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決戦のグレイス城編
第187話 魔女vs魔女
しおりを挟むトゥールに抱えられてグレイス城の内部へ空から侵入したが、その瞬間にワープして見知らぬ部屋に飛ばされてしまったようだ。
一緒に侵入したトゥールの姿も消え、一人になってしまった。
ナミチュ「まぁ良いですわ、カナメルさんを探しましょう」
ナミチュの目的はただ一つ、カナメルの援護である。
フォールドーン帝国との小競り合いでヘイスレイブ王国は多くの領地を失った。
しかし、戦乱に巻き込まれ命を落としてしまった者の数は少ない。
それはカナメルが被害を最小限に抑えるように随時呼びかけ、そうなるように国王へ戦略を提唱していたからである。
そのおかげでナミチュは故郷を失ったものの、彼女の家族は生きている。
オダルジョーやホーリー、スカポン、国王マキニウムは国と民を天秤にかけた時、迷わずに国を選んでいた。
それは至極当たり前のことであるとナミチュも理解している。
だがその中で、全員の反対を押し切って民の命を優先するカナメルの姿を見て、この人と共に歩もうと決意したのだった。
カナメルがどうしてそこまで人の命に拘るのかは分からない。
それでも彼の行動はいつも理性的で正しかった。
そんなカナメルが少数で敵の根城に突入した。
そのことを聞いたナミチュはいても立ってもいられなかったのだ。
カナメルは柄にもなく命を懸けている。
そんな気がしたのだった。
ナミチュは見知らぬ部屋の扉を開けた。
またも転移されたのだろう。
次は薄暗い儀式の間に出た。
そこには灰になっている人だったであろう何かが横たわっていた。
カナメルじゃないということは分かる。
ナミチュはそのまま儀式の間を後にした。
次は果てしなく続く大きな廊下へと出た。
その先に魔女帽を被った女性が佇んでいる。
ナミチュ「ヘイスレイブの魔女帽。貴方は味方ですか?敵ですか?」
BB「優秀な魔術師に与えられるこの魔女帽を被っているということはあなたもヘイスレイブの魔術師のようね」
ナミチュ「もう一度聞きますわ。あなたは味方?敵?」
BB「さぁ、私は今からカナメルとその仲間達を殺そうと思っているけど、敵ってことになる?」
ナミチュ「じゃあ敵ですね」
BB「それは残念」
ナミチュは大きな箒を召喚した。
BBも愛用の杖を構える。
BB「あなたもカナメルのお友達?」
ナミチュ「いいえ、私はカナメルさんの副官です。貴方こそ何故カナメルさんを狙っているのか、お聞かせ願えます?」
BB「カナメルは私の教え子でね。忠告したはずなのに無謀にもこの城へと侵入した。一人の師として私の手であの世へ送るのがケジメというものじゃないかと思ってね」
ナミチュ「師ですか。カナメルさんと親しい人間だとしたら私が殺すのが適切ですね。彼はああ見えて、知人は殺せないタイプの人間ですのよ」
BB「そうかしら?彼は論理的に考えて殺すべき人間なら知人でも躊躇なく殺すんじゃない?」
ナミチュは生意気にニヤリと笑った。
ナミチュ「貴方、本当にカナメルさんの師ですの?彼のことを何も分かっていないのですね」
BB「じゃあ生き残った方がカナメルに直接聞きにいきましょうか」
その問いかけにナミチュはため息をついた。
ナミチュ「本当に何も分かっていないのね。論理的に考えて殺すべき人間なら知人でも躊躇なく殺せるかを問うのですか?そんなのカナメルさんはYESと言うに決まっていますの」
BBはクスクスと笑い出した。
BB「じゃあ私が正しいってことじゃない?」
ナミチュは首を振った。
ナミチュ「その問いかけにはYESでも、実際にはNOですわよ。彼は四天王になるには優し過ぎる。だから私が副官として相応しいということですわよ」
BB「あなたは優しくないの?」
ナミチュは会話の隙に魔法を発動していた。
ナミチュ「ええ、私ほど残忍で非情な人間はなかなかいないでしょうね」
突然BBの周囲から炎の渦が現れた。
BBはそれを水流で鎮火する。
BB「確かに残忍なようね」
BBはクスクスと笑っている。
ナミチュ「あら、貴方もカナメルさんの師であるということは認めますわ。本気の魔術戦を行なっても問題なさそうですわね?」
BB「ええ、ご遠慮なく。こう見えて私は魔術で負けたことがないの」
ナミチュ「あら、そうなのね。では今回が初の敗戦になりそうですわね。なんてったってわたくし」
ナミチュは箒をクルクルと振り回し、ポーズを決めた。
ナミチュ「エリートですから」
その行動を見て、BBはまたクスクスと笑い出した。
BB「あなたこそ、カナメルの副官ということを認めるわ」
逃げ場のない真っ直ぐな大廊下で、壮絶な魔術戦が始まろうとしていた。
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