海だぞ!!好き勝手やるなよ!!」

空間が歪んでいく。

水位はあっという間に樹海の木々を飲み込み、辺りは海と化した。

リョーガは杖の上に乗り、宙を浮いている。

ダイスは必死に泳ぐが、空から見下ろすリョーガからは格好の的である。

リョーガ「ここは君の樹海だったはずですが、今となっては俺の海って感じですかね」

ダイスは身を隠すために海の中へと潜り込んだ。

樹海が海の中に沈んでいるのが見える。
あそこから木を伸ばして足場を作るか、しかし例え木を伸ばしたとしても的であることには変わりない。

動く何かを作らなければ。

ダイスの脳裏にかつての記憶が蘇ってきた。

ヘイスレイブ城にてスカポンとの戦闘時、似たような状況に陥ったことがある。

あの時は歪な木の板になってしまったが、今の自分なら創れるはずだ。

偉大な大海賊の船を。

ダイス「来い!!!ブラックパール号!!!」

水の上に木々が組み立てられていく。

それはあっという間に巨大な海賊船へと姿を変えた。

ダイスは蔦を使って船の上へと登った。

そこへリョーガも降り立つ。

リョーガ「まだ自空間の維持が可能なようですね。まぁ良いでしょう、この船が君の死に場所となるでしょう」

リョーガは杖を空間に投げ込み、血に濡れている赤い槍を取り出した。

ダイス「この船は俺の魔術で出来ている、さっきの樹海と何ら変わりないぜ。もう少しでお前を倒せた、次は確実に仕留めてやる」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

無能と追放されたおっさん、ハズレスキルゲームプレイヤーで世界最強になった上、王女様や聖女様にグイグイ迫られる。え?追放したの誰?知らんがな

島風
ファンタジー
万年Cランクのおっさんは機嫌が悪かったリーダーからついにパーティーを追放される。 金も食べ物も力もなく、またクビかと人生の落伍者であることを痛感したとき。 「ゲームが始まりました。先ずは初心者限定ガチャを引いてください」 おっさんは正体不明だったハズレ固有スキル【ゲームプレイヤー】に気づく。 それはこの世界の仕様を見ることができるチートスキルだった。 試しにウィキに従ってみると、伝説級の武器があっさりと手に入ってしまい――。 「今まで俺だけが知らなかったのか!」 装備やスキルの入手も、ガチャや課金で取り放題。 街の人や仲間たちは「おっさん、すげぇ!」と褒めるが、おっさんはみんなの『勘違い』に苦笑を隠せない。 何故かトラブルに巻き込まれて美少女の王女や聖女に好意を寄せられ、グイグイと迫られる。 一方おっさんを追放したパーティはおっさんの善行により勝手に落ちぶれていく。 おっさんの、ゆるーいほのぼのテンプレ成り上がりストーリー。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。

高井うしお
ファンタジー
戦う以外は不器用な主人公、過去を捨てスローライフを目指す! 組織が壊滅した元暗殺者「名無し」は生き残りの男の遺言で辺境の村を目指すことに。 そこに居たのはちょっとボケている老人ヨハンとその孫娘クロエ。クロエから父親だと誤解された名無しは「田舎でのんびり」暮らして行く事になる。が、日々平穏とは行かないようで……。 書き溜め10万字ありますのでそれが追いつくまでは毎日投稿です。 それが尽きても定期更新で完結させます。 ‪︎‬ ‪︎■お気に入り登録、感想など本当に嬉しいですありがとうございます

処理中です...